地域福祉計画から考える③~地域福祉計画~

本日の要約

結論:ひきこもり・孤独孤立対策は、相談窓口を置くだけでなく、地域で気づき、行政内部でつなぎ、段階的に社会参加へ伴走する仕組みが必要です。

理由:10個の調査から、孤立やひきこもりは若者だけでなく中高年にも広がり、支援につながりにくいことが共通課題として見えるからです。

何をするか:今回は、調査結果から見える共通課題と、第2期江東区地域福祉計画がその課題にどう関係するかを整理します。

ブログへの訪問をありがとうございます!

今回は、前回整理した10個の調査結果から見える共通課題と、第2期江東区地域福祉計画の関係について書きます。

今回も、私の個人的見解になりますが、最後までお読みいただき『こういう考え方もあるのね』と、江東区の地域福祉を考えるきっかけになれば幸いです。

では、行ってみよー☆

※いつもながらですが、お忙しい方は赤字のみでもお読みいただけたら幸いです。

 

【10資料に共通する事象】

10個の調査に共通しているのは、ひきこもり、孤独・孤立、若者の生きづらさは、別々の問題に見えて、根底には『社会との接点の減少』があるという点です。

学校、職場、地域、家庭などで安心できる場所や相談できる人が少なくなると、外出や社会参加が減り、困ったときに頼れる人や制度につながりにくくなります。

その結果、孤独感や生活困難が深まり、さらに相談しづらくなるという悪循環が生まれます。

令和4年度のこども・若者調査では、地域について『相談できる人がいる』は16.5%、『助けてくれる人がいる』は33.7%にとどまり、地域が相談先として機能しにくい実態が示されています。

一方で、安心できる場所、相談できる場所、助けてくれる場所が多いほど、自己肯定感や幸福感、将来への希望が高くなる傾向もあります。

また、孤独・孤立の全国調査では、令和7年調査で『孤独感がしばしばある・常にある』は全体で4.5%ですが、困った時に頼れる人が『いない』人では25.1%と大きく上昇します。

つまり、孤独・孤立は気持ちの問題だけでなく、頼れる人や社会参加の有無と深く関係しています。

さらに、ひきこもりは若者だけの問題ではありません。

内閣府調査は当初15歳から39歳を対象としていましたが、その後、40歳から64歳にも対象が広げられました。

これは、ひきこもりの長期化や8050問題が明らかになったためです。

したがって、これらの問題は単なる『若者の就労問題』ではなく、社会参加、家族支援、生活困窮、健康、地域のつながり、相談支援が重なった複合的な地域課題として捉える必要があります。

 

【行政が担うこと】

行政が目指すべきことは、単に相談窓口を設置することではありません。

地域の中に、孤立しても再びつながれる仕組みを作ることです。

まず、相談窓口を明確にする必要があります。

ただし、『ひきこもり相談』という名称だけでは、本人や家族が自分ごととして受け止めにくい場合があります。

『外に出づらい』『家族が心配』『働く前に生活を整えたい』『誰にも相談できない』など、本人や家族の言葉に近い入口を用意することが重要です。

次に、実態把握が必要です。

庁内の相談件数や支援件数、民生委員、学校、地域包括支援センター、生活困窮、障害福祉、保健所、NPOなどが接しているケースを把握し、地域ごとの課題を見える化するべきです。

また、庁内横断の体制も不可欠です。

ひきこもりや孤独・孤立は、若者支援、生活困窮、障害福祉、高齢福祉、保健、教育、子ども家庭、就労支援、住宅などが重なるため、主担当部署、庁内連携会議、ケース共有ルール、個人情報の取扱い、外部団体との連携を整える必要があります。

さらに、家族支援を制度化することが重要です。

本人に直接会えない場合、最初の接点は家族になることが多いため、家族相談、家族会、学習会、親亡き後や8050問題への備えなど、家族自身も支援対象として位置づけるべきです。

支援は、いきなり就労をゴールにするのではなく、段階的に設計する必要があります。

匿名相談、オンライン相談、訪問支援、少人数の居場所、趣味や学習を通じた参加、短時間の社会体験、中間的就労、一般就労、就労後の定着支援など、本人が選べる複数の道を用意することが大切です。

加えて、地域側の理解促進も必要です

『ひきこもりは怠けではない』『孤独・孤立は誰にでも起こりうる』『就労だけがゴールではない』『家族だけで抱え込まなくてよい』というメッセージを広報や研修で伝えるべきです。

最後に、行政だけでは届かない人も多いため、NPOや民間団体と柔軟に連携する必要があります。

単年度委託で終わらせず、継続性のある委託、協定、補助、共同事業により、アウトリーチや居場所づくり、社会参加支援を一体的に進めることが求められます。

要するに、行政は、実態把握、相談窓口の明確化、庁内横断連携、家族支援、居場所、アウトリーチ、段階的社会参加、NPO連携を一体的に進める必要があります。

 

