本日の要約
結論:これからの高齢者政策は、介護だけでなく、独居・身寄りなし・住まい・移動・認知機能低下まで含めて地域全体で再設計する必要がある。
理由:高齢化が進む一方で支え手や財源が限られ、高齢者を一律に『支えられる側』とみなすだけでは現実に対応できなくなっているから。
何するか:今回は白書をもとに自治体の役割を整理し、次回以降は地域包括ケアシステムと江東区の現状・課題を具体的に掘り下げていく。
ブログへの訪問をありがとうございます!
昨夜は、パラオに関する講演会を聴きに行きました。
世界遺産の景観を持つパラオですが、実は日本ととても深いつながりがあるということもあり、2時間以上にわたる話を聴きながら、たくさんの学びをいただきました。
当時の先人による諸外国への対応が友好国として今に至っていることに感謝すると同時に、それを私たちはどのように次の世代に紡いでいくか、改めて考えていました。
そして、今日は今日とて、ケアマネジャー職能団体の小さな懇親会に参加します。
明後日は、区政報告会を行うため、飲みすぎないように・・・お酒はたしなむ程度(!?)に控えたいと思います。
さて、長かった事業説明も終わり、今日からは高齢者に関わる話になりますが、『地域包括ケアシステム構築に向けて江東区はどうしたらよいか』について書きます。
・・・というのも、今年度は、3年に1回つくられる当区の『地域包括ケア計画』をつくる年になります。
だからこそ、今一度、国が出している方向性を知り、江東区の現状をまとめ、その上で『じゃあ江東区はどうする?』『江東区の地域包括ケアシステムを構築するにあたって、課題や取り組み』というものを整理したいなと考えました。
もとい、『地域包括ケアシステム』って、最初は『住み慣れた地域(自宅)で暮らし続けるために地域を整備しましょう』という地域全体で取り組もうというふわっとしたものだったのですが、徐々に『高齢者も生涯現役でいられるための地域づくり』に変わってきており、さらには、ここ数年で『2040年代を見据えた地域づくり』に変わってきています。
それに伴い、自治体に求められる役割も変わってきているのですが、これ、本当に自治体がどこまで国の方向性を腑に落として取り組んでいるのか疑問に感じたため、今回改めて『今求められている姿』から江東区が取り組むべきことを俎上に載せたいと思ったのです。
とはいえ、これを考えるにあたっては、前段の『日本や高齢者の現状』や『それを踏まえて国の方向性』を確認する必要があります。
そのため、今回は第1回目ということもあり、思考の基本となる内閣府が出した『令和7年版高齢社会白書(全体版)』から、日本と高齢者の現状を踏まえたうえで自治体の行うべき役割を書き出してみます。
その上で、次回以降は、社会保障審議会資料から、地域包括ケアシステムを進める上で、自治体は何を行う必要があると書いてあるか、それを踏まえて江東区の現状と課題は何かを書いていきます。
※白書は、高齢化の現状・政府の対応・今後の施策をまとめた年次報告がまとめられており、現在の江東区の取り組みとの整合性を確認する上で大変参考になるものです。
そんなこんなで、今回からは専門色が強くなりますが、これからの地域福祉を考える上で大切な仕組みとなるため、改めて書きたいと思います。
では、行ってみよー☆
【高齢者の現状と自治体の役割り】
まずは、江東区の議論に入る前提として、国がどのような現状認識を持っているのかを確認します。
日本の65歳以上人口は、昭和25年には総人口の5%に満たなかったのですが、昭和45年に7%を超え、さらに、平成6年には14%を超えました。
高齢化率はその後も上昇を続け、令和6年10月1日現在、29.3%に達しています。
また、15~64歳人口は、平成7年に8,716万人でピークを迎え、その後減少に転じ、令和6年には7,373万人と、総人口の59.6%となっています。
将来推移も踏まえた図を掲載しますね。

・・・という状況を踏まえたうえで、まず令和7年版高齢社会白書(全体版)が何を示しているのかを確認します。
ここでは、私の意見ではなく、国の現状認識と政策の方向性を整理します。
