本日の要約
結論:次期の地域包括ケア計画は、3年ごとの見直しではなく、2040年を見据えて医療・介護・住まい・人材を一体で設計し直す発想が必要。
理由:85歳以上・独居高齢者・認知症高齢者が増える一方で、人材不足と財政制約が強まり、従来どおりの縦割り計画では支えきれなくなるから。
何するか:今回は社会保障審議会資料をもとに、自治体に具体的に何が求められているかを整理し、江東区で何を優先して備えるべきかを書いていく。
ブログへの訪問をありがとうございます!
今日も長くなるため、前置きなしで書きますね(と言っても、今回は5,700字程度で収まっていますのでご安心ください)。
前回は地域包括ケアシステム構築の前段階の資料を解説しましたが、今回からは来年度以降の地域包括ケア計画を構築するための会議で使用される資料の説明になります。
今回扱う資料は、地域包括ケアシステムを実際にどう設計し、自治体計画にどう落とし込むかまで踏み込んでいるのが特徴です。
これからの自治体は、前の計画をそのまま踏襲するのではなく、地域の実情を踏まえた実現可能な計画を組み直さなければなりません。
その意味で、ここから先の資料はかなり重要なので、できれば元の資料もあわせて読んでいただけると理解しやすいと思います。
今回は、地域包括ケアシステム構築の『持続可能性をどう担保するのか?そのために自治体はどうしたらよいのか?』について書きます。
では、行ってみよー☆
【来年度の計画に踏み込んだ資料①】
今回の資料は、前回までの“方向性の整理”より一歩進んで、自治体が次期計画をどう作るべきかに踏み込んだ資料として読むと分かりやすいです。
最初は令和7年9月29日に行われた社会保障審議会介護保険部会(第125回)の資料である『地域包括ケアシステムの深化、持続可能性の確保』について解説します。
前回資料より一歩進んでいて、『地域包括ケアをどう深めるか』だけでなく、『それを自治体計画・医療介護連携・制度の持続可能性にどう落とすか』まで踏み込んだ内容です。
結論からいうと、この資料のメッセージは次の3つです。
1.市町村は、3年ごとの介護保険事業計画をその場しのぎで作るのではなく、2040年を見据えた中長期推計を前提に作るべき
2.医療と介護は別々に計画するのではなく、都道府県と市町村が共通認識を持って広域でも調整すべき
3.そのうえで、これから制度を維持するための給付と負担の見直し議論も進むので、自治体はその影響を見越して備える必要がある
以下、整理しながら説明しますね。
1.この資料の言っていること
今回の資料の論点は3つです。
①地域包括ケアシステムの実現・深化に向けた支援体制の整備
②医療介護連携の推進
③持続可能性の確保
つまり国は今、自治体に対して『地域包括ケアを進めてください』と抽象的に求めているのではなく、『計画の作り方を変えてください』『医療計画と介護計画を接続してください』『人材不足や財政制約も前提に、持続可能な形へ組み替えてください』と、かなり具体的に求めています。
次期計画を見据えて、取り組むべき項目までかなり明確に示しているのがこの資料の特徴です。
これを住民目線で言い換えると、次のような転換だと言えます。
これまでの高齢者施策は、要介護になる前は健康づくり、要介護になると介護保険、病状が悪化すると医療、認知症は別枠で対策、住まいはまた別問題という縦割りでの施策となっていました。
でも2040年に向けては、85歳以上、独居高齢者、認知症高齢者、医療と介護の両方が必要な人が増える。
すると、退院してもすぐ在宅復帰できない、施設でも急変対応が必要、独居だと権利擁護や生活支援まで必要、しかも介護人材は足りないので、制度ごとの縦割りでは回らない、というのがこの資料の基本認識です。
2.今回資料の一番重要なポイント
今回の資料で前回より明確になっているのは、自治体計画の作り方そのものを変えるよう求めている点です。
資料では、今後は3年を1期とする介護保険事業計画だけでなく2040年を見据えた中長期推計を前提にして、サービス見込量や体制整備を考える必要があるとしています。
しかも、その推計は市町村だけでなく、都道府県側にも計画上きちんと位置付ける方向が示されています。
さらに、都道府県と市町村が共通の課題認識を持ち、圏域単位で議論し医療介護連携、人材確保、生産性向上、高齢者向け住まいまで含めて広域調整していくべきだとされています。
その全体像を端的に示しているのが資料6ページの図で、要するに、都道府県と市町村が共通推計を前提に、医療・介護・住まい・人材まで含めて広域的に調整していく考え方を示しています。

