当区の地域包括ケアシステムを考える②~現行計画から~

本日の要約

結論:江東区の現行の地域包括ケア計画は、現状分析は丁寧でも、重点化と実行管理が弱く、戦略としては物足りない。

理由:区自身が圏域差や住まい、認知症、介護者負担などの課題を把握しているのに、計画では優先順位や成果指標が十分に整理されていないから。

何するか:今回は現行計画の中身を整理して採点し、次期計画で見直すべき論点と改善の方向性を具体的に書く。

ブログへの訪問をありがとうございます!

今日は、お昼前から地域の方と合流し近況報告を行った後、午後は江東区産業会館で区政報告会を行いました。

18名の方にご参加いただき行ったのですが、予定の90分を超えても話が尽きず、改めて区民の方々は区政に興味を持っていただけているなということを実感し、ありがたいなと思いました。

 

さて、今日はブログの更新が遅くなりましたが、前回の白書から社会保障審議会資料の説明を書こうと思ったのですが、現状を知ったうえで、求められていることを理解した方が良いかなと思い、今回は江東区の地域包括ケア計画についての説明と評価を書きます。

結論から書くと、今の計画に対する私の評価は、『現状分析の土台はあるのに、重点化と実行管理の戦略を載せ切れていない計画』です。

データと現状分析はしっかりしているのに、それを活かして計画に落とし込んでいないというか、計画段階になると評価(KPI)も含めてふわっとしてしまっています(てか、計画の立て方も古い)。

なによりヤバいのが『この区の一番危ないところに資源を寄せる計画』にはなっていない。

・・・と、こんな辛口で書くのも、私が次期計画は地域福祉の大きな転換点になると感じているからです。

今回はこのあたりについて書きますが、(最初に書いておくと)担当所管の批判ではありません。

むしろ、次期計画策定の際は、国や社会保障審議会の意図をきちんと踏まえて地域福祉の向上につながる計画策定を期待を込めているため、その部分だけは誤解なきようお願いします。

では、行ってみよー☆

※今回もめちゃめちゃ長いので、お時間のない方は赤字だけでも拾ってお読みいただけたら幸いです。

 

【地域包括ケア計画ってなぁに?】

地域包括ケアシステムとは、重度な要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるように、『住まい』を中心に、『介護予防』『生活支援』『医療』『介護』を一体的に提供するための体制です。

そのいわゆる高齢者福祉と介護保険の取り組み指針となる計画を『地域包括ケア計画』と言い、3年に1回策定しています。

このあたりについては、江東区が『江東区高齢者地域包括ケア計画(2020年12月6日)』という動画で説明しているので、お時間のある方はご覧ください。

江東区では『江東区高齢者地域包括ケア計画』という名前で計画策定がされていますが、下に計画のリンクを貼るので青地をクリックして読んでいただけたら幸いです。

江東区高齢者地域包括ケア計画(令和6年度~令和8年度)

 

【江東区の現行計画】

この計画ですが、団塊の世代が全員後期高齢者となる2025年を見据え、高齢者の総合相談支援機能の強化や認知症施策の充実、介護事業者支援など、高齢者が『住んで良かった』と思えるまちを目指して、取り組みを推進しているとあります。

令和3年度~令和5年度の3年間は『地域展開期』として、これまでの3年間の地域における取り組みの評価・分析を行うとともに、その結果に基づいた見直しを行い、地域の実情に合わせた効果的な取り組みを推進してきました。

それを踏まえ、令和6年度~令和8年度の3年間は『成熟期』として、これまでの取り組みをより充実させ、区民が高齢者や認知症の人にとってやさしいまちであることを実感できるよう、取り組みを推進しています。

 

以下、区が明記している計画の基本理念・基本目標を書きますね。

基本理念

ともに支えあい、健やかに生き生きと暮らせる地域社会の実現

~地域包括ケアシステムの成熟~

基本理念を達成するため、基本理念の下に、次の5つの基本目標を定めます。

基本目標1:『介護予防』 生涯現役の健康づくりを支援する

地域で、高齢者がいつまでも健康で生き生きと活躍できるよう支援していきます。

基本目標2:『日常生活支援』 充実した日常生活を支援する

加齢により日常生活に支障が出てきても、地域の住民やボランティア、NPO、企業、団体、行政機関など、地域におけるさまざまな支えあい活動により、充実した日常生活が送れるよう支援します。

