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前回に引き続き違いを考えるということについて書こうと思っていますが、今回は「公平」と「平等」について考えます。
この公平と平等については、私自身、区政に関わる中でどちらに重きを置いて考えたらよいか、都度意識しながら活動をしていますが、改めて整理しながら自身の思考を振り返り考えていきたいと思います(本当にこれについては未だに答えが出ないくらい悩むことが多いです)。
また、前回同様今回も区政報告ではないため、興味のある方にご笑読いただけたら幸いです。
では、行ってみよー(てか、このブログ自体が私の健忘録になりつつあるなぁ)♪
【まずは定義から】
またしても定義から始まります。
公平:個々の状況や必要性を考慮し、最も適切な方法で扱うことを指す(全員が適切な支援を受けられるよう調整すること、結果平等)。
➤例えば、学校で学習に遅れている生徒には補習を提供し、進んでいる生徒には追加の教材を与える、など。
平等:すべての人を同じ基準で扱い、同じ機会や資源を提供することを指す(機会平等)。
➤例えば、学校で全員に同じ教材を配る、など。
このように、平等が「同じものを提供する」ことに重点を置くのに対し、公平は「必要に応じて異なるものを提供する」ことを求めるわけです。
さらに、この公平と平等について踏まえる事実として重要だと感じているのは、『そもそもの能力に差がある場合、平等と公平は両立しない』ということです。
ここを理解しないで物事を考えると、ごちゃごちゃになってしまいます。
尊敬する作家のひとりである橘玲氏はこれを50m競走で説明していますが、とても分かりやすいので引用します。
「公平」とは、子どもたちが全員同じスタートラインに立ち、同時に走り始めることです。しかし足の速さには違いがあるので、順位がついて結果は「平等」になりません。
それに対して、足の遅い子どもを前から、速い子どもを後ろからスタートさせて全員が同時にゴールすれば結果は「平等」になりますが、「公平」ではなくなります。
ここからわかるように、能力(足の速さ)に差がある場合、「公平」と「平等」は原理的に両立しません。
このようなとき、5歳の子どもであっても、(足の速い子が1等になる)不平等を容認するのに対し、(足の遅い子が優遇される)不公平は「ずるい」と感じることがわかっています。人が理不尽だと思うのは「不平等」ではなく「不公平」なのです。
このように、「公平」と「平等」は一見似ている概念ですが、その意味や実現方法が異なるため、両立するかどうかは文脈や状況によります。
そのため、大切なことは、各課題に対しての解決を考える際、公平と平等の優先順位を考え最適解を模索することだと私は考えています。
公平と平等は完全に一致することは難しいですが、適切に設計された制度や仕組みによって、互いを補完しながら実現することが可能です。
だからこそ、そのためにはどの場面でどちらを優先すべきかを慎重に考えることが重要なのではないかなぁと感じるのです。
【公平平等の両立の難しさについて】
続いて、公平と平等のあいだで現実社会で悩ましさを感じている事例について、具体的に挙げてみます。
1. 医療の現場
状況: 限られた医療資源
公平: 病状の重さや治療の緊急度に応じてリソースを配分する。
➤問題: 軽症患者が「自分は平等に扱われていない」と感じる可能性がある。
平等: 全ての患者に同じ治療時間や設備を提供する。
➤問題: 軽症患者には過剰な対応となり、重症患者には不十分な治療になる可能性がある。
例:ICU(集中治療室)のベッドが10床しかない場合、重症患者を優先すること(公平)は合理的だが、軽症患者にとっては「平等な対応ではない」と感じられることがある。
2. 教育の現場
状況: 学校の補助プログラム
公平: 学力に応じたクラス分けや特別支援を提供する。
➤問題: 支援を受けた生徒は感謝する一方、支援を必要としない生徒やその親が「平等ではない」と感じる可能性がある。
平等: すべての生徒に同じ授業内容、教材、サポートを提供する。
➤問題: 学力差や家庭環境の違いを考慮できず、一部の生徒がついていけない、または退屈するといった結果になる。
例:経済的に厳しい家庭の生徒に奨学金を提供するのは公平だが、裕福な家庭から「自分たちは税金を払っているのに利益を享受できない」といった不満が出る可能性がある。
3. 公共のインフラ
状況: バリアフリーの設計
公平: 車椅子用のスロープや専用エレベーターを設置する。
➤問題: 健常者が「自分たちのためのリソースが減っている」と不満に感じる可能性がある。
平等: 全ての人に同じ歩道やエレベーターを提供する。
➤問題: 身体に障害のある人や高齢者にとっては、利用が困難な場合がある。
例:電車の座席で「優先席」を設けるのは公平だが、一部の人は「平等に全員が座る権利を持つべき」と考える場合がある。
4. 災害時の支援
状況: 被災者への援助
公平: 被害の大きさに応じて支援内容を変える。
➤問題: 軽度の被害者が「自分たちは軽視されている」と感じる場合がある。
平等: 全ての被災者に同じ支援物資を配布する。
➤問題: 既に蓄えのある家庭や、被害が比較的小さい家庭には過剰な支援となる一方、大規模な被害を受けた家庭には不足する。
例:全壊した家屋の家庭には補助金を多く支給し、一部損壊の家庭には少額の補助を行う場合、後者の家庭が不満を抱くことがある。
5. 経済政策
状況: 所得税の設定
公平: 所得に応じて税率を変える累進課税を採用する。
➤問題: 高所得者が「自分だけ多く払っているのは不平等」と感じる可能性がある。
平等: 全ての人に一律の税率を適用する(例えば10%)。
➤問題: 低所得者にとっては負担が大きくなり、生活を圧迫する。
このように、公平と平等の両立は、「何が正しいか」という基準が状況や視点によって変わることで生じます(立場によって変わるため難しい)。
平等は「同じ扱い」を重視し、公平は「個々の状況に合わせた扱い」を重視しますが、どちらを優先するかは、その場の目的や価値観、さらには社会的な合意に依存しますと言われますが、それぞれがそれぞれの立場で主張するから、なかなかどうして難しいと感じています。
【解決を模索する】
じゃあどうすればよいのかということについて、私は『原則平等、その上で公平』を原則として考えるようにしています。
具体的に、行政の大きな役割の一つである『資源の配分』について考えてみます。
例: 資源の配分
平等: 全員に同じ量の資源を分け与える。
公平: 必要な人に多くの資源を提供し、必要の少ない人には少なくする。
この場合、もし全員に同じ量を与えると、一部の人は不十分と感じ、一部の人は余剰を持つ可能性がありますが、両立させるためには以下のような工夫が必要。
1. 基本的な平等を確保: 全員に最低限必要な権利や機会を保障する(例えば、義務教育や医療サービスの提供)
2. 公平な支援を追加: 個々の状況に応じた支援を行う(例えば、障害を持つ人に特別な設備や支援を提供する)
このことからわかるように、できるだけ三方よしの状況にするには、まず基本的平等を確保した上で、公平な支援を追加することが大切ということです。
教育の場面だったら、全員に義務教育(平等)を提供しつつ、学習に遅れた生徒には特別な支援(公平)を行う。
福祉の場面だったら全員が生活保護を申請できる仕組み(平等)を作りながら、困窮度に応じて支援額を変える(公平)。
平等を担保した上で公平に配分する。
これが、区政を運営する上でとても大切な視点だと私は感じていますが、皆さまはいかがでしょうか?
本当は、ダラダラと書いた公平と平等の理解を踏まえて、区政を進める上ではどのように考えればよいかについて書こうと思ったのですが、既に3,000字を軽く超えてしまっているので、次回書きたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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