【第2期江東区地域福祉計画って?】

ここまでは、調査結果から一般的に自治体へ求められる役割を整理しました。

ここからは、それを江東区の第2期地域福祉計画に照らして見ていきます(余談ですが、私は今回の地域福祉計画はとても美しいと感じています)。

第2期江東区地域福祉計画は、令和8年度から令和11年度までの4年間、江東区が地域福祉をどう進めるかを示す基本計画です。

江東区は、少子高齢化、ひとり暮らし世帯の増加、地域のつながりの希薄化、そして孤独・孤立の問題など、福祉課題が多様化・複雑化していることを背景に、この計画を策定しています。

この計画の目的は、単に高齢者福祉、障害福祉、子育て支援、生活困窮支援などのサービスを並べることではありません。

困りごとを抱える人が、地域や行政の中で孤立せず、必要な支援を一体的に受けられる体制をつくることが大きな目的です。

江東区自身も、区・区民・関係団体が対話しながら連携・協働し、分野横断的に取り組むことで、困りごとを抱える人が必要な支援を一体的に受けられる体制を構築すると説明しています。

ひきこもり・孤独孤立対策との関係で見ると、この計画のポイントは、制度の狭間に落ちやすい人を、地域と行政の両方で支えることです。

1.計画の中心にある考え方

この計画の基本理念は、第1期計画から引き継がれた『一人ひとりの尊厳が守られ、地域でともに支えあい、誰もが笑顔で安全に暮らせるまち』という考え方です。

計画では、『地域でともに支えあい』とは、制度や分野の垣根を取り払い、『支え手』『受け手』という関係を超えて助けあう活動が広がる地域社会を表すものだと説明されています。

ここが、ひきこもりや孤独・孤立対策を考えるうえで重要です。

ひきこもりや孤独・孤立は、本人だけの問題として扱うと、支援が狭くなります。

実際には、本人の健康状態、家族関係、生活困窮、親の高齢化、住まい、就労、地域との接点不足などが重なっていることが多いです。

したがって、計画が目指しているのは、『困っている人を一つの制度に当てはめることではなく、地域・行政・関係団体がつながって支えること』です。

2.ひきこもり・孤独・孤立に関わる最大のポイント

第2期計画で特に重要なのは、江東区が新たに、『孤独・孤立対策』『包括的な支援体制の充実、つまり重層的支援体制整備事業』を、施策を横断する取組として位置づけたことです。

江東区は、重層的支援体制整備事業の準備を進め、計画期間中に開始するとしています。

これはかなり大きな意味があります。

従来の福祉は、分野ごとに窓口や制度が分かれがちです。

たとえば、高齢者は高齢者福祉、障害は障害福祉、子育ては子育て支援、生活困窮は生活困窮支援、就労は就労支援というように、行政内部で分野が分かれています。

しかし、ひきこもりや8050問題、ヤングケアラー、ダブルケア、孤独・孤立のような課題は、ひとつの制度だけでは対応しにくいです。

計画でも、ヤングケアラー、ダブルケア、ひきこもり、8050問題など、制度の狭間で支援が届かないおそれのある問題が増加しており、行政内部の連携強化と包括的な相談支援を実施すると整理されています。

つまり、江東区はこの計画で、『制度の狭間に落ちる人を出さない』方向へ進もうとしていると読めます。

3.重層的支援体制整備事業とは何か

ひきこもり・孤独孤立対策との関係で見ると、この計画のポイントは『制度の狭間を支えること』です。

重層的支援体制整備事業は、複雑化・複合化した課題を抱えた人を支援するための仕組みです。

計画では、既存の取組を活かしながら、相談支援、参加支援、地域づくりに向けた支援の3つを一体的に実施することで、制度の狭間のニーズにも対応し、誰一人取り残さない包括的な支援体制を実現する仕組みだと説明されています。

