本日の要約
結論:頼れる身寄りがいない高齢者等への支援は、個人や家族の問題ではなく、自治体が地域全体で支える仕組みを整えるべき課題です。
理由:通院、金銭管理、入退院、身元保証、死後事務などが制度のはざまに落ちやすく、ケアマネや地域包括など現場のシャドウワークになっているからです。
何をするか:今回は、国のガイドブックをもとに、自治体が実態把握・庁内連携・地域資源整理・官民連携をどう進めるべきかを整理します。
ブログへの訪問をありがとうございます!
今日は、午前中は広報委員会に出席し、午後は青少年課課長からレクチャーを受けたうえで意見交換をしました。
ご対応いただいた課長には感謝の気持ちでいっぱいです。
さて、今日は少し前のニュースから、元職に関連する『介護保険外サービス』について書きます。
ニュースソースはこちらです。
厚労省、保険外サービス活用の手引き公表 情報提供のポイントやケアマネの役割など解説
一昨年から、国は本格的にケアマネジャーの業務内容の精査について議論を始めていましたが、今回、国が保険外サービスについて通達を出しました。
それらを踏まえると、江東区を含めた自治体にも、介護保険だけでは対応しきれない生活支援や地域資源をどう整備していくかが問われていきます。
なお、今回扱う『頼れる身寄りがいない高齢者等への支援』は、介護保険だけでは対応しきれない生活支援、入退院支援、金銭管理、死後事務などを含むため、保険外サービスや地域資源の整備と深く関係します。
そんなこんなで、今回はマニアックな話になりますが、興味のある方はご一読いただけたら幸いです。
では、行ってみよー☆
【なぜ自治体の課題になるのか?】
厚生労働省は『介護保険最新情報Vol.1503』にて、『令和7年度老人保健健康増進等事業「身寄りのない在宅高齢者への支援に関する調査事業」及び「保険外サービス活用推進等に関する調査研究事業」の報告書について(情報提供)』が出されました。
内容としては、今回は、その中に掲載されている『地域における頼れる身寄りがいない高齢者等への支援に関する自治体向けガイドブック』を中心に説明します。
この資料は、ひと言でいうと、『頼れる身寄りがいない高齢者等』を地域でどう支えるかについて、自治体が検討・実践するための手順書です。
対象読者は主に自治体職員ですが、地域包括支援センター、社会福祉協議会、医療機関、ケアマネジャー、民生委員、法律専門職などにも関係する内容です。
なお、ここでいう『頼れる身寄りがいない高齢者等』とは、単に親族がいない人だけではありません。
資料では、『身寄り』は家族・親族だけでなく、近所、同級生、同僚、同郷なども含み得る広い概念だと整理しています。
さらに、親族がいても、疎遠、高齢、遠方、関係不良などにより実際には支援を期待できない場合があります。
つまり、“戸籍上の家族がいるか”ではなく、“実際に頼れる人がいるか”が問題です。
この人たちが困りやすい場面は、たとえば次のようなものです。
困りごとは、大きく分けると、日常生活、金銭・財産管理、入院・入所、死後対応の4つに整理できます。

これらは、かつては家族が柔軟に担っていた部分です。
しかし、単身高齢者の増加、親族関係の希薄化、長寿化などにより、家族だけでは支えきれないケースが増えています。
ちなみに、このテーマの難しさは既存制度の“はざま”に落ちやすいことです。
介護保険、障害福祉、生活保護、生活困窮者自立支援、成年後見制度、日常生活自立支援事業など、関係する制度はあります。けれども、実際の現場では、制度の対象外だったり、どの部署・機関が担うのか曖昧だったりします。
その結果、地域包括支援センター、ケアマネジャー、医療ソーシャルワーカー、介護施設職員などが、通常業務を超えて対応せざるを得ないことがあります。資料では、こうした対応がいわゆるシャドウワークになり、現場の負担になっていることも問題視しています。
つまり、この資料は、『困っている個人をどう支えるか』だけでなく、地域包括支援センターやケアマネジャーなどの支援者が抱え込まないよう、地域全体で役割分担する仕組みをどう作るかを扱っています。
【資料全体の流れ】
このガイドブックは、自治体が次の5段階で取組を進めることを想定しています。

要するに、いきなり新規事業を作るのではなく、実態把握 → 庁内整理 → 関係者との議論 → 具体策の実践 → 効果検証という流れで進めるべき、という構成です。
第1章:まず現状を把握する
最初にすべきことは、地域にどのような人がいて、どんな困りごとが起きているのかを把握することです。
ただし、『頼れる身寄りがいない』という定義は一律に決めにくいため、資料では、自治体ごとに困りごとの場面を設定して実態を見ることが有効だとしています。
たとえば、調査の対象としては次のような機関が考えられます。

資料では、生駒市、北見市、金沢市の地域包括支援センターとびうめなどの例が紹介されています。
いずれも、アンケートや地域診断を通じて、身寄りがないケースの割合や課題を把握し、次の施策検討につなげています。
第2章:庁内で課題を整理する
現状把握の次は、庁内で『何が課題か』『既存制度で対応できるか』を整理します。
資料では、よくある課題を大きく4つに分けています。

重要なのは、それぞれについて、次のように整理することです。

ここが非常に大事です。
資料は、いきなり新規事業を作るのではなく、まず既存制度・地域資源を使い切れているか確認するという考え方を示しています。
第3章:地域で議論する
この資料の中心は、第3章です。
頼れる身寄りがいない高齢者等への支援は、行政だけでも、地域包括だけでも、社協だけでも完結しません。
そこで、関係機関が集まって議論する場をつくる必要があります。
想定される関係者はかなり広いです。

