『地域で暮らし続ける』ために

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今回は、念願だった新潟県長岡市にある高齢者総合ケアセンター『こぶし園』の視察に行った話を書きたいと思います。

あ、前もって書いてしまうと、8年以上の熱量を貯めての視察だったため、今回は長文になってしまいますが、1つの地域における福祉のあり方を伝えつつ、これを読んでいただいた方々に『江東区ではどんな地域福祉ができるかな?』ということを考えるきっかけになっていただけたら嬉しいなと思います。

 

『こぶし園』について

私がこぶし園を知ったのは2015年です。

当時、園長を担っていた小山剛さんという方の講演を聴いたことがきっかけでした。

そこで受けた『ケアマネジャーはソムリエと一緒。ワインセラーに何もない状態では自分達の知識や技術は活かせない。だからこそ、ケアマネジャーという職種だけでなく、もっと広い視点で地域を捉え、必要な資源があったら自分達で作っていくくらいの気概を持て。そのくらいの本気度がないと、ケアマネジャーは社会に認められない』という言葉でした。

なんとも単純な私が、地域活動に本格的参画するきっかけをくださった方です。

 

そのこぶし園、小山元園長の話のとおり、基本理念は『自分達や家族、友人が利用したいと思うサービスの提供』です。

そして、それを具現化するために、様々な取り組みを長年かけて進めてきました。

こぶし園とはこんな施設です

まず驚いたのが、いわゆる『特別養護老人ホーム』の概念を取っ払い、『住み慣れた地域でいくつになっても生活できる環境』というものを具現化したことです。

1982年(昭和57年)に開設した特別養護老人ホーム『こぶし園』ですが、職員や地域の方々、高齢者などにヒアリングをする中で『住み慣れた地域でいつまでも暮らしたい』というニーズを確認すると、2006年(平成18年)から、特別養護老人ホームを分散させ始めます。

また、従来の高齢者施設のイメージが気持ちを暗くする他、閉鎖的イメージを持たれてしまうという声を聴くと、従来の施設の建設とは違った建物の創りに挑戦し、地域の方々が『ふらっと』遊びに来れる内装に力を入れました。

例えば、外観はこんな感じです。

実際はこんな色合いの施設になっています。

スロープが前に写っているため、ちょっと施設感は否めませんが、それでも『いわゆる高齢者施設らしくない』という感じはご理解いただけるでしょうか?

 

さらに、施設の中に入ると、このような受付となっています。

施設全体が日光を多分に取り入れ明るい環境になっている他、受付はホテルのようです。

 

そして、受付対面の壁にはこんな感じのオシャレ感が。

ビートルズの写真は、この他にも至る所に飾られています(ピアノは寄贈品とのこと)。

 

そして、地域の方々に自由開放している交流スペースは、こんな感じです。

この日はクマがカウンターを陣取っていますが、人間もお酒が飲めます。

町会にももちろん入っており、地域の集いの場のひとつとして活躍しています。

 

入口入ってすぐの2階に上がる階段は、こんな感じです。

これらは、入居者への居心地の良さの追求だけでなく、施設の閉鎖感をなくし、地域の方々が訪れやすい雰囲気づくりに尽力しています。

ちなみに、お金があるからこういうことが出来たのではなく、職員は様々な工夫をしながら展示物などを集めたようです。

 

施設を分散!?

この施設の最もすごいところは、先ほども書いたように『施設を分散させた』ことです。

こぶし園の運営方針は『The system of all-inclusive care for the elderly』であり、次の4つを掲げています。

・24時間365日連続するケアを提供します

・サポートセンター構想を推進してその人らしい普通の暮らしを支えます

・サテライト型住居施設を展開して施設から地域社会に生活を戻します

・小規模多機能型居宅介護を開設して在宅の中重度者を定額で介護します

こぶし園はじめ4つの施設を60床に減らし、区内の小規模多機能型居宅介護やグループホームと併設して『サテライト』という形で分散させたのですが、その真意は『住み慣れた地域で最期まで暮らす環境を提供したい』でした。

※後に『地域密着型介護老人福祉施設』という形になります。

 

そのサテライトの一つである『サポートセンター摂田屋』を見学したのですが、外観はこんな感じです。

新興住宅街と旧住宅街の境目にあるのですが、新興住宅街の造りと同じ雰囲気で建設しているため、全く違和感がありません。

 

入口を入ると、地域交流のスペースです。

カウンターがあり、ふらりと地域の方々が寄れる雰囲気になっています。

 

その奥には、小学生など子ども達が学校帰りに宿題や遊びをするために使ったり、町会の集いの場のひとつとしても活躍するスペースがあります(もちろん町会に入っています)。

実際は、この3倍以上のスペースがあるのですが、私の写真のとり方がヘタですみません。

 

全体の説明としてはこれをみていただけたら一目瞭然でしたね。

このすごいところは、元気なうちは自宅で過ごし、一人で暮らすことに不安を感じたら『在宅支援型住宅』に移ることができる。

自宅での生活で介護が必要になったら、『小規模多機能型居宅介護』を利用し、訪問型・通い型・泊りを状況に応じて柔軟に利用できるようにする。

さらに、それでも自宅で生活することが困難になった時は、サテライトの『特別養護老人ホーム』に入所して余生を過ごすという環境が整っているのです。

つまり、『いくつになっても、どんな状況になっても、今まで築いた人間関係を維持しながら生活できる環境』の具現化ができているのです。

 

住み慣れた地域で過ごせるために

これ、江東区で例えると、『北砂で長年過ごした方が、元気なころから施設を訪問する仕組みができており、いざ一人での生活に不安が多くなったら、勝手知ったる町内の介護サービスを利用し施設に入ることができるから、友人などとの交流も途絶えることなく住み慣れた地域で暮らし続けることができる』という感じであり、さらに、『地域の子どもが集える場にもなっており、多世代交流ができる仕組みが整っている』ということなのです。

前回も書きましたが、私は、今の社会はいわゆる倫理観や道徳など個々の善意だけで、地域福祉を向上することは難しくなっていくと感じています。

それに対してこぶし園では、『仕組み化』が徹底しており、常に地域と交流しようという姿勢を持つことで『地域になくてはならない存在(地域福祉の向上)』になっていることが理解でき、そのことに大感激したのでした。

 

私自身、ケアマネジャー事務所の方針は『できない理由よりできる方法を考えて実践する』ですが、それを本当の意味で実践し、地域福祉の向上に寄与しているこぶし園。

そのことも素晴らしいのですが、働いている管理者や職員の方々が、ちゃんと理念を理解し主体的に介護にあたっている姿に感動しました(自然体で当たり前のように介護をサラッと行っていました)。

とはいえ、単に今回の視察を『すごかった』で終わらせるつもりはなく、どのようにすれば江東区で地域福祉の久尾上に繋がる仕組みづくりができるかを考え、少しずつ仮説をまとめていた私でした。

 

社会がどのような状況になろうとも、地域に住む人がつながり協力し合える関係がつくれれば、生きていく不安は最小限に抑えることができる。

今回、長岡ツアーを企画してくれた方、それを快く引き受けてくれ対応してくれた長岡の皆様、一緒に参加した仲間、すべての方々に感謝しつつ、その恩をちゃんと江東区地域福祉の向上でお返ししていきたいと誓ったのでした。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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