基本目標3:『介護』 介護が必要になっても安心して暮らせる地域社会の実現を支援する

高齢者が介護が必要になっても、住み慣れた地域で適切に介護が提供され、自らの意思で自分らしい生活を営むことができる社会の構築に取り組みます。

基本目標4:『医療』 在宅療養生活を支える医療と介護の連携を支援する

退院支援や在宅療養など、様々な場面で必要となる医療と介護の連携強化に取り組み、高齢者が在宅で安心して生活を送ることができる社会を目指します。

基本目標5『住まい』 高齢者の住まいの確保を支援する

高齢者一人ひとりのニーズに応じた住まいが安定的に確保できるよう支援します。

 

この基本理念と基本目標に沿って細かい計画が書かれています。

ここまでが計画の骨格ですが、ここからは、この計画を読んだうえでの私の評価を書いていきます。

私は、この計画に点数をつけるなら『100点満点で60点』です。

以下、計画の良いところと残念なところについて書いたうえで次回を踏まえた改善点を書いていきますので、一意見としてお読みいただけたら幸いです。

 

【私の評価】

率直に採点すると、私の評価は100点満点で60点と書きましたが、採点根拠をひとことで言うと、『現状把握は丁寧なのに、何を最優先に変えたいのかと、その進み具合をどう測るのかが見えにくく、戦略性と実行管理が弱い』です。

計画は、2025年と2040年の人口変化、圏域差、介護資源差、住まいの問題、介護者負担などを把握していますが、成果指標と施策のつなぎ方が弱く、課題の重さに対して打ち手の強度が足りません。

計画の良いところは、材料をちゃんと集めていることです。

江東区は、総人口が令和6年の53.9万人から2040年に57.4万人へ増え、高齢者人口も11.3万人から13.4万人へ増えると推計しています。

また、区内21圏域で高齢化率に大きな差があり、豊洲は10.5%、北砂東は34.8%です。さらに、区自身が『医療と介護の連携がうまく取れていない場合がある』『家賃上昇で高齢者が入居しづらい』『災害時の個別計画作成が名簿登録者の半数を下回る』と認識しています。

一方で残念なところは、せっかく課題を把握しているのに、計画の骨格が昔ながらの“施策一覧表”から抜け切れていないことです。です

目次でも、基本目標は『介護予防』『日常生活支援』『介護』『医療』『住まい』というきれいな縦割り構成で、事業がその下に並びます。

読みやすくはありますが、現実の高齢者の困りごとは、そんなふうに分かれていません。

実際、この計画自身が、認知症、介護者負担、医療介護連携、住まい、地域のつながりの弱さを課題として挙げています。

なのに、計画の骨格はまだ分野別のままで、このダブルスタンダード感に私は気持ち悪さを感じています。

 

以上を踏まえて、私の評価を6つの観点に分けて整理すると、次のようになります。

1. 現状分析 80点(かなり良い)

人口推計、認定率、圏域差、介護資源、介護者負担、区所管課の問題認識、長寿サポートセンターヒアリングまで入っています

特に、圏域別の高齢化率や認定率、医療・介護資源の一覧があるのは強みです。

2. 課題設定 67点(悪くはないがまだ甘い)

区は、介護予防、認知症、生活支援、医療介護連携、住まいの問題を認識しています。

長寿サポートセンターも、認知度不足、圏域間の情報共有不足、高層マンション地域でのつながりの希薄さ、認知症が進行してからの相談増を挙げています。

けれど、その課題を『区として何を最重要リスクと見るのか』まで絞り切れていません。

課題はある、でも優先順位が見えない、という感じです。

3. 目標設定 45点(ここが弱い)

計画全体の成果指標が『主観的幸福感の高い高齢者の割合』になっており、参考指標が『長寿サポートセンターの活動内容を知っている区民の割合』です。

どちらも否定はしませんが、これでは施策の良し悪しを管理する指標として弱いです。

幸福感は大事ですが、介護予防、認知症支援、住まい確保、介護人材不足、医療介護連携が改善したかどうかは、これだけでは分かりません。

しかも実績値は、幸福感が46%台で横ばい、長寿サポートセンター認知も30%です。

改善の難しさは理解できますが、逆に言えば、この指標だけで進捗評価すると、何を直せばよいかが見えません。

4. 施策の具体性 63点(事業はあるけど・・・)

