当区の地域ケア計画を考える⑦~高齢者の住まい~

本日の要約

結論:高齢者向け住まいは、もはや単なる住宅ではなく、介護・医療・生活支援の重要な受け皿になっています。

理由:有料老人ホーム等の増加により、情報のわかりにくさ、囲い込み、行政の実態把握不足といった課題が大きくなっているからです。

何をするか:江東区でも、高齢者住まいの実態把握、情報公開、介護保険計画への反映、庁内連携を進める必要があります。

ブログへの訪問をありがとうございます!

昨日は、夜ニュースを確認していた際、ひきこもり調査に関する記事を読みました。

その後、ひきこもりに関する公的統計データを読み込み、第2期江東区地域福祉計画を眺めながらぼんやり考えていたら、一つの解決案を思いついてしまったため、提案書と提案時のメモ(補足説明や想定問答)を作っていたのですが、気が付いたら朝になっていました。

今は少し眠いですが、これからは行政との問い合わせが続くため、眠気が覚めることを願っています。

 

さて今日は、令和7年11月10日に開催された社会保障審議会介護保険部会(第128回)の資料『地域包括ケアシステムの深化(高齢者向け住まい)』をもとに、自治体に求められていることを書きます。

今回は、資料の論点を整理したうえで、自治体に求められる役割、そして江東区で特に確認すべき実務課題まで落とし込んで書いていきます。

今日のポイントは、高齢者向け住まいを『民間施設の話』で終わらせず、自治体の高齢者施策そのものとして捉え直すことです。

では、行ってみよー☆

※いつものごとく、お時間のない方は赤字部分をお読みいただけたら幸いです。

 

【全体の説明】

この資料に書かれていることを一言でまとめると、『高齢者向けの住まいは、もう単なる“住む場所”ではなく、実質的に介護や医療の受け皿になっている』ということです。

それに伴い自治体には、民間任せにせず、実態把握・情報公開・質の確保・住まいと介護の接続まできちんと見なければならないことが求められています。
しかも、この資料はかなり現実的です。

『有料老人ホームが増えている』『サービスが多様化している』だけでなく、囲い込み、過剰サービス、情報のわかりにくさ、紹介手数料、行政の把握不足まで問題にしています。

つまり、住まいの選択肢が増えたこと自体は良いが、その分、入居する本人や家族が不利になったり、介護保険の使われ方がゆがんだりするおそれがある、という見立てです。

以下、できるだけわかるように、順番に説明しますね。

 

1.この資料は何を扱っているのか

論点は3つです。

1.有料老人ホームの運営とサービス提供のあり方

2.養護老人ホーム・軽費老人ホーム

3.住まいと生活の一体的な支援

ただ、全体を通じた中心テーマはかなり明快です。

それは、高齢者向け住まいを、介護や生活支援と切り離して考えてはいけないということです。

資料は、地域包括ケアでは『高齢者の住まいの確保』が前提条件であり、そのニーズの高まりや多様化に伴って、有料老人ホームの数もサービスも増えた一方で、透明性・質の確保の課題も大きくなっていると整理しています。

 

2.そもそも、なぜ今『高齢者向け住まい』が大問題なのか

昔のイメージだと、『介護が必要なら特養や老健、自宅で暮らせるなら在宅、それ以外の有料老人ホームや高齢者住宅は“住まい”』という感じで、比較的分けて考えやすかったです。

でも今は、そう単純ではありません。

資料は、有料老人ホームをはじめとする高齢者住まいが増え、提供されるサービスも多様化していると説明しています。

そして、その背景には、介護や医療が必要な高齢者の暮らしの場として、民間の高齢者住まいが大きな役割を持つようになっているという現実があります。

つまり、今の高齢者向け住まいは、『家』でもあり、『介護の場』でもあり、『医療連携の場』でもあるわけです。

だから、住宅問題としてだけ見てもダメだし、介護保険の外側の話として放っておいてもダメ、というのがこの資料の基本的な考え方です。

 

