本日の要約
結論:介護予防は、元気な高齢者向けの教室で終わらせず、地域づくり・認知症支援・生活支援までつないで再設計する必要がある。
理由:独居高齢者や認知症高齢者が増える中で、既存の総合事業だけでは地域の支え方として十分に機能しておらず、効果検証も弱いから。
何するか:今回は社会保障審議会資料をもとに、総合事業・介護予防・認知症施策の方向性を整理し、自治体と江東区に求められる対応を書いていく。
ブログへの訪問をありがとうございます!
このシリーズも、気づけば6回目となりました。
あと3回くらいで終了する予定なため、もうしばらくお付き合いいただけたら幸いです。
さて今日は、令和7年11月10日に開催された社会保障審議会介護保険部会(第128回)の資料『地域包括ケアシステムの深化(介護予防・日常生活支援総合事業等)』をもとに、自治体に求められていることを書きます。
この資料に書かれていることを一言でまとめると、『介護予防を、元気な高齢者向けの教室の話で終わらせず、地域づくり・認知症支援・生活支援までつないで、実効性のある仕組みに組み替えよう』ということです。
それに伴い自治体には、総合事業を見直し、その効果を測り、認知症高齢者や独居高齢者まで含めた地域の支え方を組み直すことが求められています。
これまで書いてきた流れからも分かるとおり、社会保障審議会が一貫して示しているのは、『既存の延長線のままでシステムを構築してはならない』ということです。
今回もその流れに沿った内容になっています。
このブログでは、各分野の説明を書いたうえで、自治体が取り組むべきこと、さらにそれを江東区に落とし込んで書いていきます。
では、行ってみよー☆
※今回も、お忙しい方は赤字部分だけでも読んでいただけたら幸いです。
【全体像】
まず、この資料は何を扱っているのかについてですが、目次レベルでの論点は3つです。
1.介護予防・日常生活支援総合事業の充実
2.介護予防の推進
3.認知症施策の推進等
つまり、単に『体操の機会を増やそう』という話ではありません。
高齢者が要介護になる前の段階から、生活支援、社会参加、認知症支援、家族支援まで含めて、地域でどう支えるかを見直す資料です。
【総合事業について】
1.総合事業ってなに?
ここは専門用語なので、まずやさしく言い換えます。
総合事業は、要支援の人や、そこまで重くはないものの生活機能が落ちてきた人に対して、自治体が地域の実情に合わせて用意する支援メニューです。
訪問の手助け、通いの場、短期集中の介護予防、住民主体の支え合いなどを組み合わせられるのが特徴です。
2.資料で書かれている内容
資料がまず問題にしているのは、今の総合事業がまだ十分に活かされていない、という点です。
国は令和6年8月までに実施要綱などを改正して、市町村がもっと柔軟に総合事業を組み立てられるようにしました。
たとえば、多様なサービス・活動例の提示、サービス・活動Aの弾力化、対象者以外も参加する活動への補助見直し、生活支援コーディネーターを軸にした住民参画・官民連携推進事業の創設、生活支援共創プラットフォームの構築、評価指標の提示、伴走支援などです。
要するに国は、『制度の器は広げたので、次は自治体が本気で地域の力を組み合わせて使ってください』と言っているわけです。
でも現実には、まだ従来型が中心です。
資料によると、令和7年5月末時点でも、総合事業の実施状況は訪問型・通所型ともに従前相当サービスが中心です。
つまり、昔からある介護予防サービスに近い形がまだ主流です。
一方で、住民主体のB型のような支え合い型サービスは、担い手不足が大きな壁になっています。
資料では、B型を実施していない市町村の4割超が『担い手が少なく、参入が見込めない』と答えています。
ここは重要なポイントです。
国は『もっと多様な主体を入れたい』と考えているのに、現場ではまだそこまで広がっていない、ということです。
3.介護予防は、もう『元気な人向けの教室』ではない
この資料でいう介護予防は、昔ながらの健康教室よりずっと広いものです。
資料では、通いの場は高齢者の社会参加を促し、支え合い機能や多世代交流の場として、地域共生社会の一翼を担っていると整理しています。
さらに今後は、健康寿命延伸のために、身近な場所で介護予防を支える拠点が必要で、地域によっては子育て支援や障害者支援なども担う場になりうるとしています。
つまり、介護予防は『高齢者だけの事業』ではなく、地域の支え合いの土台になっていくべきだという考え方です。
資料に出てくる『介護予防・地域ささえあいサポート拠点』のイメージも、まさにその発想です

そこでは、運動機能向上、低栄養予防、口腔機能向上、社会参加の促進、認知機能低下の予防などをまとめて支える場として描かれています。
【データを重視せよ】
この資料では、評価とデータ収集の重要性がかなり強く打ち出されています。
理由はシンプルで、今の総合事業や介護予防が『どの人に、何が効いたのか』を十分に見きれていないからです。
