当区の地域包括ケア計画を考える③~方向性を示す資料から~

本日の要約

結論:2040年に向けた国の議論は、自治体に「地域包括ケアを地域ごとに再設計せよ」と求めているが、権限や財源の示し方はまだ不十分。

理由:高齢者、とくに85歳以上・認知症・独居高齢者が増える一方で、人材不足が深刻化し、全国一律の介護体制では支えきれなくなるから。

何するか:今回は社会保障審議会の2つの資料を整理し、そこから自治体、とくに江東区のような大都市に何が求められているかを読み解く。

ブログへの訪問をありがとうございます!

今日は社会保障審議会の資料をもとに、これからの地域包括ケアシステムに求められる視点と方針を整理し、それが江東区のような大都市の自治体に何を求めているのかまで書いていきます。

200ページ以上の資料をまとめたことにより今回も長文なため、お時間のない方は、赤字部分だけでもお読みいただけたら幸いです。

では、行ってみよー☆

 

【前提:2040年を見据えた参考資料】

まず1本目の資料は、今後の制度改正そのものではなく、2040年に向けた介護提供体制の大きな方向性を示す“全体像の資料”として読むのが分かりやすいです。

『2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関するとりまとめ』という資料ですが、令和7年7月28日社会保障審議会介護保険部会(第 123 回)に参考資料として出されたもので、方向性としてはかなり明確です。

2040年に向けて、介護保険を今のまま全国一律の発想で回すのは難しいので、域の実情に合わせてサービスの形を変え、人材不足にも対応し、医療・介護・地域支援をつなぎ直そう

これが、この参考資料全体のいちばん重要なメッセージです。

簡単に言うと、最終的な制度改正そのものではなく、今後の制度・報酬見直しの方向性を示したもので、これを踏まえて社会保障審議会の資料を読むと理解が深まると思うため、内容を要約しながら書きます。

 

①資料の説明

ここでは、まず資料に何が書かれているのかを私なりにかみ砕いて整理します。

まず前提ですが、介護保険は、高齢になって介護が必要になった人に、在宅介護サービス、施設介護サービス、ケアマネジメントなどを保険で提供する仕組みです。

この資料は、その仕組み自体をやめる話ではありません。

むしろ、介護保険の理念である『尊厳の保持』と『自立支援』は維持すると明記したうえで、2040年には85歳以上、認知症高齢者、独居高齢者が増える一方、支える現役世代は減るので、サービス提供体制を組み替える必要がある、と述べています。

その核心は、『地域ごとに課題が違うのだから、介護サービスの作り方も変えなければならない』という点です。

つまり、同じ介護保険制度の中でも、『何を維持すべきか』『何を増やすべきか』『どこまで柔軟化するか』は地域別に考えるという発想ですね。

ここからは、江東区を念頭に置いて、資料の中でも大都市部に関する記述に絞って見ていきます。大都市部では、高齢者が増え続け、需要が急増することが課題とされており、、民間活力と公的サービスの組み合わせ、ICTやAIの活用、多様な住まいに応じたサービス整備が重視されています。

独居高齢者が増えるので、24時間365日の見守りを前提に、必要なときに訪問や通所を組み合わせるような包括的サービスも検討対象とされています。

要するに、都市部では『事業所が少なすぎて困る』というより、ニーズの増加に対して、効率よく大量に支えられる仕組みをどう作るかが主題です。

 

続いて、人材不足への考え方が記されていますが、この資料でもっとも切迫感が強いのがここです。

介護関係職種の有効求人倍率は高く、2040年度までに約57万人の新たな介護職員確保が必要と推計されています。

資料は、人材確保を『最大の課題』と位置づけており、対策は大きく4本柱です。

処遇改善、定着支援、テクノロジー導入、生産性向上です。

加えて、ハローワークや福祉人材センターなどの連携、潜在介護人材の掘り起こし、入門的研修、タスクシェア、外国人材支援なども挙げられています。

つまり、給料を上げるだけでは足りず、採用ルート・働き方・職場運営を全部見直す必要があるという整理です。

ここでいう生産性向上は、単なる人減らしではなく、記録、見守り、移動、周辺業務などをテクノロジーや役割分担で効率化し、その分を直接ケアや職員投資に回す発想です。

資料は、2029年までにテクノロジー導入率90%、2040年までに施設系で約3割の効率化目標にも触れています。

 