ここからは、この資料を踏まえて自治体に何が求められているのか、さらに江東区では何を優先して取り組むべきかを書いていきます。
【自治体は具体的に何が求められているか】
ここでは、資料の内容を自治体実務に引きつけて整理します。
①2040年推計を前提に計画を作り直すこと
市町村介護保険事業計画は、単に次の3年間の給付見込みを置くのではなく、2040年や2050年の人口推計、認定者数、受給者数、介護サービス見込量、医療機関・介護事業所数、高齢者向け住まいの戸数や入居状況、人材確保の状況、医療介護連携や在宅医療の状況まで踏まえた議論にすべきだと整理されています。
要するに自治体は、『高齢者が増えるから特養を増やす』という発想ではなく、『どの圏域で、どの時期に、どのニーズが増減し、在宅・施設・住まい・医療をどう組み合わせるか』まで読まなければならない、ということです。
②医療と介護の計画を接続すること
資料は、医療介護連携について、都道府県と市町村が共通認識を持って広域的に議論すべきだとしています。
特に、請求情報に基づく地域課題の把握、療養病床、在宅医療、介護保険施設の受け皿の整理、高齢者施設と協力医療機関のマッチングを、協議の場で具体的に扱うべきとしています。
つまり自治体に求められているのは、医療側に任せることでも、介護部門だけで抱えることでもなく、両者をつなぐ設計者になることです。
③高齢者向け住まいも計画の中心に入れること
この資料では、高齢者向け住まい、とくに有料老人ホームやサ高住が大きな論点になっています。
背景として、高齢者住まいのニーズが高まっている、サービスが多様化しているけれど、一方で「囲い込み」や情報の不透明さが問題になっているという認識があります。
したがって自治体は、区内の有料老人ホーム・サ高住の実態把握、介護サービス提供体制の有無、協力医療機関の状況、入居者像、看取り対応、重度化対応、囲い込みリスクまで含めて把握し、計画や指導監督に反映させる必要があります。
④人材確保と生産性向上も、介護計画の本体に入れること
この資料では、人材不足は周辺論点ではなく、本体です。
特に都市部では、高齢者需要は増える一方、生産年齢人口は減るため、サービス需要があっても担い手がいないという前提に立っています。
したがって自治体は、事業者数を見るだけでなく、実働人員を把握し、生産性向上支援、ICT導入支援、事業者間の協働化支援まで考える必要があります。
さらに、新規人材の確保だけでなく、介護助手や多様な担い手も視野に入れる必要があります。
⑤23区の自治体として、特に重い論点
ここからは、資料の内容を23区の自治体に引きつけたとき、特に重くなる論点を整理します。
資料の整理上、23区は基本的に『都市部』として読むのが自然です。
資料では都市部について、介護サービス需要の当面の増加と、生産年齢人口の減少による人材確保難、さらに新たな事業者や担い手を持続的に確保できるかが主要論点とされています。
◆区内平均ではなく、圏域別に見ること
23区は『都会だから一様』ではありません。
同じ区でも、古くからの住宅地、再開発エリア、単身高齢者が多い地域、団地・マンション集積地でニーズが違います。
資料でも、より細かい単位で可視化する必要があるという部会意見が示されています。
つまり、区全体平均だけでなく、日常生活圏域ごとに需給を見ろという方向です。
◆在宅だけで支える前提を見直すこと
23区では、独居・高齢夫婦・認知症の増加により、在宅一本では持たないケースが増えます。
そのため、在宅医療、訪問看護、ショート、老健、施設の急変対応、病院との再入院・受入れルートを一体で設計する必要があり、医療介護連携の項目は、まさにこの再設計を自治体に求めています。
◆有料老人ホーム・サ高住の扱いが重要になること
23区では、高齢者住まいの選択肢として、特養や老健より先に有料老人ホームやサ高住が現実の受け皿になる場面がかなりあります。
その一方で、情報が分かりにくい、介護サービスが外付けで実態が見えにくい、囲い込みや過剰サービスの懸念があるので、住まいを『民間だから福祉計画の外』として扱うと危険で、資料もこの点を強く意識しています。
◆人材確保は区単独では限界があること
23区では、介護人材は通勤圏、賃金水準、住宅費、周辺自治体との競合が大きいため区内だけで完結しません。
だから資料がいう『市町村を越えた広域的な議論』が重要です。
23区であれば、都や近隣区、市部も含めた広域視点なしに人材問題は解けません。
【江東区に落とし込んでみた】
大都市部の課題を江東区でかなり実務寄りに落とすと、少なくとも次の8点に取り組む必要があります。