ひきこもり支援に引き寄せて言えば、まず本人や家族が相談できる入口が必要です。

しかし、相談を受けるだけでは不十分です。

本人がいきなり就労できるとは限りません。

外に出ること、人と会うこと、家族以外と話すこと、居場所に行くこと、短時間の地域活動に参加することなど、段階的な支援が必要になります。

さらに、本人が参加できる地域の場がなければ、相談しても次につながりません。

だから、相談支援だけでなく、参加支援と地域づくりが必要になります。

この意味で、重層的支援体制整備事業は、ひきこもりや孤独・孤立対策に非常に相性がよい仕組みです。

4.『3つのつながり』が計画の核になっている

第2期計画では、支援が届きにくい福祉課題が顕在化する中で、3つのつながりづくりを深め、包括的な支援体制の拡充を進めるとされています。

3つのつながりとは、次の3つです。

①地域のつながり

②行政のつながり

③地域と行政のつながり

①は、区民同士の日ごろの関係です。

ひきこもりや孤独・孤立を防ぐには、専門窓口だけでなく、地域の中にゆるやかな接点が必要です。

たとえば、図書館、文化センター、町会・自治会、地域活動、防災訓練、こども食堂、サロン、ボランティア活動などが、地域との入口になります。

計画でも、区民の約8割が近所や地域との関わりの必要性を感じていること、単身世帯等の孤立化防止対策、地域活動の担い手不足、多文化共生への取組が課題として示されています。

②は、区役所内部の連携です。

ひきこもりや8050問題では、福祉課、生活困窮、生活保護、高齢、障害、保健、子ども家庭、就労支援など、複数の部署が関係します。

計画では、行政内部の連携強化や、組織横断的な相談支援体制の構築が掲げられています。

つまり、区民から見ると、『これはうちの課ではありません』で終わらせない体制が求められています。

③は、区役所だけでなく、地域活動団体、社会福祉協議会、民生・児童委員、NPO、町会・自治会、民間団体などと行政が連携することです。

計画では、地域ごとの特性や強みを踏まえ、インフォーマルな社会資源等と行政が相互に補完しあい、包括的な支援体制を一層強化できるよう、地域と行政の連携・協働を推進するとされています。

ひきこもりや孤独・孤立対策では、この視点がとても重要です。

本人が行政窓口には来なくても、家族、民生委員、地域包括支援センター、NPO、社協、地域の居場所などが先に異変に気づくことがあります。

そこから行政につなぐ仕組みが必要になります。

5.孤独・孤立対策は『相談』だけではない

江東区は、令和5年9月に、区と民間団体で構成する江東区孤独・孤立対策連携会議を設置し、孤独・孤立対策の情報共有や具体的な支援策の検討を行っているとしています。

これは重要です。

孤独・孤立対策は、行政だけでは限界があります。

NPO、地域団体、社協、民生・児童委員、居場所運営団体、支援団体など、地域の実践者とつながる必要があります。

また、孤独・孤立は、高齢者だけの問題ではありません。

若年成人、中高年単身者、外国人住民、子育て世帯、障害のある人、家族介護者、ひきこもり状態の人など、さまざまな人に起こり得ます。

そのため、この計画の孤独・孤立対策は、『特定の属性だけを支援するもの』というより、地域の中で人が孤立しにくい仕組みをつくる取組として理解するとわかりやすいです。

6.ひきこもり対策として読むと、何が重要か

第2期計画は、ひきこもり対策だけを単独で詳しく書いた計画ではありません。

しかし、ひきこもり支援に直結する考え方が複数入っています。

特に重要なのは、次の5点です。

①制度の狭間に支援を届けることひきこもり状態の人は、障害福祉、生活困窮、就労支援、医療、保健、若者支援、高齢福祉のどれか一つにきれいに当てはまるとは限りません。

だからこそ、計画がいう『包括的な相談支援』や『重層的支援体制整備事業』が必要になります。

②家族を入口にすること

ひきこもりでは、本人が最初から窓口に来るとは限りません。

家族相談から始まることが多いです。

計画上も、制度の狭間で支援が届かないおそれのある問題として、ひきこもりや8050問題が挙げられています。

そのため、実務上は、本人だけでなく、家族も支援対象として位置づけることが重要になります。

③相談後の『次の一歩』を用意すること

ひきこもり支援でありがちな失敗は、相談の次がいきなり就労支援になることです。

しかし実際には、本人の状態によって、家族相談、本人との接点形成、オンライン面談、短時間面談、居場所、交流活動、短時間・低負荷の地域活動、就労準備、福祉的就労、一般就労という段階が必要です。

計画が掲げる『参加支援』は、この部分に関係します。

計画では、参加支援を『社会とのつながりをつくる支援』と説明しています。

④地域の受け皿をつくること

相談窓口だけあっても、本人が行ける居場所や参加先がなければ、支援は進みません。

計画では、地域のつながりをつくる施策として、気軽に集える場の創設、地域で活動する団体への支援、身近な相談先の充実が示されています。

これは、ひきこもり支援で言えば、本人が社会に戻るというより、本人が安心して少しずつ社会と接点を持てる場所を地域に増やすという意味です。

⑤情報が届くこと

支援制度があっても、本人や家族が知らなければ使えません。

計画では、誰もが適切なタイミングで必要な情報を簡単に入手できるよう、わかりやすい情報発信、情報のバリアフリー化、関係者間の情報共有、個人情報の適切な取扱い、デジタルデバイド解消に取り組むとされています。

