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今回は、代表質問の大綱2点目である、『介護現場の働きやすい環境づくり』の質疑をご報告いたします。
深刻な介護人材不足に対して、江東区は6月の補正予算で介護事業者に対し人材確保にかかった費用の一部(上限20万円)を助成することを決めました。
私は、介護の人材不足に対する緩和の方法としては、人材確保と働きやすい環境整備の両輪で行うことが大切だと感じています(この辺りについては、こちらで書いています)。
その意味でも、今回はさらなる介護業界の改善に向けて、現場の事務作業効率化に対する質問を行いました。
では、行ってみよーーー!!!
【質問】
続いて、大綱2点目『高齢者介護現場の働きやすい環境づくり』としてDX推進の視点から質問いたします。
先月、江東区主任ケアマネジャー協議会が、区内で働くケアマネジャーを対象に事務作業に係る現況調査を行いました。
区内在籍半数以上の201名のケアマネジャーから回答を受けた為、この結果を基に質問をいたします。
まず、他事業所と情報のやり取りの手段をきいたところ、97.5%が『FAX』と回答しており、次いで37.3%が『手渡し』となりました。
これは、得た情報を書類に起こし印刷し、さらにFAXや訪問という形で1件1件送付するという手間とコストが生じている現状がわかります。
具体的な負担について、例えば、ケアマネジャー1人の給付管理(いわゆるレセプト)における事務作業として、毎月の予定を利用者1名につき平均4事業所に送付することを想定した場合、枚数にすると600枚前後の印刷とFAX代を要します。
また、FAXで送付する場合は鏡文書も必要となるため更なる負担が現場ではかかっていますが、これらはFAXのためだけに印刷するため、送付した後は破棄している現状があります。
このように、ケアマネジャー1人につき破棄を前提として600枚前後の印刷と送付を行うことは、大変非効率的であるため、改善が必要であると感じています。
ほか、情報の保管については、81%が『紙と電子データの両方』としていますが、その保管方法に関する問題点や負担について質問したところ、78.1%が『紙で保管する場合、保管場所の確保が困難』と回答、次いで64.2%が『紙で保管する場合、閲覧や廃棄を効率的に行う管理方法や廃棄費用に苦慮している』という回答となっており、紙媒体での書類保管が現場にとって負担となっていることがよくわかります。
DXを推進する江東区ですが、人材確保にあえぐ区内介護事業所では、アナログ作業が業務を圧迫しているのが現状です。
この状況に対し、厚生労働省の取組みの一つとして、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所がオンラインで書類等をやりとりすることのできる共通の情報連携基盤である『ケアプランデータ連携システム』が昨年4月20日より開始されました。
これは、給付管理(レセプト)にかかる作業をICT化することで、FAXや郵送の手間やコストを抑えるだけではなく、入力ミスを防いだり、書類管理の簡素化につながるシステムです。
このシステムに関して、江東区では、437事業中14事業しか導入していません。理由をさまざまな事業所に確認したところ、システムの利便性は理解しているものの、『他の事業所が導入していないため、自分の事業所だけ導入しても、うまく活用できないと思うから導入していない』という声が大半でした。
また、現場ケアマネジャーのICTに対する意識としては、『事業所との連携や書類のやり取りについてICT活用が業務負担軽減につながると思いますか』という質問では、69.7%が『大いにつながると思う/少しはつながると思う』という回答があり、『負担が増える恐れがある』の13.9%に比べてICT活用推進に期待している人が多いという現状があります。
これらの結果から、ICT推進に向けて、現場は必要性を感じており、同時に、行政や事業者団体等の旗振り役が必要であることがわかります。
他、ケアマネジャーに『江東区に期待すること』を聞いたところ、『現場の声を聴いて欲しい』『業務効率化について一緒に考えてほしい』などが挙がりました。
特に、具体的な改善を挙げている意見では、他区と比較し『介護認定結果の事務効率化について、なぜ江東区では対応していないのか?』といった声も少なくありませんでした。
以上を踏まえ、3点質問いたします。
一点目は、介護現場の働きやすい環境づくりの一環としてのDX推進について、各事業所に委ねるだけではなく、行政からの支援も必要だと感じますが、区の見解を伺います。
そして、2点目ですが、ICT推進に向け、厚生労働省が推奨している『ケアプランデータ連携システム』の導入について、区の見解を伺います。
最後に、江東区の高齢者や家族が安心して介護を受ける環境を維持するため、江東区の介護人材確保の視点で、DX推進を含む『江東区版働きやすい環境づくり』が早急に必要であり、働く職員一人ひとりの声や提案に丁寧に向き合い対応する体制づくりが必要と考えます。