①2040年推計を区の公式前提にする
高齢者人口、85歳以上人口、認定者数、独居高齢者、認知症高齢者の推計を圏域別で持ち、介護保険事業計画、高齢者保健福祉計画、住まい施策、地域福祉計画でその前提を揃える。
②医療・介護・住まい資源を地図化する(圏域ごとの見える化)
訪問診療、訪問看護、介護事業所、介護保険施設、高齢者住まい、協力医療機関を圏域別に見える化する。
③病院退院後の受け皿を再点検する
急性期病院から在宅・施設に戻るまでの導線が詰まっていないか確認する。
特に、老健の空き、ショートの使い勝手、施設の急変時搬送ルール、退院時カンファレンスの実効性を点検する。
④協力医療機関未確保施設を洗い出す
区内施設のうち、協力医療機関が弱い、または要件を満たしていないところを把握し、都・医師会・病院との調整につなげる。
⑤有料老人ホーム・サ高住を“見える化”する
件数だけでなく、要介護者受入れ可否、看取り可否、協力医療機関、外部サービス依存度、紹介事業者利用の有無などを把握する。
⑥地域包括支援センターの機能を再整理する
今後は、単なる相談窓口では足りません。
介護予防、医療介護連携、認知症支援、権利擁護、高齢者住まいへのつなぎまで含めた役割分担を見直す必要があります。
これは前回資料と今回資料を通して読むと明らかです。
⑦人材確保を『求人』ではなく『供給戦略』として扱う
区内事業所の人材充足率、離職率、夜勤体制、訪問系の担い手不足などを把握したうえで、ICT導入、介護助手の活用、複数事業者の協働、外国人材や多様な担い手の受入れ環境まで含めて考える。
⑧負担見直しの影響を先に読む
資料では、2割負担の範囲見直しやケアマネ給付、軽度者生活援助、多床室負担など、制度見直し論点が並んでいます。
区は制度改正を決める立場ではありませんが、それらがどういう影響を与えるのかを今から想定すべきです。
【資料のまとめ】
この資料が自治体に求めていることを一文でまとめると、介護保険の事務処理にとどまらず、2040年を見据えて、医療・介護・住まい・予防・認知症・人材を一体で設計し直すことです。
そして23区では、とくに『都市部型の需要増』と『担い手不足』と『民間高齢者住まいの増加』への対応が中核課題です。
言い換えれば、次期計画は『前回計画の延長線』ではなく、『2040年対応の設計図』として作り直す必要があるということです。
【所感】
少子高齢化が進んでいると言われますが、高齢者数が最も増えるのは2042年ごろだとされています。
だからこそ、この資料で繰り返し書かれている『2040年を見据えて根本的に計画を見直しなさい』というメッセージについて、私の感覚としては、ようやくここまで明確に書いてくれたかという思いがあります。
・・・というのも、私自身、次期改定以降の地域包括ケアシステムで必要になる事項について、議会で訴えていたからです。
むしろ、このことを提言したくてこの時期に議員になったと言っても過言ではありません。
逆に言えば、この部分が解決するなら、私が議員であり続ける理由の大きな一つはなくなります。
以上を踏まえて、私は今後、地域ケア推進課を中心に、少なくとも次の点について意見交換していきたいと考えています。
・当区は2040年時点の85歳以上人口、認知症高齢者、独居高齢者を圏域別に把握しているか
・介護保険事業計画は、3年間の見込量だけでなく2040年推計を前提に再構成されているか
・医療計画側との接続について、都や二次医療圏単位の協議にどう参画しているか
・区内施設の協力医療機関確保状況を把握しているか。未確保施設への支援はどうするか
・有料老人ホーム・サ高住の実態把握と指導監督をどう強化するか
・区内介護人材の需給見通しと、生産性向上支援の具体策は何か
繰り返しになりますが、次の地域包括ケア計画は、今後の高齢者福祉を大きく左右する大切な計画です。
だからこそ、計画策定を行う今年度はとても重要であり、所管の職員の皆さんは大変だと思いますが、これまで以上に本気で取り組んでいただくことを期待しています。
【おわりに】
本当はもう一つ資料まで説明したかったのですが、すでにかなりの分量になってしまったため、今回は一つ目の資料までにします。
次回は、今回の『持続可能性』の議論を受けて、地域包括ケアシステムにおける『相談支援のあり方』について書かれた資料を説明したいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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