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先日、12月2日に江東区版パートナーシップ条例の検討に伴い、企画総務委員会で賛成派慎重派の方から意見を伺いました。
私は傍聴していたのですが、両者の意見を聴きとても勉強になりました。
今回は長くなるため先に結論を書きますが、現時点で私は慎重派です。
この分野においてはまだ不勉強であり結論を決めかねるということもありますが、私の周りにいるLGB(Tの知り合いはいません)の当事者から条例制定の希望を聞いたことがないため、本当に当事者や江東区にとって良い制度であるかがわからなかったからです。
また、先日の両社意見は大変参考になったものの、どちらも横の軸(現状の賛否)でしか語られていなかったため、今回、改めて『結婚(婚姻)制度』なるものの縦軸(時間軸)を学び、考えたいと思いました。
そんなわけで、今回は、パートナーシップ条例・ファミリーシップ条例について整理しながら考えたいと思います。
そうそう、事前に今一度、パートナーシップとファミリーシップについての定義を書きます。
パートナーシップ:お二人またはいずれかの方が、LGBTQであって、お互いをその人生のパートナーとして、生活を共にし、または共にすることを約した二人の関係
ファミリーシップ:パートナーシップにある方とパートナーシップにある方のお子様や親御様の家族としての関係
世田谷区HPより
では、行ってみよーーー(今回はたぶん恐ろしく長くなります)。
【結婚の歴史について(縦軸)】
どんな制度や概念も時代とともにそのあり方も変わる。
これは当然と言えば当然のことですが、今一度、横軸(現状)の主張を知るだけではなく、縦軸(歴史)を知り、これからの最善を考えたいと思います。
※今回、改めて婚姻制度を勉強するにあたり参考にしたのはこちらです。
結婚の概念は、人類が農耕社会に移行する頃から徐々に形成されていったと考えられています。
ずいぶんと遡ったものだと思われる方もおられるかもしれませんが、歴史とはそんなもの(起源に遡るもの)ですのでお付き合いいただけたらと思います。
定住生活が始まり、財産や子孫の継承が重要になるにつれ、結婚はより公式な制度として確立されていきました。
また、古代社会での結婚は、現代とは大きく異なる形態をしていましたが、多くの場合、結婚は個人の意思よりも、家族や社会の利益を優先して決められており、この背景には、厳しい自然環境下で家族の生存を確保するという目的がありました。
その後、中世から近代にかけて、結婚の形態や意味は大きく変化しました。
中世ヨーロッパでは、一夫一婦制が標準となっていきました(しかし、貴族階級では依然として政略結婚が一般的でした)。
近代に入ると、産業革命や啓蒙思想の影響で、個人の自由や権利が重視されるようになり、恋愛結婚の概念が広まっていきました。
19世紀後半には、女性の権利拡大運動も起こり、結婚における男女の平等が少しずつ実現していきました。
20世紀に入ると、結婚は個人の選択と愛情に基づくものという考え方が主流になりました。
この変化は、社会構造の変化や個人主義の台頭と密接に関連しています。
ずいぶんと昔に遡りましたが、結婚というものは古代からあったとされており、時代とともに『(古代)家族や社会の利益→(中世)一夫一婦制普及→(近代)個人の自由や権利が重視され恋愛の概念広まる→(19世紀後半)結婚における男女平等が少しずつ実現→(20世紀)結婚は個人の選択と自由に基づくもの』と変わってきたわけですね。
以上、結婚を概念という視点からとらえ、文化や価値観の変遷を改めて記させていただきました。
【日本でみた結婚の歴史】
昔の結婚には、いくつかの主要な目的がありました。
子孫の繁栄:家系を継ぐ後継者を産むこと
経済的安定:労働力の確保や財産の統合
政治的同盟:家族間や国家間の結びつきを強化
社会的地位の向上:より高い身分の相手との結婚による社会的上昇
宗教的義務:一部の文化では、結婚が宗教的な義務とされた
また、この頃は家族の利益を最大化し、社会の安定を保つため、結婚相手は親や長老が決めることが一般的でした。
日本も、個人の幸せよりも家族や社会の利益を優先するものだったのですね。
結婚は、単に二人の結びつきを超えた、重要な社会制度としての役割を果たしており、その主な役割は以下のとおりです。
社会の基本単位の形成:家族という最小単位を作り出す
人口の維持と管理:社会の持続可能性を確保する
財産の管理と継承:世代間の財産移転を円滑に行う
社会規範の維持:道徳や倫理観を次世代に伝える
社会的ネットワークの形成:異なる家族や集団を結びつける