【資料が示す問題とは】

問題1:『囲い込み』と過剰サービス

ここはかなり重要です。

資料は、有料老人ホームの課題として、入居者に対する過剰な介護サービスの提供、いわゆる『囲い込み』を挙げています。

『囲い込み』とは、住まいと介護サービスが実質的にセットになっていて、そのホームに入るとその系列の介護サービスをかなり強く使うことになりやすい構造を言います。

もちろん、同じ法人や関連法人のサービスを使うこと自体が、全部悪いわけではありません。

便利なこともあります。

でも問題は、本当に本人に必要なサービス量なのか、他の選択肢を自由に選べるのか、ケアマネが中立に判断しているのか、住まいと介護の契約が実質一体化していないかが見えにくいことです。

資料も、ケアマネ事業所やケアマネジャーの独立性を担保する体制や、入居契約とケアマネジメント契約が独立していることを明示する必要を挙げています。

要するに、『このホームに入ると、気づいたら系列サービスを最大限使う流れになっていた』という状態を防ぎたいわけです。

 

問題2:本人や家族にとって情報がわかりにくい

資料は、入居者による有料老人ホームやサービスの適切な選択のために、事前の重要事項説明や入居契約書の事前交付、さらに家族・ケアマネ・医療ソーシャルワーカーなどが使いやすい情報公表システムの必要性を挙げています。

これは住民目線だと、とてもわかりやすい問題です。

高齢者向け住まいを探すとき、実際には、どんな人まで住めるのか、認知症でも大丈夫か、医療ケアが必要でも住めるのか、看取りまで対応できるのか、追加でどんな費用がかかるのか、系列サービスを使う前提なのか、緊急時や退去時はどうなるのかが、ものすごくわかりにくいことがあります。

資料は、ここをかなり問題視しています。

つまり、住まい選びの段階で、本人や家族が十分な情報を持てていないということです。

だから、事前説明と情報公表をもっと強くすべきだ、という方向になっています。

 

問題その3:紹介事業者と紹介手数料の透明性

これも住民には見えにくい部分です。

資料は、入居者紹介事業の透明性や質の確保も大きな論点にしています。

優良事業者を認定する仕組みや、紹介手数料の算定方法の公表が必要だとしています。

簡単に言うと、高齢者住まいの紹介ビジネスが広がる中で、誰が、どのホームを紹介しているのか、どのくらいの紹介料が動いているのか、その紹介が本人にとって本当に適切なのかが見えにくい、ということです。

紹介そのものが悪いわけではありません。

でも、紹介料の大きさが、本人に合う住まいの紹介より優先されると困ります。

だから資料は、説明責任と透明性を強く求めています。

 

問題その4:事前規制や基準が今の実態に追いついていない

資料の中でもかなり踏み込んでいるのがここです。

中重度の要介護者、医療ケアが必要な人、認知症の人などを入居対象とする有料老人ホームについて、登録制のような事前規制を導入する必要性が示されています。

さらに、そうした高齢者住まいにふさわしい人員・施設・運営基準が必要だとしています。

これはかなり大事です。

要するに、重い人を受け入れているのに、住まいの制度設計がまだ“軽い住まい”のままだと危ないということです。

たとえば、認知症や医療ケアが必要な人が多く住んでいるのに、どんな職員体制で、どんな安全管理で、どんな連携のもとで運営しているのかが曖昧なままだと、事故や不適切な対応が起きやすくなります。

資料はそこを正面から問題にしています。

 

問題その5:自治体が実態を十分つかめていない

ここが自治体に直結します。

資料は、介護保険事業計画の策定に向けて、住宅型有料老人ホームの情報を自治体が把握できる仕組みの必要性を明記しています。

これは非常に重要です。

つまり国は、自治体は、特養や老健だけ見て地域の受け皿を考えてはいけない。

住宅型有料老人ホームなども含めて、地域の高齢者の暮らしの実態を把握しなさいと言っているわけです。

なぜなら、現実には、民間の高齢者住まいがかなり大きな受け皿になっているからです。

ここを見ないで介護保険計画を立てると、地域の実態に合わない計画になります。

 