続いて、医療と介護の連携ですが、2040年には、85歳以上の増加で、『医療も介護も必要』な人が増えることが前提です。

そのため、地域包括ケアシステムをさらに深め、医療・介護・予防・生活支援を切れ目なくつなぐ必要がある、としています。

特に退院後の受け皿、老健や地域の中小病院の役割、在宅支援体制の整備が重視されています。

つまり、『病院で治療して終わり』ではなく、退院後に家や施設でどう支えるかまで含めて組み直す、ということです。

ここは自治体の介護保険事業計画と、都道府県の医療計画・地域医療構想をちゃんと接続させる必要がある、という流れにつながります。

 

続いて、介護予防と認知症ケアにいきますが、資料は、介護保険は『介護が必要になってから支える』だけでなく、介護予防・健康づくりを強めるべきだとしています。

通いの場、地域リハビリ、総合事業、サービス・活動Cなどを組み合わせ、支える側/支えられる側を固定しない地域参加型の仕組みを強調しています。

認知症ケアについては、医療・介護だけでなく、生活支援、権利擁護、意思決定支援、地域のインフォーマル支援まで含めた対応が必要としています。

要は、認知症の人を『医療や介護の対象』としてだけでなく、地域で暮らし続ける住民として支えるという方向です。

 

最後に地域共生社会とのつながりになりますが、この資料は介護だけの文書ではありません。

障害福祉や保育も含めた福祉サービス全体の共通課題を扱っていて、最後に『地域における連携』と『地域共生社会』を強く打ち出しています。

介護、障害、保育を別々に維持するのではなく、地域の実情に応じて、施設の有効活用、法人連携、人材プラットフォーム、包括的支援体制の整備を進めよう、という整理です。

 

②住民から見た変化の方向

ここまでは資料の説明でしたが、次に、それが住民からはどういう変化として見えてくるのかを書いてみます。

ひとつは、地域によってサービスの形がもっと違ってくる可能性が高いことです。

同じ介護保険でも、都市部では見守り+オンデマンド訪問型が伸びるかもしれません。

もうひとつは、事業所単体ではなく、連携前提の運営が増える可能性です。

法人間連携、共同事務、広域運営、社会福祉連携推進法人の活用などです。

さらに、介護予防・生活支援・医療連携・認知症支援をひとかたまりで考える方向が強まります。

つまり、介護保険の給付だけで完結しない支援に寄っていくということです。

 

③大都市についての資料記載

江東区を念頭に置いて読むと、この資料の『大都市部』パートはかなり実務的な示唆を含んでいます。

要点を先に言うと、大都市部では『サービスが足りない地域が増える』のに、同時に『人手も土地も高コストで、従来型の整備だけでは追いつかない』ので、在宅を軸に、ICT・AI・見守り・多様な住まいを組み合わせた新しい供給モデルへ寄せていく、という話です。

以下、少し丁寧に書きますね。

 

1. 公と民を組み合わせて、供給不足に備える

資料は、大都市部では増える介護ニーズに応えるため、民間事業者の創意工夫だけでなく、地域に根ざした公的サービス提供も重要だとしています。

つまり、『民間に任せればよい』でも『行政直営で抱える』でもなく、両方を組み合わせて多様なニーズに応えるべきだ、という考え方です。

江東区でいえば、民間の訪問・通所・施設系サービスの供給力と、区の地域支援事業、地域包括支援センター、医療連携調整、住まい施策などをどう噛み合わせるかが論点になります。

2. 『密度が高い』ことがむしろ強みになる

資料は、大都市部では人口密度が高く、施設・住まい・在宅サービスの密度も高いので、コンパクトなサービス提供が可能だとしており、これは江東区にもかなり当てはまります。