そのため、今後、現場の声を吸い上げ改善していく仕組みを構築する意向があるのか、意向があるとすれば、具体的にどのような進め方を考えているのか、区の見解を伺います。
今までは、行政と現場がそれぞれ工夫しながら当区の高齢者介護を進めていましたが、これを機会に双方向で意見をすり合わせながら事務作業効率化に取り組んでいただき、空いた時間で、よりきめ細やかな高齢者介護の提供がなされることを強く願い、次の質問に移ります。
【答弁】
次に、介護現場の働きやすい環境づくりについてのご質問にお答えいたします。
まず、介護現場の働きやすい環境づくりとしてのDX推進についてでありますが、後期高齢者の増加や利用者ニーズの多様化など、介護サービスへの期待が高まる一方で、介護人材不足の深刻さを増しているところです。
こうした状況において、デジタルツールを用いた生産性向上と、これにより業務の変革を図る介護のDXは、介護サービスに関する様々な課題を解決するための有効な手段のひとつであると認識しております。
一方で、現状に目を向けますと、令和3年のそうむしょう産業別調査では、医療・介護福祉業界が最もDXを推進できていないという結果が報告されたほか、現場からは、どのようなツールを導入すればよいかわからない、デジタルツールに関する知識を有する人材が不足している、といった声も聞かれているところです。
今後の介護現場におけるDX推進につきましては、費用負担の軽減や介護DX人材の育成など、多角的な取り組みが求められておりますが、現時点では国や都が実施するICT機器導入にかかる補助事業の周知や、事業者へのヒアリングを行う中で課題を抽出するとともに、行政の支援のあり方についても検討してまいります。
次に、事務作業効率化に伴うシステム導入についてでありますが、ケアプランデータ連携システムは、介護事業所の文書作成に要する負担軽減を目的とし、厚生労働省の調査研究事業を経て、介護保険の審査や支払い等を行う国民健康保険中央会が、令和5年度から新たに運用を開始したシステムで、事業所ごとに年間21,000円のライセンス料を支払うことで利用できます。
このシステムは、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所とのケアプランのやり取りがオンラインで完結できることから、紙媒体の出力、送付、保管等の手間が省けるなど業務の効率化が期待できます。
一方で、費用負担や捜査への慣れが必要なほか、連携する双方の事業者がシステムを導入していない場合、紙媒体とデータを使い分ける手間が生じるなど、課題も少なくありません。
導入につきましては、課題の改善やシステムのメリットを享受するため、より多くの事業者が参画する必要があります。
区といたしましては、導入事例の調査や事業者団体を通じた意見交換を行うなど、導入支援の在り方を慎重に検討してまいります。
次に、現場とともに進める働きやすい環境構築についてでありますが、介護職場の環境改善と人材確保のためには、現場で働く職員の声や、介護職場が直面している現状をしっかり把握することが不可欠であると認識しております。
こうしたことから、区ではこれまでも、介護事業者団体との定期的な意見交換の場でもある『介護保険運営協議会』を実施するほか、専用サイトを通じたアンケート調査などを行ってまいりました。
今後の具体的な取組みや進め方につきましては、研究課題とさせていただきますが、これまで築き上げてきた区内事業者との信頼関係と意思疎通が一層向上するよう、努めてまいります。
お読みいただくと、一見後ろ向きな答弁に読めなくもありませんが、課長曰く『これは前向きな答弁だよ』とのことです。
高齢者介護の質(全体のボトムアップ)を図るには、まずは、現場職員の過度な負担を軽減し、対人援助時間を拡大することから始まると私は考えています。
高齢者の介護職能団体(介護事業者連絡会)は政治的な関わりを持つことに消極的なため高齢者介護全体の要望は出せませんが、少なくともケアマネジャーにおいては、江東区主任ケアマネジャー協議会や介護事業者連絡会ケアマネ部会がヒアリングや調査にご協力いただいているため、ここで質問したから終わり…ではなく、ここを改めてのスタートとして現場と行政がタッグを組んで介護現場の事務作業効率化に取り組み、『江東区って働きやすい地域だよね』と言っていただけるよう、そして、働く職員さんが活き活きと仕事に就けるよう、引き続き取り組んでまいります(とりあえず、来月末か再来月初旬に、江東区主任ケアマネジャー協議会と介護事業者連絡会ケアマネ部会で行政と意見交換を行う予定を組んでおり、そのために事前調整に奔走しています)。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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