高齢化は不可避、支える側は減少、財源は制約あることから、高齢者は『支えられる側』から『支え手にもなる高齢者』に変革する必要がある
白書の記述を私なりに一言でまとめると、『高齢化対応から社会全体の再設計』へ移行している、ということだと受け止めています。
その上で、私が特に重要だと感じたポイントは3つあります。
① 労働政策と福祉の統合(就労支援=社会保障政策)
② 地域政策の重要性(孤立・単身高齢者対策は自治体が主戦場)
③ 財政制約の前提化(給付拡大より『持続可能性』が優先)
ここからは、私見ではなく、白書と高齢社会対策大綱をもとに、自治体一般に求められる役割を整理します。
内閣府が示す自治体の役割については、高齢社会対策大綱にて『高齢者福祉を増やすだけでは足りず、就労、住まい、移動、見守り、認知症、デジタル、権利擁護まで含めて地域の生活基盤を再設計する必要がある』としています。
また、これを行うにあたっては、『支援が必要な人への給付だけでなく、支え手不足の中でどう地域を回すか』が中心課題となっています。
ここで私が特に重要だと感じたのは、自治体計画の軸を『年齢別施策から生活課題別施策へ』少しずつ組み替える必要性が示されている点です。
白書と新たな高齢社会対策大綱は、年齢にかかわらず活躍できる社会、一人暮らし高齢者の増加に対応する社会、身体・認知機能の変化に対応したきめ細かな社会システムを重視しています。自治体で言えば、65歳以上を一律に『支えられる側』とみなす発想ではなく、元気な高齢者の就労・地域参加と、要支援層への集中的支援を同時に設計する必要がある、ということです。
以下、詳細を書いていきますね。
①単身高齢者対策を福祉部門だけの仕事にしないこと
→まず白書では、65歳以上がいる世帯が全世帯の約半数に達し、一人暮らし高齢者が増えていることが示されています。
私はこの点を、自治体にとって福祉部門だけでは支えきれない生活基盤の問題が広がっているサインだと受け止めています。
そのため自治体実務では、介護保険や地域包括支援センターだけでなく、住宅、福祉、民生委員、社会福祉協議会、地域交通、病院、郵便・宅配・金融などとの横断連携が必要になります。
②介護需要の増加に対して、介護保険給付だけで持たせる発想は限界があるという示唆
→まず白書では、健康・福祉の柱の中で『持続可能な介護保険制度と介護サービスの充実』を明示しています。
私はこの点を、給付の拡大だけではなく、要介護化を遅らせる地域戦略まで含めて考えるべきだというメッセージだと受け止めています。
そのため自治体にとっては、給付費の抑制だけを先に置くのではなく、フレイル予防、通いの場、生活支援体制整備、短時間就労や社会参加による介護予防的効果を含めて、要介護化を遅らせる地域戦略が必要です。
言い換えるとすると、第9期介護保険事業計画の進行管理を、単なる給付管理ではなく、予防・生活支援・人材確保まで含む地域経営として扱う必要があるということが書かれています。
③高齢者就労を“福祉の外側の話”として扱わないこと
→白書では、65歳以上の労働力人口比率の上昇や、高齢期の就業を重視しており、自治体レベルでは、就業は税収や人手不足対策だけでなく、孤立防止、介護予防、生きがいづくり、生活困窮予防にもつながります。
私はこの点を、高齢者就労を単なる労働力確保ではなく、孤立防止や介護予防、生きがいづくりまで含む地域福祉の一部として位置づける必要がある、という示唆だと受け止めています。
そのため、シルバー人材センターの従来型業務だけでなく、短時間・短期・近隣・軽作業・地域貢献型のマッチング、庁内業務の切り出し、地域企業との連携を強化する価値があります。
個人的には、白書のトピックスにある『しごとコンビニ』のような小口就労の発想は、都市部自治体とも相性がよいと感じています。
④認知症施策を医療・介護の話に閉じず、まちづくりと窓口設計の問題として扱うこと
→白書では、認知症施策、情報アクセシビリティ、交通安全、消費者被害防止、成年後見制度の利用促進を並列で位置づけています。
私はこの点を、認知症施策を医療や介護の専門領域に閉じ込めず、行政手続、交通、消費者被害防止、地域見守りまで含めた生活基盤の課題として扱うべきだというメッセージだと受け止めています。