認知症カフェ補助、認知症初期集中支援チーム、認知症地域支援推進員、住宅確保要配慮者への支援、お部屋探しサポート事業など、個別事業はかなり並んでいます。

たとえば認知症初期集中支援チームの支援件数はR4年度2件からR6年度21件に伸ばす計画で、お部屋探しサポート事業も相談120件・契約30件を置いています。

でも、辛口に言えば、『事業がある』ことと『構造問題が解ける』ことは違います。

住まいの問題を認識しているのに、住まいの章は『住まいの安定的な確保』『介護施設の整備』『住まいの防災対策』の3本で、かなりオーソドックスです。

介護者負担が重いことも把握しているのに、介護者支援の章がそれに見合うほど強い設計に見えるかというと、やや弱い。

つまり、施策はあるが、課題の大きさに対して再編の力が弱いです。

5. 戦略性 50点(ここが最大の弱点)

この計画は、第6期で2025年の『地域包括ケアシステムの完成予想図』を示し、第7期・第8期で基盤整備を進め、第9期もその延長にあります。

つまり、発想がかなり『従来の延長』です。

計画自身は2040年人口も見ていますが、計画の骨格は依然として『2025年対応の完成度を高める』感じが強いです。

そのため、『江東区で今後いちばん危ないのは何か』『そのために何を縮小し、何を重点化するか』が見えません。

圏域差、家賃上昇、認知症、介護人材不足、つながりの希薄化を把握しているなら、本来はもっと重点配分型の計画になるはずです。

そのあたりの戦略がないというのが残念に感じています。

6. 進行管理・PDCA 53点(最低限はあるが・・・)

計画推進体制や進捗公開の章はあります。

ですが、成果指標が弱いため、PDCAの軸も弱くなっています。

たとえば、圏域別の高齢化率と認定率の差を把握しているのだから、本来は圏域別に進捗管理すべきです。

しかし、計画全体の管理軸はそこまで踏み込んでいません。

 

【評価をまとめるとこんな感じ】

採点根拠を、改めて良い部分と残念な部分に分けて書きますね、

◆良い点(3つ)

1.現状把握が雑ではないこと

高齢化率だけでなく、圏域差、認定率、資源数、介護者負担、住まい課題まで見ています。

2.長寿サポートセンターから現場の声を取っていること

センターの認知度不足、圏域間の情報共有不足、町会・自治会との連携差、認知症の相談の重度化、高層マンションでのつながりの希薄さまで書いてあります(ここはかなり良い!)。

3.個別事業は一定程度そろっていること

認知症カフェ、初期集中支援、居住支援、お部屋探し支援など、『何もしていない』計画ではありません。

◆残念な点

1.課題は複合的なのに、計画は縦割りのままなこと

計画の目次自体が、介護予防・日常生活支援・介護・医療・住まいで区切られています。

けれど現実には、たとえば認知症のある独居高齢者の問題は、介護・医療・住まい・権利擁護・地域のつながりが全部絡みます。この計画はそこを十分に横断できていません。

2.成果指標が弱いこと

バッサリ書いてしまうと、幸福感とセンター認知度だけでは、何が改善したかが分かりません。

3.課題の重さに対して、打ち手の強さが足りないこと

区は家賃上昇で高齢者が入居しづらいと認識していますが、住まい施策のKPIは協議会開催回数1回、お部屋探し相談120件・契約30件などで、問題の大きさに比べると小粒です。

4.災害対応が相対的に弱いこと

区自身が災害時個別計画の作成が名簿登録者の半数を下回ると認識しているのに、計画の住まい分野では『住まいの防災対策』という扱いで、独立した高齢者支援戦略としては弱く見えます。

 

【改善提案】

ここからは次期計画に向けた話になるので、現行計画の評価だけを知りたい方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。

なぜ改善点まで書くのかというと、このまま現行計画の延長で次期計画をつくると、江東区の高齢者地域福祉が直面するリスクに十分対応できないと感じるからです。

まぁ、これは一議員の呟き程度で構わないので、今年度取り組む次期計画原案を作成するコンサル会社には、改善提案を踏まえて来年度以降の計画原案を策定するよう伝えていただきたいと思います。