ここまでを、もっと平たくまとめるとこの資料の核心はこうです。

高齢者向け住まいは増えて便利になったが、その分、本人や家族にはわかりにくくなり、行政も実態を追い切れていない。

だから、入る前の情報、入った後のサービス、紹介の仕組み、行政の把握、全部を見直そう。

これが全体のメッセージです。

 

【自治体に何が求められているのか】

資料を読むと、自治体に求められていることは、少なくとも次の6つです。

1. 高齢者向け住まいの実態把握

自治体は、地域にどんな高齢者住まいがあり、どんな人が住み、どんな介護サービスが提供されているのかを把握する必要があります。

特に住宅型有料老人ホームの情報を把握できる仕組みが必要だと、資料ははっきり書いています。

2. 介護保険計画に反映すること

自治体は、特養や老健だけでなく、高齢者住まいも含めて、地域の介護需要と受け皿を見込む必要があります。

資料は、介護保険事業計画で必要量を見込むことの重要性や、必要な場合には特定施設への移行を促す必要性にも触れています。

3. 情報公開と住民保護

自治体は、本人や家族、ケアマネ、医療ソーシャルワーカーなどが活用しやすい情報公表の仕組みを整える必要があります。

これは単なる広報ではなく、住まい選びの失敗を減らすための住民保護策です。

4. 指導監督の強化

資料は、更新制、更新拒否の仕組み、行政処分を受けた事業者の再参入制限、廃止時の転居支援責任などにも触れています。

つまり自治体には、ただ届出を受けるだけでなく、質の確保と不適切事業者への対応が求められています。

5. 囲い込み対策

自治体は、住まいと介護サービスの関係をよく見て、ケアマネの独立性、中立性、契約のわかりやすさ、会計分離の状況などを確認できるようにする必要があるとしており、施設情報の透明性が求められています。

6. 住まいと生活支援を一体で考えること

住まいの確保だけでなく、その人が地域で生活を続けるために必要な介護、医療、相談支援、見守りなどを一体で考える必要があります。

資料のテーマ自体が『住まいと生活の一体的な支援』であり、住まい単独ではないことを示しています。

 

【江東区としてどう読むべきか】

ここからは、国の資料で示された方向性を、江東区の実情に引き寄せて考えます。

ここがとても重要です。

江東区は、この資料を『地方の一般論』として読むと外します。

むしろ、かなり自分ごととして読むべきです。

理由は単純で、江東区をはじめとする大都市では、特養だけで高齢者の住まいと介護を受け止めきれず、民間の高齢者住まいが実質的な受け皿になりやすいからです。

さらに、独居高齢者が多く、家賃や住宅事情も厳しく、住まい選びに情報格差が生まれやすいという事情もあります。

医療・介護資源は多い一方で、制度や窓口が分断されやすいことも、大都市特有の課題です。

つまり、江東区では住まいの問題は周辺論点ではなく、本体です。

資料の趣旨は、江東区のような大都市ほど重く受け止める必要があります。

 