このように、結婚制度は、社会の安定と発展に不可欠な要素として機能してきたのです。
社会の安定と発展のために、法律や宗教・文化的慣習などがこの制度を支えており、それにより、社会全体の秩序が保たれ、個人の権利や義務が明確化されてきたのですね。
これを踏まえ、日本の婚姻制度を成立させたのは1898(明治31)年に公布された明治民法です。
その目的について、国は2021年10月東京地裁の同性婚訴訟に提出した書面で、婚姻制度の目的を「男性と女性が子を産み育てながら共同生活を送る関係に対し、特に法的保護を与えること」(自然生殖可能性のある関係性の法的保護)と説明しています。
このことが時代と合わないだけではなく、社会の差別や偏見を助長すると闘っているのがここ数年で起きている諸々の裁判です(これを書き出すと恐ろしく長くなるため割愛しますが、興味のある方はこちらをお読みください)。
これは表現がかなり燃えたことを記憶しています。
仕事上高齢者と接する機会が多く彼らの価値観が刷り込まれているせいか、結婚(婚姻制度)というものは『社会制度を利用するための契約』だという認識があり、いわゆる一般的な惚れた腫れたで結婚したわけではない私は、当時、なぜこんなに炎上しているのかよくわかりませんでしたが、『人権(差別)』というセンシティブな状況下での発言だったため、言葉だけが切り取られ独り歩きし炎上したのだということがわかります。
【結婚に対しての私の意見】
サイトにも書かれていましたが、私は、時代が変わっても結婚というものが社会を構成する基本単位としての重要性は今も変わらないと思います。
ここが、私がパートナーシップ条例に慎重になり安易に『多様性を認めようよ』とは言えない理由です。
共生社会を目指してはいますが、私の掲げる共生社会とは、ルールで縛ったり権利を主張したりするものではなく、『お互いがお互いを慮れる社会』を指しています。
これをまとめながら、多様性を尊重したいと願う私が、なぜパートナーシップ条例に慎重になっているのかがわかりました。
また、私は、自由というものは秩序の中で活かすものという考えがあります。
結婚の歴史や目的を理解した上で自由に制度を活かすことと、歴史や制度の目的を度外視して自分の想いを主張するのは違います。
『現行制度に不具合を感じている人がいるのだから、制度を変えろ』は乱暴です。
私は制度に不具合を感じる人がいるのならば、その人が不具合を感じなくなるにはどうすればよいかを考え支援する必要はあると考えており、この場合の支援は個人や団体が対応することが妥当だと考えています。
その上で、その不具合を感じている人の割合が一定数を超えた時に制度を見直すのが行政の行うことであり、54万人のうち数十人が感じている不具合を解消するために条例を制定するのは、時期尚早だと思うのですよね。
今回のパートナーシップ条例は、いわゆる『結婚』の概念を大きく変える可能性を秘めているからこそ、そして不具合を感じている人が一定数にも満たない状況だから、私は慎重になっています。
あ、ここで言う一定数とはいわゆるキャズム理論のキャズム(16%)のことを指します。
そんなわけで、次はその現状について…パートナーシップ条例を制定した自治体の状況を書きます。
※以降の情報ソースはこちらになります(この情報は2020年頃時点のものになります)。
【条例施行自治体の現状】
地方自治体のパートナーシップ制度登録自治体数は下の図の状況となっています(認定NPO法人 虹色ダイバーシティより)。
単純計算すると、1自治体16組が交付を受けている計算になります。
この数が多いか少ないかの判断は個々で違うでしょうが、一覧をみる限りは大半の自治体が0、もしくは一桁の交付でした。
そこで、先駆的に取り組んだ渋谷区で人口に対しての割合を調べてみます。
平成27年(2015年)に全国に先駆けて開始したパートナーシップ制度を制定した渋谷区が調査を行っていたため確認すると、このように出ていました。
施行より9年が経っている渋谷区は79件となっており、渋谷区の2024年6月1日時点の18歳以上の人口384,326名に対して0.04%です(計算が大変なため世田谷区は割愛します)。
全人口のLGBTの割合は5%と言われていますが(肌感覚ですが実態はもう少し多い感があります)、渋谷区の対象人口の5%は19,216人だとすると0.8%です。
ちなみに、江東区は現在条例審議中ですが、東京都は2022年に『東京都パートナーシップ宣誓制度』を設けており、江東区の交付は50組程度と聞いています。
ここでは感情を除いてデータのみ記載しましたが、数字を多いと捉えるか少ないと捉えるかは人によって違うと思います。
皆さまはどう捉えたでしょうか?
