地域福祉計画から考える①~きっかけ~

本日の要約

結論:ひきこもり支援は、当事者や家族のためだけでなく、将来的な行政負担を抑える予防的投資としても必要です。

理由:孤立が長期化すると、生活困窮、医療、介護、住まい、親亡き後の課題が重なり、より複雑で高コストな支援が必要になるからです。

何をするか:今回は、納税者の視点から支援の必要性を整理したうえで、調査報告書から見える課題を確認します。

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昨日は、行政2か所に3部作の提案書をもってプレゼンしたり、地域活動団体からの声を所管に伝えながら意見交換したりしていました。

役所では、さまざまなデータや計画とにらめっこしながら資料を作成することが多いのですが、久しぶりに半日以上色んな所管課長と意見交換できました。

対応してくださった所管課長等には感謝の気持ちでいっぱいです。

ちなみに今日は午前中の会派会議以外は、地域活動の事務作業をしていました。

 

さて、少し前になりますが、4月29日の記事『ひきこもり、40歳以上が4割超 支える家族も高齢化 家族会調査』という記事を読みました。

この記事の基となるデータは『ひきこもりの ピアサポート活動に関する 調査報告書』です。

私は、ひきこもり支援については、いわゆるお気持ち的な意図ではなく、当事者や家族と納税者の立場の両方から考えて必要だと感じています。

そんなわけで、またもやシリーズ化しそうですが、第2期江東区地域福祉計画との関係を踏まえて、ひきこもり支援について書いていきます。

本日は、当事者や家族、納税者、行政それぞれの立場から支援の必要性を整理したうえで、報告書の内容をまとめます。

では、行ってみよー☆

 

【納税者の立場から必要性を考えてみる】

私は、いわゆるひきこもり支援というものを『当事者や家族のため』だけで対策を提案しようとしているわけではありません。

当事者や家族はもちろんですが、行政事業として扱うには、納税者の納得感も同じくらい重要だと感じています。

もちろん前提として、支援の中心にあるのは本人の尊厳と家族の孤立を防ぐことです。

そのうえで、行政事業として進める以上、納税者に説明できる合理性も必要だと考えています。

・・・というわけで、この項目では、納税者への説明・費用対効果の観点から支援の必要性について書きます。

1.予防的投資

ひきこもり支援や孤独・孤立対策は、当事者や家族への福祉的支援であると同時に、将来的な行政負担を抑えるための予防的投資でもあります。

現在ひきこもり状態にある方、または今後孤立を深める可能性のある方を放置した場合、本人の生活困窮、心身の不調、家族の高齢化、親亡き後の住まい・収入・医療・介護等の課題が重なり、最終的には生活保護、医療、介護、住居支援、成年後見、死後事務等を含む複合的な行政対応が必要となる可能性が高まります。

特に8050問題のように、本人と親世代の課題が同時に深刻化した場合、支援に要する時間・人員・費用は大きくなりやすいです。

一方で、孤立が深刻化する前から地域との接点をつくり、本人や家族が早期に相談につながる仕組みを整えれば、課題が複雑化する前に対応できます。

納税者の視点から見ても、これは『支援を受ける人だけのため』の施策ではありません。

孤立の長期化を防ぎ、本人が地域活動、居場所、就労準備、短時間就労、福祉的就労等へ段階的につながることができれば、将来的な生活保護や医療・介護等の負担を抑える可能性があります。

 

2.地域の担い手を広げる可能性を高める

また、地域活動への参加は、町会・自治会、NPO、公共施設、防災、環境、文化・生涯学習等の担い手不足への対応にもつながります。

地域参加・つながり創出事業は、単に困っている人を支援するだけでなく、地域活動の担い手確保や地域福祉と地域振興の接続にも資する取組みです。

もちろん、支援対象者に一律の就労や社会参加を求めるものではありません。

本人の疾病、障害、精神状態、生活状況、家族状況等に配慮しながら、可能な範囲で生活再建や社会参加につなげることが前提です。

したがって、ひきこもり支援は、福祉を無制限に拡大するものではなく、深刻化してから高コストで対応するのではなく、早い段階で地域との接点や相談導線を整え、本人・家族・地域・行政の負担を軽減するための現実的な方策です。

