【重要】江東区で大地震が起きたとき、避難所・水・トイレ・食料は本当に足りるのか

本日の要約

【結論】江東区の震災対策では、避難所・給水・食料配給だけに頼るのではなく、自宅が安全なら在宅避難できる備えが必要です。

【理由】上水道の復旧目安は17日、下水道は21日であり、人口54万人超の江東区で全員に水・食料・トイレを十分に届けることは現実的に難しいためです。

【何をするか】まずは水と食料を最低7日分、携帯トイレは1人1日5回を目安にできれば21日分、少しずつ家庭で備えていきましょう。

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6月25日に岩手県沖でM6.9最大深度6強の地震があり、翌日には山梨県東部・富士五湖でM5.6最大深度6弱が起きるという、なんとも不穏な状況が続いています。

それに伴い、江東区の地域防災計画を改めて読み返し、計画から区民の方々に知っていただきたいことを考えてみました。

大地震への備えというと、『水や食料は3日分』『できれば1週間分』とよく言われます。

もちろん、何も備えないよりは、3日分でも大きな意味があります。

しかし、江東区の地域防災計画や東京都の被害想定を丁寧に見ていくと、首都直下地震のような大規模災害では、3日や1週間で生活が元通りになるとは限らないことがわかります。

特に江東区は、人口が54万人を超える大きな自治体です。集合住宅も多く、道路・橋・上下水道・エレベーター・物流が同時に影響を受ける可能性があります。

とはいえ、この記事で伝えたいのは、『行政は頼れない』という話ではありません。

行政の支援には限界があるからこそ、行政・地域・家庭がそれぞれの役割を果たす必要がある、ということです。

この記事では、必要以上に不安をあおるのではなく、

『行政ができること』

『地域で支え合うこと』

『各家庭で備えておくべきこと』

を分けて、できるだけわかりやすく整理します。

結論から言えば、江東区で震災後の生活を守るためには、避難所に行けば何とかなる、給水車や配給を待てば何とかなる、という考え方だけでは足りません。

自宅が安全であれば、在宅避難を基本に考える。

そのために、水・トイレ・食料を自宅に備えておく。

避難所は、家にいられない人、支援が必要な人、地域の情報や物資の拠点として使う。

この考え方が、これからの江東区の防災ではとても重要になると思います。

では、行ってみよー☆

 

【江東区地域防災計画は『在宅避難』も前提にした計画】

江東区地域防災計画は、災害対策基本法に基づいて作られている、江東区の防災対策の基本となる計画です。

区、防災関係機関、区民、事業所がそれぞれどのような役割を担うのかを定めています。

この計画を住民目線で読むと、大切なことが見えてきます。

それは、江東区の防災計画は、『全員が避難所に行って生活する』ことを前提にした計画ではないということです。

大地震が起きたとき、自宅が倒壊したり、火災や浸水などで住み続けることが危険な場合は、当然、避難が必要です。

しかし、自宅の建物が安全で、火災などの危険もなく、生活を続けられる場合は、避難所に行くのではなく、在宅避難をすることが基本になります。

これは、行政が冷たいという話ではありません。

江東区の人口規模を考えると、全員が避難所に入ることは現実的ではないからです。

避難所は、家にいられない人、支援が必要な人、地域の情報や物資を受け取る拠点として、とても重要です。

一方で、自宅で過ごせる人まで避難所に集中してしまうと、本当に避難所が必要な人が入れなくなる可能性があります。

だからこそ、在宅避難は『自己責任で勝手に頑張ってください』という話ではなく、地域全体で限られた避難所機能を守るための現実的な防災行動だと考える必要があります。

 

【江東区の被害想定はかなり厳しい】

江東区で想定されている大きな地震の一つが、都心南部直下地震です。

地震の規模はマグニチュード7.3。

江東区内でも、広い範囲で震度6強以上の強い揺れが想定されています。

大地震では、建物の被害、火災、道路の通行障害、停電、断水、下水道の被害、ガスの停止、通信障害などが同時に起こる可能性があります。

ここで大切なのは、災害時の困りごとは一つずつ起きるのではなく、同時に起きるということです。

水が出ない。

トイレが流せない。

エレベーターが止まる。

スーパーに商品が届かない。

スマホの充電が切れる。

道路が混雑して給水や物資が届きにくい。

避難所には多くの人が集まる。

こうしたことが重なると、行政や地域がどれだけ頑張っても、すぐに普段通りの生活に戻すことはできません。

だからこそ、各家庭での備蓄が必要になります。

 