資料では、ニーズ調査や各種データ、地域ケア会議で出た課題などを整理して、計画策定の場で共有・検討する必要があるとしています。
さらに、現状ではサービス・活動Cなどの実施状況や、個人単位での評価・分析がしにくく、改善に結びつけにくいと指摘しています。
つまり国は、『やりました』で終わらず、『誰にどんな効果があったのか』まで見て改善してくださいと言っているわけです。
【認知症施策はどう変わろうとしているか】
ここも今回の資料の中でかなり重要な論点です。
資料では、認知症施策は認知症基本法の施行と国の認知症基本計画を受けて、本人の声を尊重し、『新しい認知症観』に基づいて進める段階に入っているとしています。
認知症への見方も変わりつつあります。内閣府の世論調査では、『認知症になっても地域で生活できる』というイメージが増え、『地域で生活したい』と考える人が最も多いとされています。
ただし、現実には重い課題があります。
資料では、認知症または軽度認知障害の人は65歳以上の約28%を占めるとされており、2040年には認知症高齢者584.2万人、MCI高齢者612.8万人に達すると推計されています。
さらに、独居の認知症高齢者の割合も2025年の25.6%から2040年には28.7%に上がる見込みです。
だから資料は、認知症施策を単なる医療や介護の話で終わらせず、早期かつ適切な医療・介護や地域の居場所づくり、独居の認知症高齢者支援、権利擁護・意思決定支援、ピアサポートや本人ミーティング、家族介護者支援まで含めて整える必要があるとしています。
【家族介護者も重要テーマ】
資料は、家族介護者支援も独立した重要論点として取り上げています。
市町村や地域包括支援センターは、これまでも家族介護支援事業や総合相談支援で支援してきたが、今後は複雑化・複合化した課題や、仕事と介護の両立支援も踏まえて、実態やニーズに沿った施策を充実させる必要があるとしています。
これを住民感覚で言えば、『本人だけでなく、支える家族がつぶれない仕組みも必要だ』という話です。
【自治体に求められていること】
この資料を踏まえると、自治体に求められていることは大きく6つあります。
1. 総合事業を『従前相当中心』から脱却させること
自治体は、昔ながらのメニューをただ回すだけでなく、訪問A・B・C、通所B・C、住民主体活動、短期集中支援などを、地域の実情に応じて組み直す必要があります。
多様な主体が入りやすい環境整備が重要です。
2. 地域の実態をデータでつかみ、改善につなげること
ニーズ調査、見える化システム、地域ケア会議の議論、事業実績などをつなげて、地域診断を行い、計画や事業の見直しに反映させることが求められています。
3. 介護予防を『地域づくり』に結びつけること
通いの場や支え合いの場を、高齢者の社会参加、支え合い、多世代交流、認知機能低下予防まで含めた地域基盤として育てることが必要です。
4. 認知症施策推進計画を、本人参画型で進めること
認知症本人の参画・参加を進めるとともに、医療資源の把握、ピアサポート、本人ミーティング、独居認知症高齢者への支援、権利擁護まで含めて整えることが求められています。
5. 家族介護者支援を強化すること
相談支援体制、夜間・休日も含めた相談先、仕事と介護の両立支援との接続など、家族介護者が孤立しない体制づくりが必要です。
6. 都道府県と市町村の役割分担を意識すること
資料では、総合事業の基盤整備や多様な主体とのつながりづくりについて、都道府県の伴走支援やプラットフォーム支援も重視しています。
認知症医療資源についても、都道府県と市町村が現状と役割を確認し、議論を重ねる必要があるとしています。
【江東区はどう読むべきか】
この資料の一部には中山間地域の話も出ますが、江東区はそこをそのまま真似する必要はありません。
ここで重要なのは、この内容を都市型の課題に読み替えることです。
江東区で課題になるのは、『担い手がゼロ』というよりも、独居高齢者が多いこと、認知症や軽い生活機能低下を抱えた人が多いこと、資源は多いのに縦割りでつながっていないこと、どこに何があるかが住民にも支援者にも見えにくいこと、そして介護予防が“元気な人向け事業”に寄りがちなことです。
資料の方向性を江東区向けに言い換えると、『地域の資源を見える化して、必要な人にちゃんとつなげなさい』ということになります。
【江東区が具体的にやるべきこと】
ここからは、江東区が具体的に取り組むべき内容を書きます。
1.総合事業の棚卸し
訪問A・B・C、通所B・C、通いの場、サービス・活動C、認知症カフェ、本人ミーティング、家族介護者支援の実施状況を、区全体ではなく日常生活圏域ごとに整理すべきです。
2.地域資源の見える化
資料はニーズ調査や見える化システムの活用を重視していますが、江東区ではこれをもっと生活実感に寄せる必要があります。
