本日の要約
結論:在宅避難を続けるには、水や食料だけでなく、携帯トイレの備蓄・使い方・使用後の保管まで考えておく必要があります。
理由:災害時は水洗トイレが使えなくなる可能性が高く、江東区の下水道復旧目安や集合住宅の排水設備を考えると、数日分の備えでは足りないおそれがあるからです。
何をするか:今回は、災害時トイレの意識調査、江東区の携帯トイレ配布、仮設トイレの限界、使用後のごみ処理まで整理します。
ブログへの訪問をありがとうございます!
今日は、前回に引き続き在宅避難を安全に安心して行うための備えの一つである『トイレ関係』について書いていきます。
災害と聞くと、多くの方が『水!』『食料!』と、身体に入るものを思い浮かべると思います。
ただ、身体に入るものがあるということは、それと同じくらい『出る』方も重要です。
そんなわけで、今回は2回に分けてトイレに関する備蓄について書きます。
ちなみに、今回は備蓄の必要性についてです。
今回は『なぜ携帯トイレが必要なのか』と『使った後まで考える必要があること』を整理します。
では、行ってみよー☆
【災害時のトイレに関する意識調査について】
日本トイレ研究所が2026年6月に公表した『全国47都道府県の災害時トイレに関する意識調査』は、災害時の在宅避難とトイレ備蓄の大きなギャップを示しています。
調査は、全国47都道府県の20代〜60代男女を対象に、各都道府県100人、合計4,700人へインターネットで実施されたものです。
まず注目すべきは、停電・断水時の避難生活先として、74.7%が『自宅』を選んでいることです。

多くの人が、大地震後も避難所ではなく自宅で過ごすことを想定しています。
一方で、災害用トイレ、つまり携帯トイレや簡易トイレを備えている人は20.6%にとどまっています。

自宅で避難生活をするつもりの人は多いのに、その生活を支えるためのトイレ備蓄は十分に進んでいない、という現実が見えてきます。
さらに、大地震後に自宅で困りそうなこととして最も多かったのは、『水洗トイレが使えない』62.6%でした。
これは『飲料水がない』39.4%を大きく上回っています。
つまり、多くの人が災害時のトイレ問題を不安に感じているにもかかわらず、実際の備えは追いついていないということです。

加えて、大地震後に水洗トイレを使うと、汚水があふれたり逆流したりする危険性について、57.3%が『知らない』という結果も出ています。
災害用トイレを備蓄している人の中でも、十分な量を備えているとは言い切れません。
備蓄数量は、1人あたり1〜5回分が24.8%、6〜10回分が22.0%で、何回分かわからない人も22.2%います。
内閣府の避難所トイレの考え方では、トイレの平均使用回数は1日5回が目安とされています。
つまり、1〜5回分では1日分程度、6〜10回分でも2日分程度にしかなりません。
また、備蓄している人のうち、実際に使用方法を確認した人は24.2%にとどまり、59.9%は購入したまま確認していないとされています。
災害時は停電や断水、不安や混乱の中で使うことになります。
いざという時に初めて説明書を読むのでは、正しく使えない可能性があります。
この調査からわかるのは、災害時のトイレ対策は『必要性は感じているが、備蓄量・使い方・使用後の保管まで十分に理解されていない』ということです。
この問題は、集合住宅が多い江東区では特に重要です。
特に江東区のように集合住宅が多い地域では、水道が止まるだけでなく、建物内の排水管の安全確認が終わるまでトイレを流せない可能性があります。
自宅で避難生活を続けるためには、水や食料だけでなく、携帯トイレを十分に備え、使い方と使用後の保管方法まで確認しておく必要があります。
災害用トイレは、単なる防災用品ではありません。
自宅で生活を続けるための生活インフラであり、健康と尊厳を守る備えです。
まずは配布されたものや購入済みのものを確認し、1人1日5回を目安に、最低3日分、できれば1週間分、在宅避難を考える家庭では下水道復旧目安も踏まえ21日分を目標に、少しずつ備えておくことが重要です。
【地域防災計画から考える】
災害時のトイレに関しては、以前のブログで書いていますが、長いため内容をまとめて記載しますね。
結論として、3日分や1週間分の備蓄は大切ですが、それは『安心のゴール』ではなく、発災直後を乗り切るための入口ということを書きました。
1週間分あれば大丈夫、1週間後には行政支援やライフライン復旧が整う、と考えてしまうと危険です。
東京都や江東区の防災計画を見ても、水道・下水道・ガスなどが1週間で元通りになるとは限らず、特にトイレの問題は深刻です。
食料は、量を調整したり支援物資で補ったりできる可能性があります。