ひきこもりや孤独・孤立では、本人が自分から『ひきこもり相談』と検索するとは限りません。

だからこそ、『外に出づらい』『家族が心配』『人との関わりが不安』『働く前に生活を整えたい』など、状態別に支援へたどり着ける情報設計が重要になります。

この計画をひきこもり・孤独孤立対策として読むと、次のような考え方と言えます。

孤独・孤立、ひきこもり、8050問題、ヤングケアラー、ダブルケア、生活困窮などは、ひとつの部署や制度だけでは対応しきれない。

だから、地域のつながり、行政内部のつながり、地域と行政のつながりを強め、相談支援・参加支援・地域づくりを一体的に進める。

もう少し具体的に言えば、『困っている人が自分で正しい窓口を探して来るのを待つのではなく、地域で気づき、身近な場所で相談でき、行政内部でつなぎ、必要に応じて居場所や社会参加、専門支援につなげる仕組みをつくる計画』です。

7.自治体として特に見るべきポイント

ひきこもりや孤独・孤立対策に重点を置くなら、この計画から読み取るべき政策課題は次の通りです。

①相談入口をわかりやすくする

『ひきこもり相談』と書くだけでは届かない人がいます。

『外に出づらい』『家族が心配』『生活が苦しい』『人との関わりが不安』『働く前に相談したい』など、本人や家族の言葉で相談先にたどり着ける導線が必要です。

②家族支援を制度化する

本人が相談に来られない場合、家族が最初の接点になります。

家族相談、家族会、親亡き後の生活設計、本人への関わり方、アウトリーチ方針などを整えることが重要です。

③いきなり就労ではなく、段階的社会参加を用意する

就労は重要ですが、最初のゴールにすると支援が届きにくくなる場合があります。

居場所、短時間活動、地域活動、就労準備、福祉的就労、一般就労という段階が必要です。

④地域参加と支援付き参加を分ける

一般住民向けの『地域参加』と、ひきこもり・長期無業・生活困窮の人向けの『支援付き社会参加』は分けて設計する必要があります。

地域活動に支援が必要な人を丸投げすると、本人にも地域にも負担が出ます。

支援者の伴走、初回同行、安全管理、受け入れ側への支援が必要です。

⑤社会福祉協議会や地域福祉コーディネーターを活かす

地域で気づき、つなぎ、支えるには、区役所だけでは足りません。

社協、地域福祉コーディネーター、民生・児童委員、NPO、町会・自治会、公共施設などが、地域側の実動拠点になります。

⑥成果指標を『相談件数』だけにしない

ひきこもりや孤独・孤立対策では、相談件数だけを増やしても意味がありません。

見るべきなのは、家族相談につながったか、本人接触に至ったか、接触後に継続支援につながったか、居場所や地域活動につながったか、支援中断の理由は何か、家族負担が軽減したかといった、支援の進展です。

8.まとめ

第2期江東区地域福祉計画は、ひきこもりや孤独・孤立を、本人だけの問題ではなく、地域・行政・関係団体のつながりの中で支えるべき課題として捉えている計画です。

特に重要なのは、次の点です。

・孤独・孤立対策を施策横断の取組に位置づけている

・重層的支援体制整備事業を計画期間中に開始する

・相談支援、参加支援、地域づくりを一体的に進める

・ひきこもりや8050問題など、制度の狭間にある課題を想定している

・地域のつながり、行政のつながり、地域と行政のつながりを強め

・身近な相談先、居場所、社会参加、情報発信、デジタルデバイド解消まで含めている

したがって、この計画をひきこもり・孤独孤立対策として読むなら、核心はこうです。

江東区は、困っている人が孤立したまま制度の狭間に残されないよう、地域で気づき、行政内部でつなぎ、必要な支援や社会参加につなげる包括的な仕組みを作ろうとしている。

この計画は、そのための土台になるものです。

あとは、実際にどの窓口で受け止め、誰が伴走し、どの地域資源につなぎ、どう成果を測るかを具体化する段階に入っている、という理解が一番わかりやすいです。

 

【おわりに】

今回は、前回の調査まとめとそれを受けて自治体が取り組むこと、第2期江東区地域福祉計画についてそれぞれ書きました。

今後は、この整理を基に各所管に現状を確認していこうと考えています。

同時に、長年地域活動に取り組んできた方々に、江東区の地域福祉の変容についてヒアリングをしてみようと思います。

また、現状との差異がわかりましたら、報告を含め書こうと思いますが、一度、地域福祉計画については終了となります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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