本日の要約
結論:介護保険外サービスは、介護保険だけでは支えきれない高齢者の暮らしを補う地域資源として、自治体が整理・可視化していく必要があります。
理由:通院同行、配食、生活支援、見守り、訪問理美容など、日常生活の困りごとは介護保険の枠外に多く、現場の支援者の善意や負担に頼りがちだからです。
何をするか:今回は、厚労省関連資料をもとに、保険外サービスの考え方、情報提供の注意点、自治体に求められる役割を整理します。
ブログへの訪問をありがとうございます!
今日は一日資料を読み込んだり事務処理を行い、目がしょぼしょぼになりました。
そして、歳のせいにはしたくありませんが、年々、インプットした点の情報を結ぶ回路が機能低下しているのか、時間がかかるようになった気がしています。
とはいえ、点の情報をつなぎながら江東区の現状を調べ新たな政策提案をしていくことは重要だと思うので、ここは頑張りどころですね。
さて、今日は、前回の続きである『介護保険外サービス』について書きます。
前回扱った『頼れる身寄りがいない高齢者等への支援』と今回の保険外サービスは、どちらも介護保険だけでは支えきれない生活課題を、地域資源でどう補うかという点でつながっています。
では、行ってみよー☆
【この資料の問題意識】
今回説明するのは、令和7年度老人保健健康増進等事業の一環として日本総研が作成した『保険外サービスを含む多様な地域資源について利用者や家族等に情報提供する際の手引き・ポイント集』です。
この資料をひと言でいうと、ケアマネジャー、地域包括支援センター職員、自治体職員が、高齢者や家族に『介護保険だけでは足りない支援=保険外サービス』を紹介する際の手引きです。
高齢者の生活支援は、介護保険サービスだけではカバーしきれません。
たとえば、介護保険では対応が難しいものとして、資料では次のような例が挙げられています。
同居家族分を含む掃除や買い物、庭木の剪定や草刈り、大掃除や不用品整理、電気・水道などの修理対応、訪問日以外の見守りや話し相手、通院同行・救急車同乗、旅行・冠婚葬祭への同行、金銭管理、入院・入所手続き代行、等々。
これらは、本人や家族にとっては切実な困りごとですが、介護保険の枠内では対応できないことがあります。
そこで、自費の民間サービス、地域の支え合い、NPO、シルバー人材センターなどを含めて、どう情報提供するかがテーマになっています。
【『保険外サービス』とは何か】
この資料でいう保険外サービスとは、公的な介護保険制度ではカバーしきれない高齢者や家族のニーズに応える、主に民間事業者等が提供するサービスです。
代表例は次のようなものです。

つまり、保険外サービスは『介護の代替』ではなく、介護保険では届きにくい生活上の困りごとを補い、在宅生活を続けるための地域資源として位置づけられています。
【なぜ今、重要なのか】
ここで重要なのは、保険外サービスが『便利な追加サービス』ではなく、単身高齢者や家族介護者を支える生活基盤になりつつあるという点です。
資料では、保険外サービスが必要になる背景として、主に2点が示されています。
第一に、単身高齢者世帯が増えていることです。
家族が同居していない、近くにいない、すぐに頼れないという状況が増えています。
第二に、働きながら介護する家族が増えていることです。
資料では、2030年には『働く家族介護者』が318万人に達するとの推計も紹介されています。
その一方で、利用者や家族から見ると、保険外サービスは分かりにくい。
『介護保険で何ができて、何ができないのか』『地域にどんなサービスがあるのか』『どの事業者が安心なのか』が見えにくい、という課題があります。
そのため、ケアマネジャーや地域包括支援センター職員、自治体職員が、特定の事業者に偏らない形で情報を整理し、本人・家族が比較して選べるように提示することが重要になります。
【ケアマネ・地域包括・自治体に期待される役割】
資料では、支援者側の役割を大きく3つに整理しています。
① 情報収集・整理
日頃から地域の保険外サービスについて情報を集め、比較しやすく整理しておくことです。
情報源としては、事業者のパンフレット、料金表、直接ヒアリング、見学会、自治体や社協の地域資源リスト、地域包括や生活支援コーディネーターからの情報、利用者・家族からの評価や苦情などが挙げられています。
ポイントは、インターネット情報だけで判断しないことです。
資料でも、実際に現場を視察したり、電話で直接確認したりする重要性が示されています。
② 情報提供
利用者本人や家族から困りごとを丁寧に聞き取り、介護保険で対応できること・できないことを説明したうえで、保険外サービスの選択肢を提示します。
ここで大事なのは、特定の事業者を一方的に勧めるのではなく、複数の選択肢、料金、特徴、契約上の注意点を示し、本人・家族が納得して選べるようにすることです。
③ 利用開始後のフォロー・連携
サービスを紹介して終わりではありません。利用後に、本人や家族の満足度、生活状況の変化、トラブルの有無を確認することが重要です。
また、サービス提供中に体調急変や事故があった場合に備えて、事業者との連絡体制や緊急時対応を事前に決めておくことも求められています。
【主要な4カテゴリの見方】
保険外サービスは幅広いですが、資料では特に利用場面が多く、自治体や支援者が情報整理しやすい4分野が詳しく扱われています。
この資料では、特に活用場面が多いサービスとして、次の4つを詳しく扱っています。
①生活支援
掃除、買い物、調理、ゴミ出し、電球交換、不用品整理、通院同行などです。
選ぶ際は、次の3点を見る必要があります。