しかし、トイレは不足した瞬間に生活の限界が近づきます。
排せつは我慢し続けることができません。
トイレを我慢するために水分や食事を控えれば、脱水や体調悪化につながります。
高齢者、子ども、障害のある方、持病のある方、妊娠中の方にとっては、健康被害にも直結します。
また、トイレ不足は臭い、汚れ、感染症リスク、害虫、精神的ストレス、防犯上の不安にもつながります。
災害時のトイレは、単なる生活用品ではなく、命と健康、尊厳を守るための重要なインフラです。
特に江東区のようにマンションや集合住宅が多い地域では、『水が出たらトイレを流せる』とは限りません。
建物内の排水管、ポンプ、受水槽などに損傷があれば、水道が一部復旧しても、トイレを流すことで下階に汚水が逆流したり、漏水したりするおそれがあります。
道路下の上下水道だけでなく、建物内設備の安全確認が終わらなければ、普段通りのトイレ利用はできない可能性があります。
また、備蓄が尽き始めたとき、在宅避難者がどこへ向かうのかも重要です。
発災直後は自宅の水や食料、携帯トイレでしのげても、3日分はすぐになくなり、1週間分でも家族構成や使用回数によっては想定より早く尽きることがあります。
そのとき、『トイレだけ使いたい』『水だけほしい』『物資だけ受け取りたい』『充電だけしたい』と、拠点避難所や学校、公園、マンホールトイレ、給水拠点などに人が集まる可能性があります。
在宅避難者も当然、支援の対象です。
しかし、避難所に滞在する人、在宅避難者、運営支援者が無理なく使えるルールがなければ、現場は混乱します。
拠点避難所は行政職員だけで運営される場所ではなく、災害協力隊、町会・自治会、学校関係者、避難者自身などの協力で成り立ちます。
そして、その支援者自身も被災者です。トイレ利用者が増えれば、清掃、消毒、備品補充、行列整理、悪臭対策、防犯対応、苦情対応などの負担が一気に増えます。
だからこそ、災害時のトイレ対策は、携帯トイレを何回分備えるかだけでは不十分です。
拠点避難所のトイレを誰が使うのか、在宅避難者も使えるのか、清掃や消毒は誰が担うのか、夜間利用や防犯はどうするのか。
こうしたルールを平時から決めておく必要があります。
3日分・1週間分の備蓄は、安心のゴールではなく、発災直後を乗り切るための入口です。
災害時のトイレ問題は、在宅避難を続けられるか、避難所が機能し続けられるか、地域の支援者が疲弊せず活動を続けられるかに関わります。
だからこそ、家庭の備蓄とあわせて、地域全体で具体的なルールと備えを整えることが重要です。
【江東区の携帯トイレ配布をどう受け止めるか】
江東区では、『災害時に備える携帯トイレの使い方と備蓄のポイント』という動画を出しています。
また、今年度、江東区が1人15個を目安に災害用携帯トイレを配布し、各世帯にトイレガイドブックを届ける取り組みは、とても重要です。
私はこの事業を、単なる物品配布ではなく、区から区民への明確なメッセージだと受け止めています。
それは、『災害時の排泄は、行政だけでは支えきれません。だから、各家庭でも備えてください』というメッセージです。
一見すると厳しく聞こえるかもしれません。
しかし、江東区は人口54万人を超える自治体です。
大地震で上下水道が止まり、多くの家庭でトイレが使えなくなった場合、行政がすべての区民に十分な仮設トイレやし尿処理体制を用意することは、現実的に非常に困難です。
災害発生後は、速やかに50人に対して1基の仮設トイレ設置をするよう決まっていますが、実際問題として、仮設トイレが設置されるまでには、かなりの時間を要することは想像に難くありません。
実際、2016年の熊本地震では、避難所開設時から仮設トイレが用意されていた避難所は2%にとどまったとされています。
当日用意できたのは9%、翌日で30%、ほぼすべての避難所で仮設トイレが整備されたのは、地震発生時から2週間後でした。
その間、排せつを我慢し続けることはできないため、数少ない仮設トイレが長蛇の列になったり、公園などの公衆トイレが汚物であふれたりと、大変な状況になりました。
だからこそ、区がまず1人15個の携帯トイレを配布し、それをきっかけに各家庭で備蓄を考えてもらうことには大きな意味があります。
1人15個は、1日5回使うと約3日分です。
これは安心のゴールではなく、発災直後を乗り切るための入口です。
江東区のライフライン復旧想定では、上水道は17日、下水道は21日が目安とされています。
さらに、公共下水道が復旧しても、マンションや各建物の排水管、ポンプ、受水槽などの安全確認が終わらなければ、自宅のトイレをすぐに流せるとは限りません。
その意味で、私はこの事業を高く評価しています。