【給水所はある。しかし『水を取りに行く力』が必要になる】

江東区には、災害時の応急給水拠点が示されています。

江東区公式ページでは、亀戸給水所、豊住給水所、江東給水所、有明給水所、区立南砂三丁目公園、都立辰巳の森海浜公園、そして江戸川区内の大島・小松川応急給水槽が災害時給水拠点として掲載されています。

区内で見ると6か所、周辺拠点を含めると7か所です。

また、災害時の飲料水の給水基準は、1人1日3リットルとされています。

これは、人が命をつなぐために必要な最低限の飲料水の目安です。

では、江東区の人口約54.4万人に対して、1人1日3リットルを給水すると、どのくらいの水が必要になるのでしょうか。

単純計算すると、約54.4万人 × 3リットル = 約163万リットル/日になります。

水の量で言えば、約1,633立方メートルです。

これはあくまで飲料水の最低限の量であり、手洗い、調理、食器洗い、洗面、トイレ、清拭などに使う生活用水は含まれていません。

さらに、この水を区民が7か所の給水拠点へ取りに行くと考えると、1か所あたりの人数は、約54.4万人 ÷ 7か所 = 約7.8万人/か所になります。

つまり、単純化して考えると、1つの給水拠点に約7万8千人が水を取りに来る計算です。

もちろん、実際には全員が同時に来るわけではありません。

世帯の代表者が取りに来る場合もあります。

給水車や追加の給水場所が設けられる場合もあります。

地域や被害状況によって、給水拠点の使われ方も変わります。

それでも、人口規模を考えると、給水拠点があるから安心とは言い切れません。

これは実際の給水計画をそのまま再現したものではなく、人口規模と給水拠点の負担感をイメージするための単純計算ですが、仮に、1人分の水を受け取るのに30秒かかるとします。

これは、容器を出し、水を入れ、受け取って次の人に交代するまでの時間としては、かなり楽観的な想定です。

1か所に約7万8千人が来るとすると、給水口が1つしかなければ、全員に配るまでに約27日分の時間がかかります。

給水口を10口用意しても約2.7日、20口用意しても約32時間、40口用意しても約16時間かかる計算です。

整理すると、次のようになります。

これは、かなり単純化した計算です。

実際には、給水拠点までの移動、列の整理、容器の準備、情報確認、混雑、暑さや寒さ、高齢者や子ども連れの負担などが加わります。

また、世帯単位で取りに来る場合は人数は減りますが、その分、1回に受け取る水の量は増えます。

例えば4人家族なら1日分だけで12リットル、数日分ならさらに重くなります。

ここで伝えたいのは、給水拠点が役に立たないということではありません。

むしろ、災害時の給水拠点は命を守るために欠かせない重要な仕組みです。

しかし、江東区の人口規模を考えると、給水拠点だけで全区民の水をすぐにまかなうことは簡単ではありません。

給水所に水があっても、そこまで取りに行く必要があります。

水を受け取るために並ぶ必要があります。

受け取った水を自宅まで運ぶ必要があります。

集合住宅では、エレベーターが止まっていれば階段で上げる必要があります。

1リットルの水は約1キログラムです。

10リットルなら約10キログラム、20リットルなら約20キログラムです。

高齢者、障害のある方、乳幼児のいる家庭、体調の悪い方にとって、給水拠点まで行き、水を持ち帰ることは大きな負担になります。

特に江東区のように集合住宅が多い地域では、『給水所がある』ことと『各家庭が水を使える』ことの間には、大きな距離があります。

だからこそ、家庭では飲料水そのものを備蓄するとともに、給水袋、ポリタンク、キャリーカートなど、『水を受け取り、自宅まで運ぶための道具』も準備しておく必要があります。

まずは1人1日3リットルを目安に3日分。

次に1週間分。

可能であれば、上水道の復旧目安17日も意識して、少しずつ備蓄を増やしていく。

一度に完璧に備える必要はありません。

ただ、『給水所があるから大丈夫』ではなく、自宅で数日間は水を使える状態をつくっておくことが、江東区で在宅避難を成立させるためにはとても重要です。

 