そのため、自治体にとって、認知機能の変化に応じた支援を、福祉相談、金融・契約トラブル、運転、公共交通、窓口対応、地域見守りまで一体で考えよ、というメッセージです。
政策的には、認知症基本法下の施策推進だけでなく、窓口書式の簡素化、本人確認・委任の運用見直し、地域での早期把握、権利擁護支援の入口整備が重要になります。
⑤住まいと移動を高齢者政策の中心に置くこと
→白書では、住生活の確保、高齢社会に適したまちづくり、バリアフリー化、交通安全を重点項目に入れています。
私はこの点を、高齢者が地域で暮らし続けられるかどうかは介護サービスの量だけでは決まらず、住まいと移動の条件そのものが生活継続性を左右する、という指摘だと受け止めています。
そのため、自治体では、独居高齢者が在宅継続できるかどうかは、介護サービス量だけでなく、段差、エレベーター、買物距離、通院交通、暑熱・災害リスクで決まります。
具体的には、住宅部局・都市整備部局・交通部局を含めて、福祉計画と立地適正化、地域公共交通、住宅確保要配慮者支援をつなぐ必要があり、23区のような都市部でも、エリアによって『歩けるが階段が厳しい』『バス停はあるが病院動線が弱い』など課題が細分化するので、圏域単位の地図化が有効とされています。
⑥デジタル支援は『便利施策』ではなく、行政アクセス保障として扱う必要がある
→白書では、情報アクセシビリティの確保を掲げ、スマホ講座の事例も紹介しています。
私はこの点を、デジタル化を進めるほど支援の届かない人を生みやすくなる以上、デジタル支援は利便性向上策ではなく行政サービスへの到達を保障する基盤として考えるべきだ、という示唆だと受け止めています。
そのため、自治体実務では、オンライン申請や情報配信を進めるほど、使えない住民を置き去りにしやすくなるため、スマホ教室を単発イベントで終わらせず、相談窓口、地域包括、図書館、公民館、携帯事業者、大学・NPOと組んだ官民連携で継続支援にすること、そして『デジタル利用を促進する施策』と『アナログでも確実に届く代替手段』をセットにすることが重要になります。
⑦身寄りのない高齢者への対応は、今後の自治体の基幹課題
白書では、身寄りのない高齢者への支援を独立項目で掲げており、現場では、入院・入所時の保証、緊急連絡先、金銭管理、意思決定支援、死後対応などとして現れます。
私はこの点を、身寄りのなさを例外的な個別事案としてではなく、都市部では今後さらに拡大する前提条件として捉え、自治体が標準的な支援体制を整える必要があるというメッセージだと受け止めています。
そのため自治体としては、地域包括支援センター任せでは回らないため、福祉、医療、居住支援法人、社協、権利擁護センター、法律専門職など多職種をつなぐ地域ルールが要ります。
特に都市部では親族関係が希薄なケースが多く、個別支援の属人的対応から、標準的な支援フローへの移行が必要です。
⑧財政面では『高齢者向け個別施策の上乗せ』より、既存施策の高齢化対応化のほうが持続的
→白書全体では、全世代型社会保障とユニバーサル社会の構築を基調にしています。
私はこの点を、高齢者施策だけを別枠で積み増すよりも、既存の行政施策そのものを高齢社会に対応した仕様へ組み替える方が、財政面でも運営面でも持続可能だという方向性だと受け止めています。
そのため、自治体でこれを翻訳すると、新規の単独事業を増やすだけでなく、既存の防災、交通、住宅、窓口、就労、地域コミュニティ施策を高齢化対応に作り替える方が筋が良い、ということです。
つまり『高齢者施策を福祉部局に積み増す』のではなく、『全庁施策を高齢社会仕様にする』ことが財政的にも運営的にも重要ということで、私はこの考え方に賛同します。
【まとめ:論点化してみる】
以上が白書と大綱から読み取れる自治体一般の方向性ですが、ここからは、その整理を踏まえて江東区で考えたときの主要論点を私なりに絞り込みます。
令和6年度と比べると、令和7年度の新しい政策の方向性は、年齢に関係なく活躍できる社会、多世代共生社会、身体・認知機能の変化に対応した制度というように、『高齢者対策から社会構造改変されている』部分が特徴です。