当事者にとっては孤立から抜け出す機会となり、家族にとっては抱え込みを防ぐ支援となり、納税者にとっては将来的な行政負担の増大を抑える予防策となります。

行政にとっても、既存事業・既存施設・既存相談窓口を活用しながら、小規模なモデル実施から始めることができるため、費用対効果の高い施策として検討する意義があります。

行政にとっても、早期につながる仕組みを持つことは、生活困窮、住まい、医療、介護、権利擁護が一気に表面化してから対応するよりも、支援を整理しやすくする意味があります。

 

【報告書からみえるもの】

なお、この報告書は、家族会等につながっている本人・家族の声を中心にしたものであり、ひきこもり全体を代表する統計というより、支援現場から見える課題を知る資料として読むのが適切だと考えます。

『ひきこもりのピアサポート活動に関する調査報告書』は、ざっくり言うと、『ひきこもり本人・家族にとって、地域で必要な支援は何か』『ピアサポートをどう位置づけるべきか』『既存支援につながりにくい人をどう支えるか』を調査から整理した報告書です。

これは、KHJ全国ひきこもり家族会連合会により、令和7年度内閣府『孤独・孤立対策担い手育成支援事業交付金』を受けた事業の一環として作成されており、調査では、ひきこもり本人101名、家族278名から回答を得ています。

 

1. この報告書の目的

この報告書の目的は、大きく2つあります。

1つ目は、現在または過去にひきこもり状態にあった本人・家族の実態を把握し、どのような支援やサポートが必要かを整理することです。

2つ目は、ひきこもりのピアサポート活動、つまり同じような経験を持つ人による支援活動について、実態、必要性、継続の課題を明らかにすることです。

本人調査では、KHJ支部家族会や協力団体、Web回答を通じて本人101名から回答を集めています。

 

2. 本人調査から見えること

本人調査では、回答者の平均年齢は43.52歳で、最年少20歳、最年長68歳でした。

性別は男性66.3%、女性29.7%で、家族と同居している人が74.3%、一人暮らしが23.8%でした。

つまり、この調査の本人回答者は、若年層だけでなく、かなり中高年化していることがわかります。

ひきこもりの初発年齢は平均21.23歳で、最初のひきこもり期間は平均8.74年でした。

2回目、3回目のひきこもりも平均7〜8年台で、ひきこもりは『一度だけ短期間で終わる』ものではなく、回復と再度の孤立を繰り返しながら長期化しやすいことが読み取れます。

一方で、本人の生活実態を見ると、『何もしていない人』ばかりではありません。

スマホ・PC利用は93.9%、家庭内で自由行動84.7%、興味ある場所への外出78.6%、家族との会話74.5%、居場所参加62.2%という結果が出ています。

つまり、ひきこもり状態といっても、完全に無活動・無接触というより、本人なりの生活行動や関心、外出可能性、地域参加の芽がある人も多いということです。

だからこそ、ひきこもり支援では、本人を一律に『外へ出す』『就労につなげる』と考えるのではなく、本人の状態に応じて、生活行動や関心を少しずつ社会との接点につなげる視点が必要です。

 

3. 支援につながっていても、中断が起きている

本人の公的機関利用では、『継続的に利用している』が63.3%でした。

一方で、『利用を中断した』が18.4%、『利用したい気持ちはあったが利用できなかった/しなかった』が7.1%、『利用したことがない』が10.2%でした。

つまり、回答者は比較的支援に近い層であるにもかかわらず、約4人に1人は公的支援を利用していない、または利用できていないという構図があります。

自由記述では、支援が合わなかった、上から目線に感じた、就労を急かされた、相談内容と提案される支援がずれていた、通院や相談そのものが負担だった、といった声が出ています。

これは、単に窓口を用意するだけでは不十分で、本人の状態やペースに合う伴走型支援が必要であることを示しています。

考察部分でも、家族会等を通じて回答した人であっても、支援の中断や未利用が少なくなく、本人調査では『行政・福祉・医療』『民間団体・家族会・居場所』ともに中断・未利用が30%以上だったと整理されています。

報告書は、潜在的にはさらに多くの人が支援につながりにくい可能性があると見ています。

 

4. 地域で不足している支援

本人が地域で不足していると感じる資源・支援では、上位に居場所の選択肢69.4%、たらい回しをしないで話を聴いてもらえる相談支援66.3%、親の介護や親亡き後の支援66.3%、当事者会や居場所の運営維持への経済的援助64.3%、本人や家族を尊重した伴走型支援61.2%が挙がっています。

ここは非常に大事で、本人側が求めているのは、いきなり就労訓練や訪問支援だけではありません。

むしろ、複数の居場所、話を聴いてもらえる相談、親亡き後の生活設計、継続的なつながり、伴走支援、交通費補助、公的社会保障など、生活基盤と関係性を支える支援が求められています。