【江東区に特に求められること】

1. 区内の高齢者住まいを地図化すること

どこに、どんなホームや高齢者住宅があり、どんな層を受け入れているのかを把握する必要があります。

江東区は区内格差も大きいので、区全体平均ではなく、圏域単位で見るべきです。

これは資料の『自治体が情報を把握できる仕組みが必要』という方向を、都市部向けに具体化したものです。

2. 住宅型有料老人ホームを“計画の外”に置かないこと

大都市では、住宅型有料老人ホームが実質的に中重度高齢者の受け皿になっていることが多いです。

だから、介護保険事業計画を立てるときに、特養や老健だけを見ていては不十分で、資料もその方向を明確に示しています。

3. 住まい選びの情報支援を強くすること

大都市では選択肢が多いぶん、本人・家族は迷いやすく、紹介業者や広告に頼りやすいです。

だから区として、比較可能な情報の整理、相談窓口の整備、包括や病院MSWが使える資料整備が重要になります。

資料の『情報公表システムの構築』は、ここに直結します。

4. 囲い込みを点検すること

大都市では系列化された事業モデルも多くなりやすいので、ケアマネの独立性、会計分離、契約のわかりやすさを見ていく必要があり、資料もこの点を非常に重く見ています。

5. 住まい政策と福祉政策を分けないこと

江東区では、住宅部門、介護保険部門、高齢福祉部門、地域包括支援センター、居住支援、医療機関が分断されやすいです。

でも実際の高齢者の暮らしは全部つながっています。

この資料を江東区向けに読むと、庁内横断で住まいを扱えというメッセージが強いです。

 

これを江東区の実務に落とし込むなら、まず確認すべきことは次の点です。

・区内の有料老人ホーム、サ高住、高齢者住宅の実態調査をする

・要介護度、認知症、看取り対応、協力医療機関の状況を把握する

・包括や病院MSWが使える比較資料を整える

・住宅型有料老人ホームの介護サービス利用実態を点検する

・ケアマネの独立性や契約のわかりやすさを監督項目に入れる

・介護保険事業計画で、高齢者住まいを含めた受け皿全体を見込む

・住宅部門・高齢福祉部門・介護保険部門の連携会議を持つ

・不適切な事業者への対応や、廃止時の入居者保護の体制を準備する

これらは、資料の方向性から自然に導ける実務です。

重要なのは、施設数を確認するだけでなく、高齢者がどこで、どのような支援を受けながら暮らしているのかを、自治体として把握し直すことです。

 

【まとめ】

この資料を一文でまとめるなら、『高齢者向け住まいを、民間の住宅供給の話としてだけでなく、介護・医療・生活支援の受け皿としてきちんと管理し直す必要がある』ということです。

そして江東区をはじめ23区の自治体に求められているのは、『高齢者向け住まいの実態を把握し、情報のわかりにくさと囲い込みを減らし、住まいと介護保険計画をつなげること』です。

大都市では、住まいを見ない高齢者施策は、実態を見ていないのとほぼ同じです。

 

【所感】

住まいについてはどこまで行政が踏み込むかがポイントになるのですが、江東区は『江東区高齢者生活実態等調査』を昨年実施し、報告書が出ています(ホームページへの掲載はもう少し後になる予定)。

それによると、健康な高齢者及び要支援という比較的健康な高齢者は、家族や介護サービスを受けながら自宅で暮らしたい方が50%を超えているという現状があります。

これは、単身世帯や老夫婦世帯では希望割合に変化はあるものの、この調査結果は、江東区の高齢者が住まいというものに対して何を希望しどんな環境を望んでいるかがわかるため、参考になります。

今年度は、昨年実施された国勢調査の結果も公表される見込みです。

その際には、高齢者の単身世帯や高齢夫婦世帯の状況を確認し、特別養護老人ホームを含めた施設・住まいの供給量が、地域の実態に合っているかを検証する必要があると考えています。

区民調査をしっかり行うのは江東区の強みなため、データを正しく活用し、区民の皆さんが望む環境整備という視点で住まいについては課題を整理し取り組んでいただくことを期待しています(前回の計画はここが弱かったため、改善を期待しています)。

だからこそ、高齢者の住まいを福祉の周辺課題として扱うのではなく、地域包括ケアの中心課題として位置づけることが、これからの江東区に必要だと考えます。

 

【おわりに】

今回で、長かった社会保障審議会資料説明は終わります。

次回からは、これまで見てきた資料をもとに、江東区で地域包括ケアシステムを実効性あるものにするために何が必要かを、2回に分けて書いていきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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