過疎地と違って移動距離が比較的短く、利用者が集中しているので、訪問系や見守り系を効率化しやすいわけで。

資料も、交通事情や地形等のエリア差を加味して需給バランスを考える必要があるとしています。

3. ただし、同じ江東区内でも“均一”ではない

資料は、大都市部でも団地が多い地域、高齢化の進み方の差、地縁の薄さが課題だと明記しています。

つまり、大都市部対策は『都市部だから一括でこうする』ではなく、区内の小地域ごとの差を見る必要がある、というのが資料の読み方です。

これは23区でもかなり重要です。

4. 住まいと介護を一体で考えるべきだ、という話

資料は、大都市部では高齢者のニーズに沿った多様な住まいを充実し、その住まいに対応した多様なサービスをICTやAIも活用しながら組み合わせる体制が必要だとしています。

さらに、独居高齢者の増加を踏まえ、複合的ニーズに応えるサービスを考える必要があるとも述べています。

これは、江東区のような都市部自治体で考えると、かなり現実味のある論点です。

資料のメッセージは、どこに住んでいても同じメニューを機械的に当てるのではなく、『住まいの類型ごとに必要な介護・医療・見守りを組むべきだ』ということを示しています。

私はこの記述を、住まい政策を抜きに介護基盤整備を考えてはいけない、というメッセージとして読みました。

5. 夜間の定期訪問より、“24時間見守り+必要時対応”へ寄せたい

ここが大都市部パートのいちばん特徴的な部分です。

資料は、テクノロジーを活用し、必要なときにサービスを提供する形のほうがQOL向上につながるし、日中に重点化すれば重度者を在宅で支えやすくなる、という意見を紹介しています。

さらに資料は、大都市部のサービス形として、24時間365日の見守りを前提に、緊急時やニーズ発生時に訪問や通所などを組み合わせる包括的サービスを検討するとしています。

つまり、私がこの記述からイメージしているのは、次のようなモデルです。

・常時はセンサー、通信、相談体制、コール対応で見守る

・必要なときだけ訪問介護、訪問看護、通所、ショート等を機動的に入れる

・独居高齢者や重度要介護者の在宅継続を支える

という形です。

6. 最大の制約は、人手より先に“土地・建物コスト”でもある

資料は最後に、大都市部は土地や建物の価格が高く、サービス基盤整備に多くの費用を要するとしています。

そのため、一定の質を維持する前提で、設備基準などを実態に即して考える必要がある、としています。

これは23区の実務ではかなり重いし、現に東京都は補助金という形で支援を行っています。

施設を新設するにも、デイサービス拠点を確保するにも、訪問介護の待機拠点や小規模多機能の整備にも、家賃・地価・建築費が効いてきます。

そのため資料は、単に『もっと施設を増やせ』とは言わず、都市型では、限られた床と人手でどう効率よく供給するかを再設計すべきという方向を示しています。

 

【上記を踏まえて深堀りすると・・・】

ここからは、1本目の“全体像”を受けて、2本目の資料で個別論点をもう少し細かく見ていきます。

1本目が2040年に向けた全体の方向性を示す資料だとすれば、ここから扱う2本目は、その中身を医療介護連携、介護予防、認知症ケアという論点ごとに具化した資料として読むと分かりやすいです。

資料は、令和7年6月2日の社会保障審議会介護保険部会(第121回)で出された資料『地域包括ケアとその体制確保のための医療介護連携、介護予防・健康づくり、認知症ケアについて』です。

なんかもう、タイトルが長すぎて『詰め込みすぎだよ!』と突っ込みたくなりますが、本当に詰め込みすぎの資料です。

この文書は、介護保険部会の議論用資料で、今後の制度改正や計画見直しに向けた論点整理です。

資料自体も、今後順次議論し、制度改正に向けた議論を行っていく予定だと書いています。

なので、『これは法律改正そのものではないが今後の改正の方向をかなり強く示している』という理解が適切で、『これから高齢者がもっと増え、とくに85歳以上が増える中で、介護保険だけでなく、医療・介護・介護予防・認知症支援をどうつなぎ直すか』を整理したものです。

そのため、制度改正そのものではなく、今後の見直しの論点を示した資料だと考えると読みやすいです。

なお、この資料が一番言いたいことを一言でいうと、『2040年に向けて、今の仕組みのままでは支えきれないので、地域包括ケアをもっと現実に合う形に作り直そう』という話です。