たとえば、通いの場だけでなく、区民館、図書館、商店街の空きスペース、銭湯、フィットネス施設、病院や老健の地域開放スペース、NPOや民間サービスまで含めて、『高齢者がどこに行けるのか』を地図化することが重要です。
これは資料の『多様な主体を組み合わせる』という方向性と合います。
3. サービス・活動Cの強化
資料は、介護予防・自立支援の効果が見込まれる人に対し、保健医療専門職による計画的支援を行うC型について、実施状況や要介護度・心身機能の変化を把握できるようにする必要性を強調しています。
江東区では、フレイル層を早めに拾い上げて、ここにつなぐ導線づくりがとても重要です。
4. 認知症施策では本人参画が鍵
江東区では、本人ミーティングやピアサポートを『先進例』として置いておくだけでなく、区の計画策定、地域包括支援センター、認知症初期支援、家族会、地域の居場所づくりに組み込んでいく必要があります。
資料も、先駆的な自治体の事例を横展開し、本人の参画・参加を推進すべきだとしています。
また、独居認知症高齢者への支援は、江東区で特に重いです。
資料は、身寄りのない高齢者対応の仕組みの中で、独居の認知症高齢者の観点も含めるべきだとしています。
江東区では、医療・介護だけでなく、住まい、見守り、権利擁護、意思決定支援までつないだルートを持たないと、制度のすき間に落ちやすいです。
【まとめ】
この資料のメッセージを、できるだけ簡単に言うと、『介護予防を、元気な人向けのイベントで終わらせず、地域の支え合い、認知症支援、家族支援までつないだ“地域の基盤”に変えなさい』ということです。
そして、江東区を含めた23区の自治体に求められているのは、『資源を増やすこと』だけではなく、『今ある資源を見える化し、圏域ごとに組み合わせ、独居・フレイル・認知症・家族介護の課題に届く形で再設計すること』です。
東京都23区のような大都市で読むと、これはかなり重要です。
なぜなら、23区では『資源が全くない』のではなく、資源はあるのに、必要な人にうまくつながっていないことが大きな問題だからです。
資料も、総合事業・介護予防・認知症施策を別々に扱うのではなく、地域全体の支援体制として見直す方向を示しています。
【所感】
今回の資料で国が主張しているのは、『制度の器は広げたので、次は自治体が本気で地域の力を組み合わせて使ってください』ということですが、これをどこまで汲み、柔軟な考えで地域包括ケアシステムの設計をできるか、そして同時に、それを具現化するために取り組む覚悟を持てるかがポイントになると思っています。
資料の中でも示されていましたが、次期計画では『家族ありきの体制から、単身世帯を前提とした体制への転換』と、『地域資源をうまく活かしながら官民共同で取り組む姿勢を持てるか』が、持続可能性を左右すると考えています。
江東区は、データを多く持っているほか、認知症カフェやご近所ミニデイなど、区が関わっている資源については比較的把握できています。
だからこそ、次の課題は、区が直接関わっていない地域資源をどう集約し、全体を見てデザインできるかがポイントだと思います。
そして、それが実現できるかは『所管を超えた連携が取れるか?』にかかっていると感じています。
例えば、こども未来部が担っているこども食堂事業に長寿応援課が関わって『だれでも食堂』のような形に広げ、多世代交流の場にするとか、地域振興部が担っている社会教育関係団体と地域ケア推進課が連携して、高齢者一人ひとりの趣味や特技を活かせる活動につなげるなど、方法はいくらでもあると思います。
このあたりについて、『今ある資源』を上手に活用して、より高齢者の方々が受け身ではなく主体的に活動できる場を創設することを期待しています。
とにもかくにも、介護予防については、『元気な高齢者向けの教室の話で終わらせず、地域づくり・認知症支援・生活支援までつないで、もっと実効的にやり直そう』という国の方向性を私は支持します。
そのうえで江東区には、新たに何かをつくるというより、今ある様々な資源を棚卸しし、どうつなげ、どう活かすかという視点で実効性を高めていただきたいと思いました。
また、高齢者の方々の主体性を最大限引き出せるような仕掛けや仕組みにするとともに、計画には一定の余白を残し、参加者の自由度を担保していただけたらと期待しています。
【おわりに】
介護予防に関して、国は自治体に対して、総合事業を見直し、効果を測り、認知症や独居高齢者まで含めた地域の支え方を組み直すことを求めています。
同時に、『制度の器は広げたので、次は自治体が本気で地域の力を組み合わせて使ってください』というメッセージを受け止め、江東区の強みを最大限活かした介護予防を構築してほしいと強く期待しています。
次回は、社会保障審議会資料の最後として、『高齢者向け住まい』について書きます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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