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今回は、令和6年度当初予算案最後の質問である、土木費についてご報告いたします。
『住まい』の課題に対する事業
介護畑の私が土木費というと違和感を持つ方もおられるかもしれませんが、地価高騰やおひとり様が増えている状況で、お部屋探しサポート事業というのは、実は福祉分野と密接な関係があり、来年度は予算を拡充して取り組むという話を聞いたため、取り上げました。
区内の半数が賃貸住宅に住んでいる江東区では、地価高騰に伴う『住み慣れた地域で暮らし続けることの難しさ』は、喫緊の課題です。
とはいえ、家主さんや不動産店に“我慢しなさい”というのも変な話なわけで(個人的に民間企業に我慢を強いることは反対)、そのあたりを含めて、今回、なぜ江東区が住まいサポート事業を拡充したのか、今後、どの様な形で『住み慣れた地域での生活』を担保しようと考えているのかについて、やり取りをしています。
結論としては、行政担当所管だけで課題の解決を図ろうとするのではなく、関係機関の声を聞きながらどうしたら課題解決できるかすり合わせをすること、そして、関係機関に住まいの現状を知ってもらい相互理解を深めながら、地域全体で課題を考えることを要望しています。
お部屋探しサポート事業について
お部屋探しサポート事業についてお聞きします。
① この事業は、「住宅確保要配慮者の賃貸契約成約件数増加を図るため、家主謝礼金の増額及び不動産協力店への謝礼金を創設」とありますが、本事業の今年度の実績見込みと課題を教えてください。
➤まず、お部屋探しサポート事業の今年度の実績についてのお尋ねですが、現時点で20件以上成約となる見込みとなっており、令和4年度の15件より増加するものと考えております。
次に、お部屋探しサポート事業の抱えている課題についてですが、現在の区内賃貸住宅の家賃の相場が、借りたい人の家賃感覚と乖離があり、特に賃貸住宅の建替えに伴い転居を余儀なくされた高齢者世帯では、その認識の差が大きくなっています。また、孤独死に対する懸念は依然として大きく、更には管理を行う不動産店が第一発見者となっており、大きくはこの2点が課題となっていると考えております。
② 本事業を拡充することで、どの様な効果を期待しているか教えてください。
➤拡充による効果についてですが、まず、家賃の課題については、インターネットなどに掲載されている賃貸物件は、比較的築浅のものが多く、家賃も高めですが、地元の不動産店は、条件はあるものの手ごろな物件も別途確保している場合もあります。例えば、生活保護世帯の方の利用においても、実店舗での契約実績が上がっており、こうした物件の掘り起こしに期待をしているところです。また、孤独死については、孤独感を懸念される単身者を含む高齢者世帯は、長く住み続けてくれることが多いなど、家主にとってのメリットもあります。今回の拡充が、家主や協力不動産店にとって直接的なインセンティブとなることで、協力不動産店が持つ豊富な情報の提供や、高齢者単身世帯への紹介のハードルを下げることにつながるものと期待しております。
③ 仰るとおり、家主が賃貸契約を渋る大きな原因の一つとして、孤独死の課題があるかと思います。東京都監察医務院で取り扱った自宅住居で亡くなった単身世帯の統計によると、本区の死後経過時間で一番多いのは2~3日となっており、次いで4~7日となっております。また、2022年11月に出された日本少額短期保険協会孤独死対策委員会の資料では、『賃貸住宅で孤独死が発生するとその原状復旧費用のために、多大なコストと時間がかかり、これが家主の「高齢者貸し渋り」意識につながっている』と分析されています。特に江東区の場合は貸し手市場なため、家主はリスクの高い高齢者など住宅確保要配慮者と賃貸契約を結ばなくとも、借り手には困らない状況だと聞いております。だからこそ、謝礼金を増額することも意味のある取り組みだとは思いますが、根本的な課題に対する取り組みも重要だと感じております。本区の見解をお聞かせください。
➤民間賃貸住宅における孤独死を防ぐ抜本的な取り組みについてですが、本区では現在、お部屋探しサポート利用者に、江東安心サポートを提供しております。週2回の電話による安否確認とその結果を指定先へのメール送信、自宅内での死亡時に100万円までの原状回復と事故対応の費用補償がセットとなったもので、初回登録料を助成するものです。課題は、仲介を受けた不動産店の一部で利用できないことや、月ごとに利用料が必要なこともあり、登録件数が伸び悩んでいることです。本区といたしましては、関係各所管と一層の連携を図りながら、江東あんしんサポートの利用促進や周知に努めていくとともに、IoTのかつようなどにも注視しつつ、より効果的で利用しやすい制度にしていくよう、今後も取り組んでまいります。