また、『家族や本人のニーズに合った訪問支援』は31.6%で最も低く、本人の私的空間への訪問を必ずしも望まない傾向も示されています。

これは、自治体が支援を考えるときに、訪問ありきではなく、本人が選べる入口、居場所、オンライン、地域活動、家族相談など複数の接点を用意する必要があることを示しています。

 

5. ピアサポートの意味と課題

この報告書の中心テーマはピアサポートです。

ピアサポートとは、同じような経験を持つ人が、本人や家族に寄り添う支援です。

本人の自由記述では、ピアサポートについて『同じ経験をしているから気を遣わずに済む』『当事者目線での支援が必要』『比較的話しやすい』といった肯定的な声があります。

一方で、『ピアサポートが何をする活動かわからない』『近くやオンラインにない』『自分の現状を人に話すのが難しい』『活動の機会がない』『経済的余裕がない』といった参加しにくさも出ています。

ピアサポート活動に参加したことがない理由では、『活動する機会がない/なかった』27.1%、『活動したくない・関心がない』22.0%、『活動の時間がない』18.6%、『生活が成り立たない、経済的余裕がない』18.6%でした。

つまり、ピアサポートは有効な可能性がある一方で、活動内容が分からない、近くにない、生活負担になる、報酬や役割が曖昧という課題があります。

 

6. 家族調査から見えること

家族調査では278名が回答しています。

本人調査と同様に、KHJ支部家族会や協力団体、Webを通じて実施されています。

考察では、本人の高齢化だけでなく、支える家族の高齢化も進んでいると指摘されています。

家族の平均年齢は今回調査で66.3歳となっており、本人が中高年期に入り、親世代も高齢期に入るなかで、ひきこもり問題は本人の社会参加だけでなく、親亡き後、暮らしの基盤、健康、地域での支えのあり方を問う課題になっていると整理されています。

 

7. 報告書から読み取れる政策的ポイント

この報告書から自治体施策として読み取るべきポイントは、次の5つです。

第一に、ひきこもりは若者支援だけではなく、中高年本人と高齢の親を含む世帯支援として考える必要があります。

本人平均年齢43.52歳、家族平均年齢66.3歳という数字は、8050問題や親亡き後の支援が中心課題になっていることを示しています。

第二に、支援は『相談窓口を作ればよい』では足りません。

公的機関を継続利用している人がいる一方で、中断や未利用も一定数あります。

必要なのは、本人の状態に合わせた継続的な伴走、話を聴く相談、たらい回しをしない支援です。

第三に、本人の多くは完全に何もできないわけではありません。

スマホ・PC利用、家族との会話、興味ある場所への外出、居場所参加などの実態があり、段階的な社会参加や地域参加の受け皿を作る余地があります。

第四に、地域で不足しているものは、居場所、相談、親亡き後支援、伴走支援、運営維持の経済的支援などです。

行政は単発イベントよりも、居場所・相談・家族支援・地域活動・ピアサポートを継続できる仕組みを作る必要があります。

第五に、ピアサポートは有効な可能性がありますが、ボランティア任せでは続きません。

活動機会、役割、研修、報酬・謝礼、専門職との連携、安全管理、相談先の明確化が必要です。

 

【おわりに】

今回は、ひきこもり支援のきっかけとなった報告書をまとめることから始めましたが、この報告書は、大変貴重な声である一方、これはすでに家族会等につながっている方々の声であり、ひきこもり全体を代表する統計として読むには限界もあります。

そのため、ひきこもり支援を考えるには、この報告書で見えた課題に加えて、公的統計や自治体調査もあわせて確認する必要があると感じました。

そこで、次回は、ひきこもり調査に関するデータを調べ上げ、さらに公的統計として活用できそうな資料を4つに絞り、引きこもりに対する支援を考えてみます。

私は、課題を整理する際には複数の資料を突き合わせ、共通して出てくる論点を重視しています。今回は自治体調査を含めて30以上の調査結果を確認しましたが、ブログですべてを取り上げるわけにはいかないため、次回は主となるデータに絞って掘り下げていきます(GWなのを良いことに、オタク気質を発揮してとことん堀下げました)。

またしてもシリーズ化しそうな気がしますが、興味のある方はお付き合いいただけたら幸いです。

次回からは、ひきこもりに関する調査結果で統計として有効なものをいくつか説明し、重複する課題や求められている支援を読み解きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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