議論の場としては、既存の会議体を活用することが推奨されています。

ポイントは、会議体を新しく作ること自体が目的ではないということです。
既存の会議をうまく使い、関係者が『これは自分たちの地域課題だ』と認識できる状態を作ることが目的です。
第4章:実際の取組メニュー
資料では、自治体が実践できる取組として、主に5つを挙げています。
① 既存制度・地域資源の整理
成年後見制度、日常生活自立支援事業、生活困窮者支援、社協の事業、民間サービスなどを整理し、支援者が使いやすい形で共有します。
たとえば、朝来市では『身寄りのない人を支える資源マップ』を作成し、困りごと別に使える制度や地域資源を整理しています。
② 住民向け情報提供・マッチング
住民自身が終活や生活支援を考えられるよう、相談先、制度、サービスをわかりやすく伝える取組です。
岡崎市の『終活応援事業』、静岡市の終活支援優良事業者認証、松戸市の死後事務サービス支援制度などが例として紹介されています。
③ 官民連携による地域資源開発
地域にサービスが足りない場合は、民間企業、NPO、社協、葬儀社、不動産事業者、金融機関などと連携して、新たな支援資源を作ることも検討します。
ただし、民間事業者にとっては採算性も重要なので、自治体側は地域ニーズや人口情報、相談件数などを示し、事業展開しやすくすることが求められます。
④ 地域版ガイドラインの作成
支援の流れ、役割分担、相談先、地域資源、留意点などをまとめた地域版ガイドラインを作る取組です。
鹿児島県霧島市では、『身寄り』がなくても安心して暮らすためのガイドラインを作成しています。
資料では、地域でガイドラインを作る際の項目例として、基本的考え方、困りごとの対応方針、地域資源、連携フロー、相談先一覧などを挙げています。
⑤ 意思決定支援・終活支援
頼れる身寄りがいない人の場合、本人の判断能力が低下した後や死亡後に、本人の意思が分からなくなることが大きな問題になります。
そのため、エンディングノート、ACP、終活相談、情報登録事業などを通じて、本人の意思をあらかじめ確認し、記録し、必要な関係者に共有できる仕組みが重要です。
第5章:取組後は効果検証する
取組を始めた後は、効果検証が必要です。
ただし、この分野は長期的な成果が見えにくいため、資料では、まず短期的な指標を置くことが現実的だとしています。
たとえば、次のようなKPIが考えられます。

また、長期的には、支援者の困り感が減ったか、関係機関との連携が進んだか、住民の終活意識が高まったかなどを見ることも考えられます。
【自治体政策として特に重要なポイント】
この資料を自治体政策として読むなら、重要なのは次の5点です。
1つ目は、これは高齢福祉だけの問題ではないという点です。
介護、高齢、医療、住宅、生活困窮、障害、地域福祉、権利擁護、消費者保護、葬祭、不動産まで関係します。
そのため、単独部署で抱え込まず、庁内横断で扱う必要があるテーマです。
2つ目は支援者支援の視点が不可欠という点です。
地域包括やケアマネが、身元保証、荷物届け、入院手続き、死後対応などを事実上肩代わりしている場合、現場が疲弊します。
この資料は、本人支援だけでなく、支援者が抱え込まない仕組みづくりを重視しています。
3つ目は制度のはざまを可視化する必要があるという点です。
『どこにもつながらない』『誰も担当ではない』『家族がいれば済むが、いないと詰まる』という場面を、個別事例から地域課題として整理することが重要です。
4つ目は新規事業の前に既存資源の整理が必要という点です。
既存制度や地域資源があるのに、現場が知らない、つなぎ方が分からない、条件が誤解されていることもあります。
まずは、制度・相談先・地域資源を一覧化し、支援者と共有するだけでも効果があります。
5つ目は本人の意思を早めに確認する仕組みが重要という点です。
身寄りがない人への支援では、最後は『本人はどうしたかったのか』が分からなくなることが大きな問題です。
終活支援、エンディングノート、ACP、情報登録事業などは、単なる啓発ではなく、本人の意思を将来の支援につなげる基盤になります。
【結論】
以上を踏まえて、この資料のメッセージは、次のように整理できます。
頼れる身寄りがいない高齢者等への支援は、個人の困りごとに見えて、実は地域の支援体制の問題です。
自治体は、行政・福祉だけで抱え込むのではなく、医療、介護、社協、法律専門職、民間企業、地域団体などをつなぐ“地域のハブ”として、実態把握、議論の場づくり、役割分担、資源整理、ガイドライン化、効果検証を進める必要があります。
特に重要なのは、誰か一人の善意や現場の我慢に頼るのではなく、支援の流れを地域の仕組みとして見える化することです。
政策的には、まず着手しやすい順に言うと、地域包括・ケアマネ・医療機関等への実態調査→庁内関係部署の棚卸し→既存会議体での個別事例検討→既存制度・地域資源リストの作成→支援フロー・相談先一覧の整備→終活・意思決定支援の仕組みづくり→必要に応じた独自事業や官民連携という流れが現実的です。
江東区でも、まずは現場で起きているシャドウワークや制度のはざまの事例を集め、地域包括・ケアマネ・社協・医療機関・民間事業者と共有するところから始める必要があると感じました。
【おわりに】
今回は、介護保険最新情報 Vol.1503 のうち、『頼れる身寄りがいない高齢者等への支援』に関する資料を説明しました。
次回は、もう一つの資料である保険外サービスの活用について整理します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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