それに伴い、この資料の柱は3つです。

1. 医療と介護をどうつなぐか

2. 介護予防・健康づくりをどう強めるか

3. 認知症ケアをどう進めるか

資料が示している方向性(超要約したもの)を記したうえで、それぞれについて、先ほどと同様、内容を要約しながら書きますね。

 

⓪資料を通して見える「介護保険の変化」

ここでは個別論点に入る前に、資料全体を通して見える介護保険の発想の変化を先に整理します。

この資料を読むと、介護保険の考え方が少し変わってきているのが分かります。

昔ながらのイメージだと、要介護になったらサービスを使う、足りなければ施設を増やす、という発想になりがちです。

でもこの資料は、そうではなく、医療と介護を一体で見る、在宅生活を支える仕組みを強める、介護予防を本気でやる、認知症になっても地域で暮らせるようにする、地域の資源を見える化し、組み合わせる、自治体ごとにデータを分析して考えるという方向に重心が移っています。

ちなみに、この資料を超要約するとこんな感じです。

1. これから85歳以上が増えて、医療も介護も必要な人が増える。

2. だから、病院と介護、在宅支援をもっとつながないといけない。

3. 介護が重くなる前の予防や、地域での支え合いも強くしないと制度がもたない。

4. 認知症の人が増えるので、介護だけでなく、居場所、権利擁護、生活支援まで含めた地域づくりが必要。

5. そのために、自治体は地域の医療・介護資源を見える化し、計画的に組み直す必要がある。

この部分を踏まえて、以下3つの柱を説明しますね。

 

①医療と介護をどうつなぐか

簡単に言うと、この資料が示しているのは、『これからは病院で治療して終わりではなく、退院後の暮らしまで支える仕組みが必要だ』ということです。

具体的課題として、資料では、市町村の在宅医療・介護連携推進事業は全国で進んでいるものの、自治体ごとに差があるとしています。

具体的には、入退院支援、日常の療養支援、急変時の対応、看取りの全部をきちんと設定している自治体は約4割で、残りは一部だけ、または未設定ということが書かれています。

実際の取組でも、入退院支援や日常の療養支援が多く、急変時や災害時などはまだ弱い面があります。

さらに、介護施設の急変時対応のため、協力医療機関との連携強化が進められていると説明しています。

実際には、必要な条件を満たす協力医療機関を確保できていない施設も相当ありますが、住民目線で言うと、『施設に入っていても、急変したとき病院との連携が地域によってばらつく』という問題につながります。

だから、都道府県や市町村がもっと調整しないといけない、というのがこの資料の考え方です。

 

②介護予防・健康づくりをどう強めるか

この点で資料が示している方向は、『介護が必要になってから支える』だけでなく、『介護が重くならない地域の仕組みを前倒しで作る』ことです。

介護保険というと、介護が必要になった後の支援を思い浮かべやすいですが、この資料は、できるだけ介護が重くならないようにすることも非常に重要だとしています。

資料では、住民主体の通いの場や就労など、高齢者の社会参加が、要介護化や認知症リスクの低減に効果がある研究成果が繰り返し報告されているとしています。

つまり、家に閉じこもらず、人とのつながりや役割を持つこと自体が予防になるということです。

また、介護保険には、要介護認定を受けた人向けの給付だけでなく、市区町村が行う『介護予防・日常生活支援総合事業』があります。

これは、比較的軽度な高齢者への支援や、通いの場、生活支援、短期集中型の予防プログラムなどを柔軟に組み合わせる仕組みです。

資料では、この総合事業をもっと活かし、医療・介護の専門職、高齢者本人、地域の多様な主体を組み合わせることが重要だとしており、さらに、地域ごとの効果を分析・見える化し、好事例を横展開すべきだとしています。

ほか、資料では、通いの場は、年齢や心身の状況で分けず、誰も一緒に参加でき、認知症予防、多世代交流、就労的活動など、地域ニーズに応じた多様な機能を持つ場として発展させるべきだとしています。

つまり、介護予防は体操教室だけではなく、地域で人とつながり、役割を持ち、生活機能を保つ場づくりでもあるということです。

介護保険財政の面でも、介護予防は重要です。

要介護状態になる人が増えすぎると、サービス需要も保険財政負担も膨らみます。資料も、介護予防は制度の持続可能性確保にも資すると述べています(ちゃんと計画的にデザインして取り組めということです)。