最後に、ChatGPTにパートナーシップのメリット/デメリットを聞いたので、その回答を書きます。
パートナーシップ条例は、同性カップルや事実婚カップルなど、法律上の結婚が認められていない人々の関係性を自治体が公的に認める制度です。そのメリットとデメリットを以下にまとめます。
【メリット】
1. 社会的な承認の向上
• 法的な婚姻関係ではないカップルの関係性が自治体に認められることで、周囲からの理解や受容が進みやすくなります。
2. 生活上の利便性の向上
• 病院での面会や家族としての意思決定(手術同意など)、公営住宅への入居など、家族と同等の扱いを受けられるケースが増加します。
3. 差別や偏見の緩和
• パートナーシップ制度が普及することで、LGBTQ+の人々に対する差別や偏見を軽減し、多様な価値観を尊重する社会を推進します。
4. 心理的な安心感
• 公的に認められることで、カップル自身にとっての精神的な安定感や安心感を得ることができます。
5. 制度普及の波及効果
• パートナーシップ条例が全国的に広がることで、将来的に法制度への影響を与える可能性があります(例: 同性婚の合法化)。
【デメリット】
1. 法的拘束力の欠如
• パートナーシップ制度には法的効力がなく、財産分与や相続権など、法律上の結婚で得られる権利は保障されません。
2. 地域差による不平等
• 制度は自治体ごとに運用されているため、対応する地域としない地域で格差が生じます。一部自治体でしか利用できない場合もあります。
3. 社会的認知の限界
• 一部の人々や企業では、パートナーシップ証明書を認めない場合があり、実効性が十分でないことがあります。
4. 利用条件の制約
• 条例によっては利用条件が限定的で、同性カップルや事実婚カップル以外の多様な家族形態が含まれない場合があります。
5. 象徴的な意味にとどまる可能性
• 制度の目的が「関係性の象徴的承認」にとどまり、実質的な法的支援や保障が伴わない場合、期待された効果が十分に得られないことがあります。
【補足】
パートナーシップ条例は、自治体による制度であり、法的な婚姻制度の補完には限界があります。ただし、地域社会や国全体での意識改革や法制度改革に向けた第一歩として重要な役割を果たしていると評価されています。
【現時点での最終結論】
縦軸(時間軸)と横軸(現状軸)を書きながら、わかったことは『生きづらさを抱えている人の生きづらさを解消したい』という想いは同じであることがわかりました。
一方で、違う部分は手段であり、賛成派の方は『制度を整備することで社会に認知を促したい』という想いであり、慎重派の方は『社会の認知を高めてから制度を整備する』という想いであることがわかりました。
この違いは大きく、委員会や賛成派の方々の話を聴きながら、介護の現場にいる際に感じた、障がい者支援を通じて社会の理解が追いついていない中で制度を進める弊害が今回に重なり、まずは、社会に理解を求めることを先にした方が、本当の意味で当事者が有益となる制度制定に結びつかないのではないかと感じました。
どのような形であれ、人権を無視した批判はすべきでない。
一方で、自らの主張を通すために誰かの権利を奪うことも良くないと思っています。
ましてや、今回の条例については当事者というより周囲が主張している感が強く、賛成派の方々の主張を聞くたびに「これは本当に、当事者や江東区のためを思っての主張なのだろうか?」という疑問が私の中で生じています。
条例は創ることに意義があるわけではありません。
実行されることに意義があり、その実行を円滑に行うためには、まずは区民の方々に「生きづらさを抱えている人へ寄り添う大切さ」や「安易な他者への批判はダメ」という認識を広げること、そして何よりLGBTと彼らが抱えている弊害を周知することが、何よりも大切なのではないかと思います。
そんなわけで、長々と書きましたが、現時点でパートナーシップに対して私は『まずは区民の方々に丁寧に説明し条例の必要性を理解してただく』ことから始めようと思うと同時に、現時点での結論に拘らず理解を深めると同時に、どうしたら落としどころをつけられるのかについて学ぼうと思いました。
皆さまはどう感じたでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
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