その上で、より強化されるポイントとして、介護・医療の持続可能性、地域での支え合い、高齢者の就労促進、孤独・孤立対策、デジタル活用というように、『制度維持と社会参加の両立』が軸となります。
白書の重点領域を踏まえ江東区で論点化するならこんな感じでしょうか。
1. 単身高齢者の増加に対し、自治体は生活支援の司令塔を持てているか
2. 介護保険の持続性確保を、予防・就労・社会参加・住まいと接続できているか
3. 認知機能低下や身寄りのなさを前提に、窓口・契約・移動・権利擁護の制度運用を見直しているか
普通なら介護保険の持続可能性を一番に挙げるところかもしれませんが、そもそも介護保険を利用する人は高齢者の2割しかいない現状を踏まえると、私は人口の多い江東区が一番に取り組むべきは単身高齢者対策だと考えています。
【江東区の場合の優先順位は?】
さらにその論点を踏まえ、江東区の地域特性と現在の取組を踏まえて優先順位づけしてみます。
ここからは、白書や大綱の一般論をそのままなぞるのではなく、江東区の地域特性に引きつけて、私なりの優先順位を整理します。
以下、私なりの優先順位とコメントを書いてみますね。
①単身高齢者対策
私が江東区でこれを最優先に置く理由は、単身世帯が多く、今後さらに高齢単身の増加が生活課題として表面化しやすいと考えるからです。
見守り、緊急連絡、入退院、買物、死後対応まで連鎖します。
白書も『一人暮らし高齢者の増加』を大きな課題に置いています。
②身寄りのない高齢者への対応
都市部では親族支援を前提にしにくく、入院・入所・保証・金銭管理・死後事務で詰まりやすいです。
白書でも独立項目です。
③住まいと移動
一般論としては大都市でも重要度の高い分野ですが、江東区ではすでにAIデマンド交通やクーリングシェルターなど一定の先行的取組が見られるため、現時点では相対的に優先順位を一段下げて整理しています。
④認知症施策+権利擁護+窓口設計
認知症そのものだけでなく、契約、消費者被害、交通、安全、行政手続まで影響が広いです(区役所実務に直結)。
⑤介護需要増への対応(予防含む)
重要度は高いですが、江東区(というより大都市圏)では単に給付を増やすより、上の1〜4を整えた方が介護需要の悪化を抑えやすいと捉えた方が筋が良いと思っています(白書も介護の持続可能性を重視しており整合性はある)。
⑥デジタル支援を行政アクセス保障として整備
江東区はデジタル化を進める一方、スマホ教室など高齢者もデジタルに対応できるようサポート体制を取っていること、また、粗大ごみキャッシュレス化などもそうですが、従来の窓口代替とセットで進めているため、優先順位は低いです。
⑦高齢者就労・社会参加
かなり大事ですが、江東区ではまず生活維持の基盤を整えたうえで広げる順番だと思います。
また、孤立防止や介護予防の効果は大きいですが、空気などで強制するのではなく高齢者自身が主体的に参加できる環境整備が重要だと感じています。
⑧全庁施策の高齢社会仕様化
本当は横串で最重要級ですが、実務の着手順としては抽象度が高いので、1〜7を回しながら制度化する位置づけに置きます(というか、これの優先順位を上げると、他が全く手つかずになると考えています)。
※白書の『全世代型』『ユニバーサル社会』とは整合します。
【おわりに】
いやぁ、今回はしょっぱなから6,500字を超えるという大惨事を巻き起こしていまいました(白書、好きなんですよねぇ)。
昨夜から資料を読み込み、今朝は今朝とて6時前から白書を整理しながらブログを書きだし、6時間以上かかって仕上げました(完全に過集中ですね)。
高齢者介護や福祉関係に詳しくない方でも、江東区が今後、どの部分に力を入れていけばよいかわかるよう整理したつもりですが、わかりにくかったらごめんなさい。
次回は、社会保障審査会資料を読み込むため、もっとオタク内容になってしまうと思いますが、頑張ってついてきてくれる方が一人でもいてくれると嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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