 

③認知症ケアをどう進めるか

この点で資料が示している方向は、認知症を医療や介護の問題だけに閉じず、地域で暮らし続けるための生活支援の課題として捉えることです。

認知症については、単に『介護が必要な状態』としてだけでなく、認知症になっても地域で暮らし続けられる社会をどう作るかがテーマです。

資料は、認知症基本法を踏まえ、認知症になっても希望を持って暮らし続けることができる社会を目指すとしています。

本人の声を尊重し、支える側・支えられる側と固定しない考え方です。

2025年時点で独居の認知機能低下高齢者は約250万人、2040年には330万人と推計されています。この資料は、医療、介護、生活支援、権利擁護、意思決定支援、住まい支援、インフォーマルサービスまで多岐にわたると整理しており、認知症カフェ、本人ミーティング、ピアサポート、就労を含む社会参加の場、幅広い居場所づくりを充実させ、本人や家族が参画する形で施策を進めるべきだとしています。

要するに、認知症の人を『支援の受け手』として閉じ込めるのではなく、地域の中でつながりを持ち続けられるようにすることが重要だ、ということです。

 

【自治体に示していること】

ここからは資料の説明を一度離れて、2つの資料を合わせて読むと自治体に何を求めているのかを整理します。

問題認識そのものにはかなり納得する一方で、その処方箋の示し方には強い違和感がありますが、2つの資料を合わせて読むと、自治体に対して言いたいことは、かなりはっきりしています。

一言でまとめると、2つの資料が自治体に求めているのは、高齢者、とくに85歳以上・認知症・独居の人が増える一方で支える人材が減る時代に、介護保険を“今ある制度をそのまま回す仕事”ではなく、“地域の医療・介護・予防・生活支援を組み直す仕事”として考え直すことです。

そのうえで、江東区のような大都市の自治体へのメッセージとして整理すると、次のようになります。

1.在宅を持たせる仕組みを最優先で作れ。

→病院、在宅医療、訪問看護、介護、見守り、住まいをつないで、独居でも暮らし続けられる体制を作る。

2.独居高齢者・認知症高齢者を前提に政策を作れ

→家族同居前提ではもう回らないから、生活支援、権利擁護、住まい支援まで含める。

3.医療と介護を、本当に接続しろ

→入退院、急変、看取りを区の介護計画の外に置くな。東京都の医療計画とも接続する。

4.区内の地域差を見ろ

→区全体平均ではなく、圏域単位で団地、単身、高齢化、事業所分布の差を見る。

5.人材不足を前提にサービスの形を変えろ

→ICT、見守り、必要時対応、事業者連携を前提に再設計する。

6.介護予防を都市の基礎政策として扱え

→孤立とフレイルを防ぐ場と導線を広げる。

7.住まいと介護を一体で考えろ

→高齢者住宅、自宅、集合住宅ごとに支え方を変える。

8.区は“保険者”から“地域の設計者”になれ

→縦割り事務ではなく、地域の支え方そのものを設計する。

 

【所感:これらの資料から感じること】

ここからは資料の要約ではなく、2つの資料を読んだうえで私が感じた違和感と評価を書きます。

2つの資料を読んで私がいちばん強く感じたのは、国の問題認識はかなり妥当なのに、自治体に再設計を求めるだけの権限・財源・制度上の裁量の示し方がまだ不十分だ、という点です。

具体的には、7月25日資料は、全国を3類型に分けて対応を変えるべきだとし、地域ごとの需要変化に応じてサービス提供体制を構築せよ、と書いており、都道府県・市町村の役割は重要であり、地域の実情に応じて支援体制を構築すべきだ、と繰り返しています。

6月2日資料も、医療・介護資源の見える化、分析、地域医療構想と介護保険事業計画の擦り合わせ、地域での議論の場の設定などを求めています。

ここまでの記述だけを読めば、確かに『地域差があるのだから、各自治体で考えてほしい』というメッセージがかなり強く出ています。

ただ、問題はその次です。

自治体に『地域の設計者になれ』と求めるなら、本来は最低でも次の3点がセットで必要です。

・制度上どこまで選べるのかという裁量

・そのための財源保障

・うまくいかなかったときの責任分担の整理

この3つが十分に見えないまま『設計者になれ』と求めるのは、実務上かなり負担の大きい要求だと感じます。

今後の資料で3つについて、どこまで明記してあるかに注視したいと思っています。

 