【水道の復旧目安は17日。だから水は『3日分』で終わらない】

江東区の震災時のライフライン復旧想定では、上水道の復旧目安が17日(断水率52.4%)、下水道の復旧目安が21日(6.6%)とされています。

ここは非常に重要です。

よく『水や食料は最低3日分、できれば1週間分』と言われます。

これは、まず命をつなぐための最低限の目安としては大切です。

しかし、上水道の復旧目安が17日であることを考えると、『3日分あれば水道が戻る』という意味ではありません。

もちろん、17日分の水を全家庭が一度に備えることは簡単ではありません。

置き場所の問題もあります。

費用の問題もあります。

集合住宅では、重さの問題もあります。

それでも、現実を見れば、3日分で安心とは言い切れないことは確かです。

まずは3日分。

次に1週間分。

可能であれば、飲料水だけでも少しずつ増やす。

生活用水は、風呂の残り湯、防災用の水タンク、ウェットシート、紙皿、ラップなどを組み合わせて、水を使わない生活に近づける。

一度に完璧を目指す必要はありません。

しかし、復旧目安を知ったうえで、少しずつ備蓄を増やしていくことが大切です。

 

【トイレは、水より先に限界が来る可能性がある】

震災時に最も見落とされやすく、しかし生活を直撃するのがトイレです。

水や食料の備蓄は意識している方も多いと思います。

しかし、トイレは毎日必ず使うにもかかわらず、備えが後回しになりがちです。

大地震で上下水道が止まった場合、自宅のトイレはすぐに流せなくなる可能性があります。

水が出たとしても、下水道や建物内の排水管が安全に使えるか確認できなければ、安易に流すことはできません。

特に集合住宅では、排水管が破損している状態で上階の人がトイレを流すと、下の階で汚水が逆流したり、漏水したりするおそれがあります。

江東区地域防災計画では、上下水道が復旧するまでの間、災害用トイレを確保し、し尿処理については東京都下水道局、東京二十三区清掃一部事務組合、民間処理業者等と連携して対応するとされています。計画上は、災害発生当初は避難者約50人に1基、避難が長期化する場合は約20人に1基の災害用トイレ確保に努めるとされています。

この基準自体は、避難所生活を維持するうえで重要です。

しかし、江東区の人口規模で考えると、これだけで十分とは言えません。

もちろん、実際には区民全員が同時に外部トイレへ向かうわけではありません。

ただ、江東区全体で必要になり得る規模感をつかむため、あえて単純化して考えてみますが、仮に江東区の人口を約54.4万人として、区民全員が自宅トイレを使えず、外部の災害用トイレに頼るとします。

50人に1基の基準で考えると、約54.4万人 ÷ 50人 = 約10,900基の災害用トイレが必要になります。

長期化時の20人に1基で考えると、約54.4万人 ÷ 20人 = 約27,200基が必要です。

つまり、区民全体が災害用トイレに頼る状況になれば、単純計算でも1万基から2万7千基規模のトイレが必要になります。

しかも、トイレは置けば終わりではありません。

設置場所が必要です。

組み立てる人が必要です。

夜間照明が必要です。

防犯対策が必要です。

清掃が必要です。

消毒が必要です。

トイレットペーパーや手指消毒用品も必要です。

し尿を回収する体制も必要です。

高齢者や障害のある方が使える形にする必要もあります。

さらに重要なのは、発災直後の3日間です。

江東区の計画では、発災後3日目までは、し尿収集車による収集・運搬が困難な状況が予想されるため、可能な限り収集を要しない災害用トイレを活用するとされています。つまり、災害用トイレがあっても、し尿をすぐに回収できるとは限らないということです。