また、次回以降で社会保障審議会の資料を説明しますが、国の方向性が大転換をしている最中、今の計画の延長で次期計画を策定してほしくないため、今一度、現計画の改善点を具体的に書いていきますが、シリーズの最後に、国の方向性を含めた次期計画策定への提案を書きますので、ここは読み飛ばしていただいても大丈夫です。

 

・・・というわけで、現行計画を踏まえて次に策定するなら、私はこの順番で策定すべきだと思います。

改善点1:計画の冒頭で『最重要課題』を3つに絞る

今の計画は、全部大事で全部やります、という作りであり、それだと結局どれもぼやけます。

江東区の現行計画の中身だけを見ても、次期計画で最優先にすべきはこの3つです。

独居・認知症・つながりの弱さ

介護サービス供給と介護者負担

住まい確保と災害脆弱性

これらは、計画自身が把握している主要問題です。

次期計画では、最初に『江東区の3大リスク』を明示して、その下に各施策をぶら下げた方が、はるかに分かりやすくなります。

改善点2:成果指標を入れ替える

幸福感をゼロにする必要はありませんが、主指標にしてはいけません。

次期計画では、少なくとも次のような指標が必要です。

圏域別の要介護認定率、圏域別の独居高齢者割合、長寿サポートセンター相談件数とアウトリーチ件数、認知症の相談から支援導入までの件数、介護サービスの受入不能理由の内訳、家族介護者の負担感、住まい相談から契約成立までの率、災害時個別計画の作成率など、事実を中心に指標を汲む必要があると感じています。

今の計画でも、圏域別高齢化率や認定率、介護者負担、介護事業所の受入困難理由は既に把握しています。だから、やろうと思えばできるはずです。

改善点3 圏域別計画に近づける

江東区は、豊洲10.5%と北砂東34.8%が同じ区内にありますが、この時点で、区全体平均で施策を組むのは無理があります。

次期計画は、少なくとも圏域ごとに、高齢化率、後期高齢化率、認定率、医療・介護資源、住まい相談の傾向、つながりの弱さを見て、重点地域を出すべきす。

現行計画は材料があるのに、そこまで戦略に変え切れていません。

改善点4 長寿サポートセンターを『広報対象』ではなく『司令塔』として書く

現行計画では、センター認知度の低さを把握しています。

でも、本当に問題なのは知名度だけではありません。

センターは、認知症、独居、地域連携、互助活動の差といった課題が集中する拠点です。

次期計画では、センターを、総合相談窓口、圏域マネジメント、認知症支援のハブ、住まいと介護の接続拠点、災害時支援の調整拠点として位置づけ直した方がいいです。

改善点5 住まい施策を強化する

この計画で一番もったいないのはここです。

区は、家賃上昇で高齢者が入居しづらいと明確に書いています。

ならば、次期計画では、入居相談件数、成約率、住宅確保要配慮者支援の実績、民間賃貸との連携件数、高齢者向け住まいの実態把握まで踏み込むべきです。

同時に、今の『協議会年1回』では弱いです。

改善点6 災害を独立論点にする

現行計画は、災害時避難支援の個別計画作成が半数を下回ると把握しています。

昨年度から個別避難計画の作成を専門職に依頼するように切り替えていますが、これはかなり重い問題です。

次期計画では、在宅の要支援高齢者の把握、避難支援の実行体制、高齢者施設・包括・区の連携、高層住宅エリアでの見守り、平時の訓練を独立させた方が良いです。

 

最後に一言でまとめると現行計画は、『まじめに作られているが、いちばん危ないところに資源を寄せる設計にはなり切れていない計画』です。

現状分析は使えるので、次期計画ではそこから圏域差を前提に、独居・認知症・住まい・介護供給・災害を横断して重点化するところまで持っていければ、わかりやすい、かつ、現場が動きやすい計画になることが期待できます。

 

【おわりに】

今回も7,000字を超えるという大惨事を起こしていますが、次期計画はとてもとても重要なため、あえて辛口で現行計画について書きました。

次回は、いよいよ、地域包括ケアシステム構築に向けた国の会議体である『社会保障審議会』の資料説明を行います。

その上で、もう一度、江東区の現行計画と、社会保障審議会で自治体に求められていることをすり合わせ、どのような形で次期計画を策定することが美しいかについて書けたらと思います。

・・・って、本当にオタクなブログですみません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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