行政が54万人以上のトイレ備蓄をすべて担保することは難しいからこそ、まず全区民に携帯トイレを届け、トイレガイドブックで正しい使い方を伝え、家庭備蓄の必要性を啓発する。
これは、在宅避難を現実的に進めるうえで、とても重要な一歩です。
ここから、区民に伝えるべきことは明確です。
配布される15個で十分、ということではありません。
それを出発点として、各家庭で最低7日分、できれば下水道復旧目安を踏まえて21日分を目標に、携帯トイレの備蓄を増やしていくことが大切です。
災害時のトイレ対策は、命と健康、そして尊厳を守る備えです。
今回の配布事業をきっかけに、『トイレは行政が何とかしてくれるもの』から、『自宅で使えるように自分たちでも備えるもの』へ、区民全体の意識を変えていく必要があります。
【廃棄のことまで考えてみる】
ここまで携帯トイレの備蓄について書きましたが、実際には、使った後の排泄物をどう保管し、どう捨てるかまで考えておく必要があります。
江東区は、凝固剤で固めた排泄物は『燃えるゴミ』として出すように決まっています。
また、災害時のごみの回収等については、区のホームページにある『江東区災害廃棄物処理計画』に掲載されており、区民向けの啓発には『災害廃棄物処理ハンドブック』を出しています。
災害時には、家屋の倒壊や家具・家電の破損によって、大量の『災害廃棄物』が発生します。
江東区だけでなく東京23区全体では、特別区、東京二十三区清掃一部事務組合、東京二十三区清掃協議会が連携し、特別区一体で災害廃棄物を処理する仕組みが整えられています。
災害時のごみで大切なのは、生活ごみと片付けごみを分けることです。
壊れた家具や家電、畳、ガラスなどの片付けごみは、区が発災後に広報する地区集積所に出すことになります。
一方、生ごみ、使用済み簡易トイレ、おむつなどの生活ごみ・衛生ごみは、通常の集積所または戸別収集の枠組みで、可能な限り早く収集されることになります。
特にし尿については、仮設トイレ等にたまった液状のし尿と、家庭で使う携帯トイレ・簡易トイレの処理を分けて考える必要があります。
仮設トイレ等のし尿は、し尿収集車で回収する対象です。一方、凝固剤で固めた使用済み携帯トイレやおむつ等は、ごみとして扱われます。
江東区の災害廃棄物処理ハンドブックでは、使用済みの簡易トイレやおむつ等は可能な限り早く収集を行うとしつつ、収集が開始されるまでの間は、各家庭でその他の生活ごみと分けて保管するよう求めています。
つまり、携帯トイレは『備蓄して終わり』ではなく、使った後の袋を数日間、自宅で衛生的に保管することまで考えておく必要があります。
災害時のトイレ対策は、排泄する場所だけの問題ではありません。
使った後の排泄物をどう保管し、いつ出し、どのように回収してもらうかまで含めて、初めて現実的な備えになります。
江東区地域防災計画では、仮設トイレ等にたまったし尿は、し尿収集車で収集し、水再生センター等へ搬入する流れが示されています。
一方、家庭で携帯トイレや簡易トイレを使い、凝固剤で固めた排泄物は、し尿収集車ではなく、ごみとして処理されるものと考えられます。
江東区の計画では、ごみ収集について『発災後速やかに収集体制を確立』『衛生上速やかに処理を必要とするごみを優先』とされていますが、使用済み携帯トイレごみを発災何日後から回収するかまでは明記されていません。
過去の災害では、生活ごみや避難所ごみは公衆衛生上の観点から早期再開が目指され、能登半島地震でも、使用後の簡易トイレは固形ごみとしてパッカー車で回収されていました。
ただし、道路や清掃工場、収集車両、人員の被害状況によって、回収開始時期や頻度は大きく変わります。
したがって、家庭では携帯トイレを備えるだけでなく、使用後のごみを数日から1週間程度、自宅で衛生的に保管することも想定しておく必要があります。
そのため、携帯トイレ本体だけでなく、防臭袋、厚手のごみ袋、手袋、消毒用品、保管場所までセットで考えておくことが大切です。
【おわりに】
今回は、災害時のトイレ対策について書きました。
できるだけ不安をあおらず、必要な備えを具体的に考えられるように書いたつもりです。
もし不安を感じた方がいたら、まずは配布される携帯トイレを確認し、家族の人数で何日分あるのかを数えるところから始めていただきたいと思います。
次回は、トイレ関係備蓄で一番多い質問である『とはいえ、何をどのくらい用意したらよいの?』ということについて商品や料金掲示など具体的に書きます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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