では、実際にどのくらい並ぶ可能性があるのでしょうか。

ここでは、わかりやすくするために、かなり単純化して計算します。

1人が1日にトイレを使う回数を5回とします。

これは、災害時に水分を控えてしまう人がいることを考えると少なめかもしれませんが、一般的な目安として使います。

江東区の人口約54.4万人が1日5回トイレを使うと、約54.4万人 × 5回 = 約272万回/日のトイレ利用が発生します。

これだけの回数を、外部の災害用トイレで処理する必要があると考えると、負担の大きさがわかります。

①50人に1基の場合

50人に1基の災害用トイレがある場合、1基あたり50人が使います。

1人1日5回なら、1基あたりの利用回数は、50人 × 5回 = 250回/日です。

仮に、トイレ利用が主に起きている16時間に集中すると、1基あたり1時間に約15.6回使われる計算になります。

1回の利用時間を3分とすると、1時間に処理できるのは最大20回です。

この場合、数字上は何とか回るように見えます。

しかし、これは利用が16時間に均等に分散するという、かなり楽観的な前提です。

実際には、朝、夕方、就寝前に利用が集中します。

また、仮設トイレでは、扉の開閉、衣服の着脱、荷物の置き場所、暗さ、足場の悪さ、汚れ、子どもや高齢者の介助などにより、1回3分で済まないことも多いと考えられます。

もし1回5分かかると、1時間に処理できるのは最大12回です。

一方、50人に1基では、平均でも1時間に約15.6回の利用が発生します。

この時点で、平均的な利用だけでも処理能力を超えます。

50人に1基という基準は、災害発生当初にまず確保を目指す重要な目安です。

ただし、高齢者や子どもを含む住民が、混雑や不衛生を感じずに安心して使える水準とまでは言い切れません。

②20人に1基の場合

長期化時の目標である20人に1基で考えると、1基あたり20人が使います。

1人1日5回なら、1基あたりの利用回数は、20人 × 5回 = 100回/日です。

16時間で使うと、1時間あたり約6.25回です。

1回3分なら、数字上はかなり余裕が出ます。

1回5分でも、平均的には何とか回る可能性があります。

しかし、ここでも問題はピーク時間です。

朝や夜に利用が集中すれば、20人に1基でも行列はできます。

高齢者や障害のある方、乳幼児連れ、体調の悪い方にとっては、たとえ10分、20分の待ち時間でも大きな負担です。

雨の日、寒い日、夜間、停電時であれば、さらに厳しくなります。

つまり、20人に1基であっても、すべての人にとって十分とは言えません。

特に要配慮者にとっては、『外の仮設トイレに並ぶ』こと自体が難しい場合があります。

 

【トイレの行列は、健康被害につながる】

トイレの問題は、単に『並ぶのが大変』という話ではありません。

トイレが汚い、遠い、暗い、怖い、長時間並ぶ必要がある。

そうなると、人はトイレに行く回数を減らそうとします。

その結果、水分を控える人が出ます。

水分を控えると、脱水、便秘、尿路感染、血栓症、体調悪化につながるおそれがあります。

特に高齢者にとっては、トイレ環境の悪化が命に関わる問題になることもあります。

また、トイレを我慢することは、尊厳の問題でもあります。

災害時だから仕方ない、では済まされません。

安心して排泄できる環境は、避難生活を続けるうえで欠かせない生活基盤です。

 

【高齢者に『仮設トイレに並んでください』は現実的ではない】

ここは特に強調したい点です。

災害時のトイレ対策を考えるとき、『仮設トイレを増やせばよい』と考えがちです。

もちろん、仮設トイレやマンホールトイレの整備は必要です。

避難所や避難場所において、災害用トイレがなければ避難生活は成り立ちません。

しかし、高齢者や障害のある方にとって、仮設トイレに行くこと自体が大きな負担になります。

長時間並べない。

夜間に外へ出るのが危険。

段差で転倒する。

寒さで体調を崩す。

介助者がいないと使えない。

認知症の方は場所や使い方がわからなくなる。

女性や子どもは防犯面の不安もある。

こうした現実を考えると、トイレ対策は『避難所に災害用トイレを置く』だけでは足りません。

特に在宅避難をする家庭では、自宅の中で使える携帯トイレの備蓄が必要です。

下水道の復旧目安が21日であることを考えると、携帯トイレは、まず7日分を確保し、在宅避難を考える家庭では21日分を目標に少しずつ増やしていくべきだと私は考えます。

1人1日5回で計算すると、21日分は1人あたり105回分です。

2人なら210回分。

3人なら315回分。

4人なら420回分です。

この数字を見ると、多いと感じるかもしれません。

しかし、トイレは毎日必ず使うものです。

そして、上下水道が止まっている間、家庭内でトイレを使えるかどうかは、在宅避難を続けられるかどうかに直結します。

特に高齢者がいる家庭では、仮設トイレに並ぶ前提ではなく、自宅で排泄できる環境を守ることが大切です。

 