資料では、がん治療後の買い物・帰宅同行、ゴミ屋敷状態の段階的片付けなど、介護保険サービスの前提を整えるために生活支援を活用する事例も紹介されています。
②配食
配食サービスでは、単に『弁当を届ける』だけでなく、本人の状態に合うかを確認する必要があります。
見るべき点は、主に次の2つです。

また、配食時の見守り・安否確認については、事業者や自治体契約によって位置づけが異なります。
無料で含まれる場合、別料金の場合、そもそも対象外の場合があるため、契約内容の確認が必要です。
※江東区はすでに必要な方向けに事業化されています。
③移動支援
移動支援は、本人の身体機能と外出目的によって選ぶサービスが変わります。

特に、院内付き添いや診察時の同席、旅行・冠婚葬祭への同行などは、介護保険では対応しづらい場面が多く、保険外サービスの活用余地があります。
④訪問理美容
自宅や施設に理美容師が訪問し、カット、カラー、髭剃りなどを行うサービスです。
ただし、ここは法令上の注意が重要です。
理容・美容は原則として理容所・美容所で行うものですが、疾病、骨折、認知症、障害、寝たきり等により店舗へ行くことが困難な場合には、訪問理美容が可能とされています。
情報提供時には、以下の確認が必要です。

※江東区はすでに必要な方向けに事業化されています。
【自治体政策として特に重要な読みどころ】
自治体目線では、この資料は単なるサービス紹介集ではなく、地域資源をどう見える化し、どう住民に届けるかの実務資料として読めます。
特に重要なのは次の点です。
①地域資源リストの整備
保険外サービスは、介護保険サービスのように指定事業者一覧がきれいに整っているとは限りません。
そのため、自治体・地域包括・生活支援コーディネーター等が連携して、地域資源リストやサービス一覧を作る意義があります。
一覧に入れるべき項目は、たとえば次のようなものです。

②中立性・公平性の確保
自治体や包括が民間サービスを紹介する場合、特定事業者への誘導にならないよう注意が必要です。
資料の考え方に沿えば、望ましい情報提供は、複数候補を示す、料金や特徴を比較できるようにする、契約は本人・家族と事業者の間で行う、見積もり確認を促すという形です。
③利用者保護
保険外サービスは自費契約です。
料金体系、キャンセル料、追加料金、サービス範囲、トラブル時対応が事業者によって異なります。
特に、金銭管理、身元保証、死後事務、終身サポートのように、本人の財産・医療・死亡後手続きに関わるサービスは慎重な確認が必要です。
資料でも、高齢者等終身サポート事業については、ガイドラインやチェックリストを参考に、信頼できる事業者の情報提供を行う重要性が示されています。
【結論】
この資料の核心は、次の一文にまとめられます。
高齢者本人と家族が、自分たちの困りごとに合った地域資源・保険外サービスを主体的に選べるように、支援者側が情報を集め、整理し、分かりやすく複数選択肢として提示し、利用後もフォローすることが重要である。
介護保険だけで生活全体を支える時代ではなく、介護保険サービス、総合事業、住民同士の支え合い、民間サービス、NPO、シルバー人材センター、見守りICT、配食、移動支援などを組み合わせて、地域で暮らし続ける仕組みを作るという方向性の資料です。
これ自体は『そうだよね』という内容となりますが、私は、これを厚労省が発信したということに大きな意味があると感じています。
これまで現場ごとの判断や善意に委ねられがちだった部分を、地域資源として整理し、自治体が関与する課題として位置づけた点に意味があります。
江東区では、ちょうど今年度から第二期地域福祉計画が始まったことも踏まえ、生活支援、配食、移動支援、見守り、訪問理美容、終身サポートなどを分野ごとに整理し、支援者と区民の双方が使いやすい地域資源リストを作ることから始める必要があると感じています。
【おわりに】
今回取り上げた『保険外サービス』は、これまで現場の支援者の善意や工夫で何とか支えられてきた部分が大きい分野です。
だからこそ、保険外サービスを整理し、地域に必要な資源を整備することを厚労省が発信したということは、現場の人間にとっては働きやすい環境を整備する良い機会になります。
誰かの犠牲で成り立つ仕組みは、制度の持続可能性という面でも合理的ではありません。
また、ケアマネジャーの質の担保という視点でも、保険外サービスの見える化を進めることは有意義です。
今回の発信をきっかけに、江東区のサービスや地域福祉が向上することを期待するとともに、整備に向けた働きかけを行っていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました

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