④ 『江東安心サポート』について、現時点では、どの程度の利用があるか、状況を教えてください。
➤江東あんしんサポートの利用実績についてのお尋ねですが、令和4年度はゼロ件に対し、今年度は現時点で2件の利用がありました。
ありがとうございます。江東安心サポートが充実した内容であるにも関わらず、毎月かかる利用料や利用できない不動産店があるなど、課題があり対策を講じていることはわかりました。
⑤ では、根本課題解決に向けて挙がっていたもう一つの取組みである、他所管との連携についてお聞きします。多所管連携について具体的に取り組んでいることがありましたら教えてください。
➤具体的な取り組みについてのお尋ねですが、今年度は1月16日に、江東区居住支援セミナーを開催しました。最前線で福祉に携わっている方を対象として、『なぜ入居を阻まれるのか~賃貸市場の実態と居住支援~』と題した専門家による講演を行い、高齢者など住宅確保要配慮者が抱えるリスクと対応策、また、不動産店や家主の思いについて学ぶ機会といたしました。当日は長寿サポートセンターや社会福祉協議会などから14名の参加があり、『なぜ高齢者がすぐに引っ越しできないか理解できた』『様々な制度の内容や落とし穴、交渉の方法など、実からウロコが落ちるような情報がたくさんあった』『高齢者に安易に引っ越しを勧めるのはいいとは言えないと考えが変わった』など高い評価がありました。
また、セミナー受講者から、高齢者への住宅支援に関して具体的な相談が住宅課に寄せられ、お部屋探しサポート事業の利用につながった例もあるなど、福祉の現場とお部屋探しの連携が進んでいることから、今後も継続していく考えです。
⑥ 高齢者介護の支援者に住まいに関する現状や課題等を共有することは、とても素晴らしいと思います。せっかくよい取り組みなため、ひとつご提案ですが、例えば、福祉部では、行政と介護事業者の共有ツールである『ケア倶楽部』というサイトがあります。こういうツールを活用し、より広く、ケアマネジャー事業所を始め介護関係者に講演案内を行っていただきたいと考えますが、本区の見解を教えてください。
➤ケア倶楽部を用いて、居住支援セミナーをケアマネジャー等に案内することについてお答えいたします。福祉関係者への周知については、これまで長寿サポートセンターの連絡会に赴きセミナー周知を行った他、施設への案内の郵送や、委員ご提案のケア倶楽部を利用した呼びかけについても行ったことがあります。今後も、ニーズの把握や所管課の意見も聞いた上で既存のツールを活用しながら、居住支援の理解促進に努めてまいります。
(要望)
本区はこれからも人口増加が見込まれており、地価上昇の中、住宅確保要配慮者が賃貸成約を困難になっていることは理解しております。また、平均世帯員数の低下や、おひとり様世帯の増加などから、孤独死リスクが年々高まっている状況の中、課題解決を図ることは困難であると推測しております。一方で、住み慣れた地域で生活できる環境を確保することは、区民の安心を担保する上で必要な施策です。来年度は家主謝礼金の増額や不動産協力店への謝礼金を創設などで予算拡充とされていますが、同時に、家主や不動産協力店の声を丁寧に聴きながら、どうすれば借り手と貸し手の落としどころがつくか、関係機関を巻き込みながら進めていただく事を要望いたします。そして、関係機関との相互理解を深めつつ一層の連携を図りながら、江東安心サポートの周知を始め、住宅確保要配慮者の賃貸確保支援に引き続き取り組んでいただくことを要望いたします。さらに、単身世帯が増えている以上、孤独死自体は避けられませんが、見守り事業を行っている多所管と連携しながら、逝去後の早期発見の仕組みづくりを構築するなど、様々な角度からアプローチしていただくことを要望し、この質問を終わります。
以上、3回に分けて、今議会来年度当初予算案に関する質疑応答を報告させていただきました。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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