【携帯トイレは、在宅避難を続けるための必需品】

江東区のライフライン復旧想定では、上水道の復旧目安が17日、下水道の復旧目安が21日とされています。

この数字を踏まえると、在宅避難を考える家庭では、携帯トイレは最低でも21日分を目標に備えるべきだと考えます。

1人1日5回で計算すると、必要な携帯トイレの数は次のとおりです。

この数字を見ると、多いと感じるかもしれません。

しかし、トイレは毎日必ず使います。

そして、上下水道が止まっている間、家庭内でトイレを使えるかどうかは、在宅避難を続けられるかどうかに直結します。

特に高齢者、障害のある方、乳幼児のいる家庭では、仮設トイレに長時間並ぶことを前提にするのではなく、自宅内で使える携帯トイレを備えておくことが重要です。

携帯トイレは、便器に袋をかぶせ、凝固剤で固めて処理するものが一般的です。

あわせて、においを抑える袋、大きめのごみ袋、手袋、ウェットシート、トイレットペーパー、消毒用品も必要です。

災害時のトイレ対策は、避難所だけの問題ではありません。

各家庭が備えることで、避難所のトイレ混雑を減らし、高齢者や支援が必要な方を守ることにもつながります。

水や食料と同じように、トイレも家庭備蓄の中心に置くべきです。

むしろ、江東区のように人口が多く、集合住宅が多い地域では、水より先にトイレが限界になる可能性があると考えて、今から備えておく必要があります。

 

【下水道が復旧しても、すぐに自宅トイレを流せるとは限らない】

ここも多くの方に知っていただきたい点です。

『下水道の復旧目安が21日』と聞くと、21日後には自宅のトイレが普段通り使えると思うかもしれません。

しかし、そうとは限りません。

復旧目安で想定されているのは、主に公共インフラ側、つまり道路下の水道管や下水道管などの復旧です。

一方で、マンションや各建物の中にある受水槽、給水管、排水管、ポンプ、各住戸内の設備まで含めて、すべてが同時に復旧するわけではありません。

特に集合住宅では、建物内の排水管が破損している状態でトイレを流すと、下の階に汚水が逆流したり、漏水したりするおそれがあります。

そのため、水道や下水道が復旧しても、建物内の設備点検が終わるまでは、トイレを流してよいか判断できない場合があります。

建物に大きな被害がなく、管理会社や設備業者の点検が早く進めば、数日から1週間程度で使用判断ができるかもしれません。

しかし、配管損傷の疑いがある場合は1〜3週間、実際に排水管の破損や逆流が起きた場合は、1か月以上かかることも考えられます。

つまり、公共下水道が復旧する日と、自宅トイレが安全に使える日は同じではありません。

このことを考えても、携帯トイレ21日分という備えは、決して大げさではありません。

 

【食料配給は『全区民に毎日3食を届ける』前提ではない】

次に食料です。

江東区には、食料や生活必需品の備蓄計画があります。

江東区地域防災計画では、避難所生活者等の推定人数を基準に食料等を備蓄し、東京都と連携して発災後3日分の物資確保に努めることが示されています。

ここで大切なのは、計画の対象が、全区民54万人に毎日3食を配るという意味ではないことです。

江東区の人口54万人超に、仮に1日3食を配るとします。

すると、1日で約163万食が必要になります。

3日分なら約490万食。

7日分なら約1,140万食を超えます。

これは、江東区だけの数字です。

首都直下地震では、江東区だけが被災するわけではありません。

東京都全体、場合によっては神奈川、千葉、埼玉を含む首都圏全体に大きな影響が出ます。

その中で、江東区だけに十分な食料がすぐ届くと考えるのは、かなり楽観的です。

東日本大震災や能登半島地震では、全国から被災地へ支援物資が送られました。

しかし、首都直下地震では、被災人口の規模が桁違いになります。

支援する側の自治体や物流拠点も同時に影響を受ける可能性があります。

つまり、首都圏の大災害では、問題は『食料が存在するか』だけではありません。

食料を運べるか、仕分けできるか、避難所まで届けられるか、在宅避難者に配れるか、

ここが大きな課題になります。

 