そして、2つの資料で一番足りないのは『裁量の明示』だと感じました。

大都市部についてだと、24時間対応可能な包括的サービスやICT活用を検討すると言っていますが、現時点では『検討する』と書いてあるだけで、自治体が今すぐ自由に制度設計できるわけではありません。

つまり国は、現行制度のままではうまくいかないことは認めつつ、自治体にどこまで制度選択権を渡すのかは明確にしていないのです。

この状態だと、現場の課題は見えていても、使える制度手段が限られている自治体は一番困るのではないでしょうか。

だから『地域ごとに考えろ』は、現場から見ると、考える責任だけ下ろして、動かす権限は十分に下ろしていないように見えるのではないかと懸念しています。

 

さらに私は、今回の資料には『地方分権』というより『責任の地方移転』に見えてしまう部分があると感じました。

本来の地方分権なら、『地方が決められることが増える分、地方が説明責任を負う』というセットのはずです。

でも今回の資料の読後感は、やや違います。

実際には、課題設定は国がする、方向性も国が示す、ただし具体策は地域で考えろ、しかし制度の本体は国が握る、という構図に見えます。

感覚的には、『それを地方に全部言うのか!?』と突っ込みたくなる構図です。

これだと地方分権というより、『解けない問題の処理責任を地方に寄せている』と受け取られても仕方がないです。

特に介護保険は、市町村が保険者とはいえ、制度の中核は国が決めています。

つまり、自治体は保険者ではあるけれど、自由設計できる保険者ではない。

ここを変えないまま『地域の設計者になれ』と求めると、現場からははしごを外されたように映りかねません。

 

公平に言うと、国が言っている問題認識自体は、かなり正しいと私は感じています。

ただ、その正しい問題認識から導かれる政策の筋道が、まだ粗い。

つまり、『全国一律では無理』→『だから地域で考えろ』までは書いてあるけれど、『では地域が考えられるように、何を国が外し、何を国が支え、何を自治体に委ねるのか』の設計が弱く、ここに乱暴さを感じました。

これ、23区の自治体からすると、『区にそこまで設計責任を求めるなら、東京都との役割分担や、国の制度上の裁量拡大を先に整理してくれ』というのが自然な反応です。

 

もっとも、国がこうした書き方になる事情も理解できます(というか、今回の流れは予測していました)。

おそらく国としては、全国一律の正解がもうないことを分かっている。

しかも、『過疎地と23区では課題が違う』『今後の需要変化も違う』『既存資源も違う』ので、中央で一つのモデルを決めると失敗しやすい。

だから「地域ごとに」と言わざるを得ない。

ここまでは理解できます。

ただ、その事情を踏まえても、やはり問題は残ります。

中央で一律に決められないことと、地方に丸投げしてよいことは別です。

本来あるべきなのは、『全国一律に決めない』だけで終わらせず、『地方が選べる複数の制度オプションを示し、そのうえで財源と責任分担を明示する』という形だと思います。

もしこの違和感を言語化するなら、『国は地域差を踏まえた再設計の必要性を説くが、自治体に設計責任を求めるのであれば、制度上どこまで選択できるのか、財源をどう措置するのか、質確保と責任分担をどう整理するのかを同時に示すべき』です。

以上のことから、現状の資料を端的に言えば、『問題認識は妥当だが、自治体への要求に比べて裁量の提示が不十分であり、地方分権というより責任の地方移転に見える』という評価になります。

同時に、これらの後に出た資料でどこまでこれらを明示していくのかを注目しています。

 

【おわりに】

……と、ここまで資料への違和感も書きましたが、それでも今年度中に次期計画を策定しなければならないことは変わりません。

そのため次回は、社会保障審議会が出した『地域包括ケアシステム構築に向けた4つの資料』を2回に分けて整理しながら、時代や国の方向性を踏まえて、江東区はどの方向で次期計画を組み立てるべきかを書いていきたいと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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