【ヘリポート整備は重要。ただし食料配給の主力にはならない】

江東区では、これから新木場防災倉庫の整備にあわせて、ヘリポートの設置に向けた調査等が進められる予定です。

令和8年度予算案概要でも、23区最大となる仮称・新木場防災倉庫の整備にあわせ、ヘリポート設置に向けた調査等を実施するとされています。

これは、とても重要な取り組みです。

まず、この整備を否定するものではなく、むしろ災害時の選択肢を増やす重要な投資だと考えています。

江東区は、川や運河、橋が多い地域です。

大地震で道路や橋に被害が出た場合、陸路だけに頼ることは危険です。

空から人員や物資を入れられる拠点を持つことは、防災力を高めるうえで大きな意味があります。

ただし、ヘリポートができれば、食料問題がすべて解決するわけではありません。

ヘリは、緊急性の高い物資や人員輸送には強いです。

医療物資、乳児用ミルク、アレルギー対応食、医療的ケアに必要な物資、通信機器、発電機、簡易トイレ、要配慮者支援物資などを運ぶには有効です。

一方で、54万人分の食料を毎日運ぶ主力手段としては限界があります。

必要な食料の量があまりにも大きいからです。

そのため、ヘリポート整備は評価しつつも、住民向けには次のように伝える必要があります。

ヘリポートは、命に関わる緊急物資を入れるための重要な手段。

しかし、日々の食料を全区民に届ける主力ではない。

だからこそ、各家庭の備蓄が必要になる。

この整理が大切です。

 

【食料は最低7日分、できれば2週間を目標に少しずつ増やす】

では、家庭ではどのくらい食料を備えるべきでしょうか。

一般的には、最低3日分、できれば1週間分と言われます。

これは最初の目標としては現実的です。

何も備えていない家庭に、いきなり2週間分、3週間分と言っても、ハードルが高すぎるからです。

しかし、江東区の人口規模、物流の混乱、上水道17日、下水道21日という復旧目安を考えると、在宅避難を本気で考える家庭では、最低7日分、できれば2週間分を目標に少しずつ増やすことが望ましいと私は思います。

ここで大切なのは、特別な非常食だけを大量に買うことではありません。

普段から食べているものを少し多めに買い、食べたら買い足す。

いわゆるローリングストックです。

たとえば、次のようなものです。

米、パックご飯、レトルト食品、缶詰、乾麺、カップ麺、フリーズドライ食品、野菜ジュース、栄養補助食品、菓子、粉ミルク、離乳食、介護食、アレルギー対応食品など。

あわせて、カセットコンロ、カセットボンベ、紙皿、ラップ、割り箸、ウェットシート、ごみ袋も必要です。

ガスが6週間止まる可能性を考えると、調理方法も考えておく必要があります。

食料備蓄は、『災害用に特別なものを買う』より、普段の生活の延長で少し厚くする方が続けやすいです。

 

【備蓄している人が損をする仕組みにしてはいけない】

災害時には、行政は困っている人を支援する必要があります。

これは当然です。

しかし、同時に考えなければならないことがあります。

それは、平時から備えていた人の努力が無意味になったり、備えない方が得だと受け止められたりする仕組みにしてはいけない、ということです。

もし『備蓄していなくても避難所に行けば食料も水もトイレも何とかなる』という空気が広がれば、備蓄する人は増えません。

その結果、発災後に避難所へ人が集中し、限られた物資やトイレをめぐって混乱が起きる可能性があります。

行政の支援は大切です。

しかし、行政の支援は、全員の普段通りの生活を丸ごと支えるものではなく、命を守るための最後の安全網です。

だからこそ、平時から備えた人が在宅避難を続けられるようにすることは、本人や家族を守るだけでなく、避難所や行政支援を本当に必要な人に届けることにもつながります。

備蓄は、自分だけのためではありません。

地域全体の混乱を減らすための行動でもあります。

 

【では、家庭で何を備えればよいのか】

ここまで読むと、『結局、何から始めればいいのか』と感じるかもしれません。

まずは完璧を目指さなくて大丈夫です。

大切なのは、今日から少しずつ始めることです。

最初の目標は、次の5つです。

1つ目は、水です。

まずは1人1日3リットルを目安に3日分。

次に1週間分。可能であれば、さらに増やしていく。

給水袋やキャリーカートもあわせて用意します。

2つ目は、携帯トイレです。

1人1日5回を目安に、まずは7日分。最終的には21日分を目標にします。

高齢者や持病のある方がいる家庭では、特に優先度が高い備蓄です。

3つ目は、食料です。

最低3日分、できれば7日分。さらに在宅避難を考えるなら2週間分を目標にします。

普段食べているものを多めに買い、食べながら補充する方法がおすすめです。

4つ目は、電気・情報です。

モバイルバッテリー、乾電池式ラジオ、懐中電灯、電池、充電ケーブル、家族の連絡先を書いた紙を用意します。

5つ目は、衛生用品です。

ウェットシート、アルコール、マスク、手袋、ごみ袋、生理用品、紙おむつ、介護用品、常備薬などです。

特にトイレと衛生用品は、後回しにされがちですが、避難生活の質と健康に直結します。

 

【行政に求めたいこと】

各家庭の備蓄が重要である一方で、行政の役割も当然あります。

家庭備蓄を強調することは、行政の責任を軽くするという意味ではありません。

むしろ、行政が限られた支援を本当に必要な人に届けるためにも、平時からの情報発信と仕組みづくりが重要になります。

私は、江東区として、次の点をさらに明確にしていく必要があると考えます。

第一に、在宅避難を前提とした情報発信です。

『避難所に行く』だけではなく、『自宅が安全なら在宅避難をする』『水・トイレ・食料を備える』ことを、もっと具体的に伝える必要があります。

これらを確実に伝えるためには、もっと『江東区防災アプリ』を啓発することが必要だと考えています。

第二に、携帯トイレ備蓄の強化です。

下水道復旧目安が21日である以上、3日分や1週間分だけでは不十分な家庭が多く出ます。

特に高齢者、障害のある方、乳幼児のいる家庭への支援が必要です。

第三に、給水拠点まで行けない人への支援です。

給水所があっても、水を運べない人がいます。

高齢者や障害のある方、高層階に住む方への支援方法を、地域と一緒に考える必要があります。

第四に、食料配給の現実的な整理です。

避難所生活者向けの備蓄と、在宅避難者への支援を分けて、どこで、誰が、どのように配るのかを具体化する必要があります。

第五に、新木場防災倉庫とヘリポートの活用方針です。

ヘリで何を優先して運ぶのか。荷下ろし後、どのように区内へ配送するのか。医療・福祉物資をどう優先するのか。

ここを事前に整理しておくことが重要です。

 

【不安になるためではなく、動くために知る】

ここまで、かなり現実的な話を書いてきました。

水道はすぐ戻らないかもしれない。

トイレは流せないかもしれない。

食料配給は全区民に毎日届くわけではない。

給水車やヘリは大切だけれど、家庭備蓄の代わりにはならない。

こう書くと、不安になる方もいると思います。

しかし、私が伝えたいのは、怖がってほしいということではありません。

むしろ逆です。

災害は、知らないままだと不安が大きくなります。

でも、数字を知り、仕組みを知り、自分にできる備えがわかると、不安は少しずつ行動に変えられます。

今日、携帯トイレを1箱買う。

水を1ケース多めに置く。

レトルト食品を少し増やす。

給水袋を用意する。

家族で最寄りの給水拠点を確認する。

マンションの防災マニュアルを見てみる。

高齢の親に携帯トイレを届ける。

こうした一つ一つの行動が、災害時の混乱を減らします。

 

【おわりに】

江東区は人口が多く、集合住宅も多い地域です。

だからこそ、行政だけに頼るのではなく、家庭、地域、行政がそれぞれ備える必要があります。

在宅避難の備えは、自分の家族を守るためだけではありません。

避難所を本当に必要な人に使ってもらうためでもあります。

給水や食料配給の混乱を減らすためでもあります。

地域全体で命を守るための準備です。

最後に、私が一番伝えたいことを書きます。

江東区の震災対策で大切なのは、『避難所に行けば何とかなる』と考えることではありません。

自宅が安全なら、自宅で生活を続けられる備えをしておくことです。

そのために、まずは水と食料を1週間分。

そして、トイレは下水道復旧目安を踏まえて、できれば21日分。

一度に完璧でなくて構いません。

今日できる備えを、一つずつ増やしていきましょう。

それが、自分と家族を守り、避難所や行政支援を本当に必要な人に届け、地域全体を守る一番現実的な防災です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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  6. ラブレターを書いてみた☆

  7. 『今』から未来を予測する

  8. 【報告】令和6年度の質疑答弁について~土木費編~

  9. 備えあれば憂いなし⑥☆~高齢期以降の意思決定支援~

  10. 喉が大変なことになりました☆

  11. 【報告】臨時本会議がありました☆

  12. 【ご報告】決算審査での質問について①土木費

  13. 一般質問の大綱を決めました☆

  14. 情報への向き合い方と考えることについて☆

  15. 【ご報告】会派に入りました

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